第24回参院選の結果とわれわれの闘いの進路
大衆闘争の展開が政治の流れを決める


〝改憲勢力〞三分の二のきびしい現実

 七月十日に投開票された第二四回参議院選挙は、周知のとおり、自民・公明・おおさか維新の会・日本の心を大切にする党と無所属議員の一部を加えた〝改憲勢力〟が、参院で憲法改正の発議ができる三分の二(定数二四二の一六二議席)を超え、大勝した。
 自民党は今回五六議席を獲得。その後、民主党政権時代に初代復興相をつとめ無所属で活動してきた平野達男参院議員(岩手選挙区)が自民党に入党届を提出、計五七議席となり、自民党は非改選議員を加え合計一二二議席、二七年ぶりに参院で単独過半数を占めた。またこれにより無所属議員を含まない〝改憲四党〟で三分の二を確保した。
 比例代表では前回から一六五万票以上伸ばし一五年ぶりに二〇〇〇万票台に乗せている。
 公明党は選挙区に過去最多の七人を擁立し、全員を当選させるなど改選九議席を大きく上回る一四議席を獲得、非改選とあわせて合計二五議席。おおさか維新の会も改選二議席を大きく上回る七議席を獲得、合計一二とした。
 民進党は前回(二〇一三年当時は民主党)の一七議席を上回る三二議席を獲得し合計四九議席としたが、公示前勢力六〇からは大きく後退した。共産党は前回に続いて東京選挙区で議席を獲得、比例代表では全会の五一五万から六〇一万へと増やし五議席、改選数から倍増の六議席を獲得、計一四議席とした。社民党は比例代表で福島みずほ候補が一議席を獲得したが、吉田忠智党首は落選し計二議席。生活の党も比例代表一議席を獲得し計二議席となった。
 安倍政権は、第二次政権を発足させた二〇一二年衆院選、一三年参院選、一四年衆院選につづいて、今回の参院選で国政選挙四連勝となった。なお、現在の衆院の議席数は総計四七五で、自民二九一、公明三五の自公で三分の二を超えている。

成果をどこにみるか

 選挙制度の問題、安倍政権の争点隠し、政権寄りをいっそう強めるマスコミ、投票率の低さ等々、さまざまに理由があげられようが、選挙結果でみる限り、日本人民とブルジョワ支配階級の力関係は、はっきりとブルジョワ側の優位にあることが示された。
 しかし、前回の参院選一人区では自民党が二九勝二敗で制したが、今回は野党が候補を一本化し、三二選挙区中一一選挙区で勝利した。議席獲得数で言えば、〝改憲勢力〟圧勝と言えるが、平和憲法の改悪をめざして日本社会のあらゆる部面で右傾化をすすめ、いっぽうで巨大企業の利益を最優先し、その矛盾を労働者人民の肩に一方的にしわ寄せする安倍政権に反対する勢力が、力をあわせ、一定の議席を獲得したことは、大きく評価できる。
 とくに県民の大多数が反対する辺野古新基地建設問題を抱える沖縄選挙区で島尻安伊子沖縄・北方担当相、そして五年半以上が経過したにもかかわらず、いまなお福島第一原発事件の被害が続く福島選挙区で岩城光英法相という現職の二閣僚を落選させたことの意味は大きい。
 沖縄選挙区では無所属の元宜野湾市長の伊波洋一氏が三五万六三五五票を獲得し、自民党公認・公明党推薦の島尻安伊子氏(二四万九九五五票獲得)に一〇万六四〇〇票の大差をつけて初当選を果たした。翁長雄志知事は十日、伊波氏の勝利を受けて「県民の心が一つになったことが大きな勝利を呼んだ。一昨年の選挙から、今年の県議選、一番総括としての参院選で沖縄の民意が示された。辺野古新基地を絶対に造らせないということなど、伊波さんが沖縄の代表として国会で頑張ってもらえる。県民の良識の勝利だ」と述べている(『琉球新報』七月十一日)。しかし、政府が島嶼防衛として自衛隊の配備を計画している「宮古、八重山、与那国をはじめ離島地域は島尻が勝っている」という(目取真俊さんのブログ)。ここにも彼我の力関係、闘いの継続と勝利なしに状況はなかなか変わらないというきびしい現実がある。
 東北六県では東日本大震災の被災三県福島・宮城・岩手をはじめ、青森、山形でも接戦を制し、秋田を除く五県で野党統一候補が勝利した。北海道では民進党が三議席中二議席を獲得した。農業県である大分でも自民は負けているので、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への批判が集中した結果と思われる。TPPについては、アメリカ大統領選挙でも共和党のトランプ候補だけでなく民主党のクリントン候補も反対していると報じられている。
 伊方原発を抱える愛媛でも、野党統一候補が大接戦を演じた。さらに、同日に行なわれた現在全国で唯一稼働している川内原発を抱える鹿児島県の知事選挙で「脱原発」を掲げる三反園訓候補が当選したことも、大きな成果だ。つまり、問題が正面から提起され、それと闘い抜く現実の生活と大衆運動がある地域では、自民党を打ち破ることができているということだ。一方で大阪と兵庫では維新と自民の〝改憲勢力〟が議席を独占した。福井などの原発立地県でも、それが争点化されないで、自民現職が五選を決めた。

不可欠な階級的視点

 投票率は前回比二ポイント増の五四・七〇%、一八歳と一九歳の投票率(選挙区)は四五・四五%と発表された。また、一八・一九歳の半数が比例区で自公に投票したと報じられている。
 労働組合の組織率が年々下がり、その政治行動・選挙運動への締め付けもあり、選挙への労働者の関心は低い。非正規労働者が四割にも達しようとする中、日々の生活に追われ、選挙どころではない日常が厳然としてある。高齢者の貧困率も年々拡大している。
 安倍政権とマスコミによって、国際社会(米日を先頭とする帝国主義世界のこと)の常識や法を無視する、悪の権化として中国や朝鮮が連日、刷り込まれる。日本国のやること(やったこと)は「全く問題ない」(菅官房長官の決まり文句)と問題にすらしない。そして中国・朝鮮・韓国・ロシアなどに対抗するには、日本資本主義の発展(できもしないGDP六〇〇兆円達成)が必要とされ、「景気回復、この道しかない。」に引きずり込む。さらに時代錯誤の、軍備拡大によって国を守るとの大宣伝。そして労働組合がある大企業で働く労働者や公務員の賃金と中小零細・非正規労働者の賃金格差を労働者間の対立に誘導する分断政策。
 このいわばブルジョワ支配階級による徹底した洗脳状況のなかで、労働者人民の多くが「多様性」「自立性」の大切さを吹きこまれて、個々ばらばらに問題に対応させられている。現状に不満、将来に不安があっても、どうすればいいのかが、なかなかつかめないし、だれからも示されない。
 ソ連・東欧の社会主義世界体制の倒壊から二五年が過ぎ、労働者が社会の主人公、社会主義にこそ未来があるといった考えが歴史のクズ箱に投げ込まれて久しい。しかし、資本主義の枠の中だけで問題をみてゆくかぎり、脱出口は見出せない。求められているのは国際的視点をもった歴史認識と階級的視点、そしてそれに基づく労働者・労働組合を先頭にした大衆実力闘争だ。
〈活動家集団 思想運動〉常任運営委員会

(『思想運動』984号 2016年7月15日号)