国際婦人デー3・4東京集会に参加しよう!
資本主義の矛盾を女性に転嫁するな


 二月九日、衆院予算委員会で、稲田朋美防衛相は、自衛隊がPKO活動を行なっている南スーダンのジュバで昨年七月「国際的な武力紛争の一環としては行なわれていなかったが、人を殺傷し物を破壊する行為があった」と答弁した。しかし、「戦闘行為」とは認めず「武力衝突」と偽った。自衛隊の臨戦体制は完全に整っている。憲法にもPKО五原則にも違反することは百も承知のうえで、自衛隊が憲法とはまったく相いれない活動を現実に行なっていることが明らかになった。一一次におよんでいる南スーダンへの派兵は、今後はもっと危険になる。自衛隊を真正の軍隊にする思惑は、もはや隠し通せない。だからこの際、自衛隊の軍事行動を正式に認めさせPKО活動だけでなくそれ以上のこともさせよう、これまで以上に自衛隊員の命が危うくなる、隊員を正真正銘の兵士・軍人にしよう。つまり憲法を現実に合わせようという世論を高めるのが、安倍政権と自衛隊武官らの狙いなのだ。
 二月十日、安倍首相は訪米し、トランプ大統領にあらん限りのお世辞を振りまいて日米同盟の強化を新たに誓った。そして、日米軍事同盟に抵抗する沖縄の反基地運動を徹底的につぶそうとしている。より侵略的な海外派兵を遂行できるように、自衛隊の軍事力を増大させることは、安倍政権にとって何よりも優先すべき課題である。野党がなにを言おうが意に介さない。日本資本主義の生きる道はこれしかない。原発被害者の苦難も、福島の復興の遅れも、貧困がひろがり、家族の崩壊、生活破壊が深刻化し、連日、子どもや高齢者への虐待や貧困による悲惨な事件が報道されていても、安倍政権は見て見ぬふりをする。

施政方針演説にみるごまかし

 一月二十日の安倍首相の施政方針演説は、あの安倍政権だから当然と言えば当然だが、とにかく政府にとって都合のよい数字だけを並べていた。そのひとつの例が、年金問題。年金受給資格期間を二五年から一〇年に短縮したことについてのみ取り上げた。一〇年の受給者が得る年金はわずか月一万五〇〇〇円であることや、昨年、審議を尽くさぬまま強行採決された年金抑制法についてはふれていない。賃金の下落にあわせて、物価も下がったら、より下がった方に合わせて年金額も下がる。また、年金水準を毎年少しずつ目減りさせる「マクロ経済スライド」のルールも強化される。日本の年金制度の破綻は明らかだ。日本が資本主義制度である限り、このままでいくと破綻の道しかない。
 そして生活保護世帯のうち六五歳以上は五一・三%。そのうち九〇%が一人世帯。低年金の高齢者ばかりでなく、ひとり暮らしでは病気や失業するとたちまち貧困生活に陥る危うい世代は増え続けている。このようなことも取り上げない。さらに安倍は、「相対的貧困率が減少している」「特に子どもの相対的貧困率は二%減少し七・九%。出来ないと思われていたことが実現」と「悲観論は間違い」とまで自慢げにのべていた。内閣府、厚労省の『平成二七年度版子ども若者白書』では、子どもの相対的貧困率は一六・三%と正式に発表している。六人に一人、三二五万人が貧困であること。ひとり親世帯の相対的貧困率はなんと五四・六%にも及ぶ。ОECD三四か国中、日本の相対的貧困率は四位で一六%。このことは国会でも取り上げられたし、話題にもなった。しかし、安倍首相は貧困率など自らに不都合な数字はことごとく無視する。参院本会議で自由党代表の山本太郎議員が安倍首相にとって有利な数字ばかり使ったこの演説を批判したが、その質問を、国会議事録から削除する動きさえあった。不利なことは抹殺する。こんな傲慢なことは許されない。

