殺した者の責任を追及し続ける
米軍基地と日米地位協定の不当性暴くたたかいを!
沖縄県うるま市在住の女性が痛ましい遺体となって発見されてから、まもなくひと月になる。死体遺棄容疑で逮捕された元海兵隊員で軍属の男は、6月9日には殺人および強かん致死容疑で再逮捕された。逮捕当初の供述と県警の捜査により、事件の残虐性が明らかにされてきている。あらかじめ犯行に使う刃物や棒を用意していることから特別捜査本部は、「暴行を目的に当初から殺意を持って女性を襲った計画的な犯行との認識を示した」(『沖縄タイムス』6月10日付)。犯人は暴行する女性を探して2~3時間車を走らせ、被害者を見つけてつけ狙い、背後から棒で頭を殴り、草むらに連れ込んで暴行し、首を絞めて刃物で胴体を骨に達するほど数か所刺して殺害し、スーツケースで車に乗せ、恩納村の山中に遺棄した。
被害者は日常の「生活圏、安心できる場所」で襲われた。「ここに暮らさない人たちは『道が暗い』とか『人通りが少ない』というかもしれない。しかし、生まれ育ったまち、住み慣れたまちだったらどうか」。犯行時間と同じころ付近には外灯があり、家々の窓も明るく、スーパーには客がいて、車も走っているという。(同前、5月29日付、「地元在住記者、現場を歩く」)。
20歳の女性がこのような凄惨な事件で命を奪われてしまった要因は沖縄に集中する米軍基地にあり、米軍・軍属の特権的地位を保障する日米地位協定にある。「本土」の日本人、ヤマトンチュウは、それを放置してきた責任を改めて肝に銘じ、沖縄の人びととともに現状を変えるためのたたかいに立ち上がらなければならない。
沖縄県議会は5月26日に事件にかんする抗議決議と意見書を全会一致で可決した(自民党会派などが退席して可決。決議文は別掲参照。意見書は首相、外務相、防衛相、沖縄担当相宛)。県議会として初めて、在沖海兵隊の撤退をもとめる決議だ。抗議決議は全県に広がり、ほとんどが綱紀粛正や再発防止策だけでなく日米地位協定の抜本的見直しを盛り込み、米軍基地の整理・縮小や海兵隊削減、辺野古新基地の断念をもとめる内容で、今月末にも全41市町村で可決の見込みだ。
6月19日には、「オール沖縄会議」が主催して「元海兵隊員による残虐な蛮行を糾弾! 被害者を追悼し、沖縄から海兵隊の撤退を求める県民大会」が開催され、県議会決議の「普天間飛行場の閉鎖・撤去と県内移設断念」「日米両政府が遺族と県民への謝罪と完全な補償」「在沖海兵隊の撤退と米軍基地の大幅な整理・縮小」「日米地位協定の抜本改定」を盛り込む決議をあげる予定だ。
この全県的な抗議のうねりは、沖縄戦後にはじまる米軍の基地拡張と日米地位協定が憲法より優先されてきたことによって繰り返されてきた米軍による基地被害・事件・事故に対する怒りの噴出だ。たたかいの素地は、翁長知事を先頭にした辺野古新基地建設阻止闘争のなかでかたちづくられてきた。6月5日の県議会議員選挙でも県政与党は現有議席を四議席上回る27議席を獲得している。そして辺野古のキャンプ・シュワブゲート前や海上での体を張ったたたかいは、代執行訴訟で沖縄県との和解を受け入れた国を工事中止にまで追い込んだ。大衆的な運動と基地機能を止めるための非暴力の具体的行動が連携し合って、こんにちの沖縄のたたかいがつくりあげられてきた。いま沖縄では「全基地撤去」の声が座り込みの現場で、新聞の投書欄でも街頭でも聞かれるようになっている。
東京では沖縄県民大会と同じ19日、「怒りと悲しみの沖縄県民大会に呼応する いのちと平和のための6・19大行動」が国会正門前で取り組まれる。沖縄県民のたたかいに連なり、各地で多くの人が立ちあがるときだ。同時に、日米政府に打撃を与え、沖縄の現状を変えさせるためにどうたたかうべきか、共同で議論し、模索し、果敢に実践していくべきときだ。 【日向よう子】
(『思想運動』982号 2016年6月15日号)
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