大阪でロシア十月社会主義革命記念――映画と討論の集い
資本主義の現状と社会主義をめぐり討論


 十一月十九日、大阪国労会館にて、ロシア十月社会主義革命記念──映画と討論の集いが開催された。主催は活動家集団 思想運動関西運営委員会。
 映画『戦争案内』(監督=高岩仁 二〇〇六年 映像文化協会)は、連作『教えられなかった戦争』各編を踏まえ、予定されていた同朝鮮編を展望した作品である。映画冒頭、明治維新直後の伊藤博文らの欧州視察が日本の帝国主義的発展を目的としたものだったこと、朝鮮・中国がその標的とされたことが提示される。観る者は侵略史を満州事変から語り始めた安倍談話が歴史の偽造であることを明快に理解できる。映画は、さらに戦後日本の東南アジアへの経済侵略がこの時期の経済発展の基礎をなしていたことも丹念な取材に基づいて暴露している。
 討論「資本主義に替わる社会を展望する」の中野哲明による冒頭報告の要旨は、次のとおり。植民地再分割戦争のさなか「ロシアの労農人民は、十月社会主義革命を達成した。一九二九年の世界恐慌に計画経済を対置し、ファシズムの侵攻をも多大の犠牲を払って打倒した。第二次世界大戦後には、社会主義世界体制が構築された」「二大体制の角逐の過程で社会主義勢力は前進した」「世界資本主義が全面的な階級的攻勢に転じた事件がチリのアジェンデ政権を倒したクーデターである。徹底的な労働組合の弾圧と緊縮財政は、その後の新自由主義政策の原型であった」また、「一九七四、五年の過剰生産恐慌は、不況免疫性を得て高度経済成長を達成したと言われた戦後資本主義が新たな段階を迎えたことを告知した」「資本主義は循環性恐慌の危機をさまざまな方策により労働者階級に転嫁する一方、ソビエト連邦にはレーガン政権が軍備拡張競争を挑み、社会主義志向諸国には低強度戦争を仕掛けた」「一九九一年十二月のソ連邦解体は、この階級攻勢の頂点に位置する。この敗北は全世界労働者人民の敗北である。しかし、階級闘争は続く」。
 「反資本主義の闘いは、シアトルにおける九九年十二月のWTO第三回閣僚会議への大規模な抗議活動の成功をひとつの発端として、今日まで継続し、広範な若い世代の参加を促している」。「イギリスのEU離脱、米大統領選挙における民主党の敗北には、新自由主義による低賃金と生活水準の低下への労働者の怒りが反映している」「これら投票結果は、支配層にも先行きが予測できない時代に入りつつあることを示している」。
 討論では、イギリスのEU離脱、トランプ候補の当選、朴槿恵大統領退陣要求、これらにはみな、格差の絶望的な広がりが背景にあること、資本主義の危機の分析とともに、ソ連邦の崩壊についてもっと分析を進めなくては社会主義への展望は提示できない、社会主義への通路を切り開かなければ民族排外主義・ファシズム勢力がもっと台頭する、などの意見が具体例をもって提出された。【中野哲明】

(『思想運動』992号 2016年12月1日号)