憲法二四条改悪の動き

 自民党の「日本国憲法改正草案」では、二四条の冒頭に新しく「家族は社会の自然かつ基礎的な単位として尊重される。家族は互いに助け合わなければならない」という、個人よりも家族の強化を強調した文言が加えられている。この背景には、資本主義の矛盾に起因する深刻な社会崩壊の危機を回避しようという意図と戦争政策遂行の目的とがある。
 もはや実質的に日本全体が軍事体制に進んでいる今、安倍政権は総動員体制を敷く。「一億総活躍プラン」として、同一労働同一賃金の法制化や、長時間労働の是正、子育て支援など、項目だけを見ればよさそうだが、これらは解決の具体的なめどがたたない、つまり実現性がないものばかりだ。実際危機の深化とともに顕在化する矛盾を隠し通すことに必死になってあれこれ並べたてているだけだ。
 年金・医療・高齢者介護、保育などの社会保障費削減のためにも、労働者の四〇%が非正規雇用であるいま、増え続ける自立できない若年層対策としても、一人暮らしよりも家族とともに暮らすことの方が、矛盾を現われにくくさせる方策なのだ。巧妙に家族(女性)が利用されていく。
 自民党には、これまでに何度も「家族制度」の復活を目指した動きがあった。一九五四年には自民党の憲法調査会が「国民の権利義務」と「家族制度」の復活を具体的に提言した。このときは戦後結成された民主的婦人団体と労組が一体となって家族制度復活協議会が結成され、政党も加わって全国的な統一戦線が作られ動きが阻止された。憲法改悪阻止のためには、かつてのような組織的に統一された闘う勢力が必要である。
 戦争国家化のもとでは、個人の生活、生き方に国家が介入する。実際、結婚・出産奨励策がすすめられ、自治体が主催する官制お見合いが各地で行なわれている。

安倍政権の支持率は五五%

 テレビ朝日が一月二十七・二十八日に行なった世論調査の項目に、韓国釜山・総領事館前の「少女像」設置にたいして日本政府がとった対抗措置についてどう思うかという問いがあった。「もっと厳しい対応が必要だ」=三六%。「適切な対応だ」=四四%。なんと合計八〇%が、日本政府の対応を支持する回答だった。この一か月間の連日の「少女像=日本批判のシンボル」と決めつけた報道を見る限り、相応の数字なのだろう。
 これらの数字は、かつてアジア各国への植民地支配・侵略戦争を経るたびに積み重ねられてきた民族的な優越感や偏った愛国心が日本人に脈々と受け継がれていることを示している。あの「平和の少女像」は、被害女性たちや支援者によって「現代の若い女性が二度とふたたび戦時下、あのような凄惨な目にあわないように」との祈りをこめて建てられたものだ。
 戦後一貫して日本政府は、植民地支配そのものに対する根本的な反省をしてこなかった。そして日本人は無自覚・無反省にこのような政府を支持する。そうした基盤づくりに、マスコミが果たしている役割は非常に大きい。日本帝国主義がおかした日本軍「慰安婦」制度=性奴隷制度のすさまじい真実を知らせず、嘘とごまかしがまかりとおってきた戦後七〇年間。戦争責任の放棄、真の歴史を学ぶ教育をせず、間違った歴史認識の植えつけを徹底して行なった結果、日本の社会の隅々にまで反動的イデオロギー操作が徹底した。日本軍「慰安婦」問題の解決の道は遠い。こうした現実を見る限り、いま日本の支配層が進めている戦争政策に女性がからめとられていく危険性はきわめて大きい。

国際婦人デー集会に参加を

 一〇〇年前の一九一七年三月八日(旧暦二月二十三日)ボルシェビキのペテルブルグ委員会は、国際婦人デーをストライキで祝うことを呼びかけた。五〇の工場、九万人の女性をはじめとした労働者はストとデモを行ない、そして食べ物を得るために行列をしていた女性たちも加わり大行動となった。警官や武装したコサック兵の妨害にめげず、夜遅くまで街頭から去らず行動が続いた。この動きは次々と波及し、ボルシェビキはこれをゼネストに転化させ、ロシア二月革命の序曲になった。
 記念すべきロシア革命一〇〇周年を迎え、何よりも社会主義のみが将来に平和をもたらすことを訴えた国際婦人デーの意義と伝統を引き継ぎ、わたしたちは今年も国際婦人デー集会を開催します。戦争政策が進む現状に抗し、決してあきらめることなく皆様とともに運動をひろげていきましょう。多くの参加をお待ちします。  【倉田智恵子】

(『思想運動』996号 2017年2月15日号)