朝鮮学校への補助金停止に反対しオモニ会が緊急集会
ウリハッキョを守り抜く団結の力、より強固に!


 3月29日、文部科学省は、朝鮮学校がある28の都道府県知事に対して、「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について」なる通知を出した(以下、「通知」)。
 朝鮮学校のことを日本政府は、「北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総聯が、その教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識して」いるから、地方自治体が朝鮮学校に交付している補助金について「留意」せよ、つまり、事実上の停止圧力だ。
 地方自治法にのっとって政府が自治体に指示・命令はできないから、あくまで「促す」体裁をとってはいるが、政府の意向を「受け止めた」自治体の萎縮・自粛ねらいは明らかだ。朝鮮学校の「高校無償化」制度からの排除にひきつづくきわめて卑劣な攻撃だ。この3月29日は戦争法が施行された日である。米韓日三角軍事同盟の強化、戦争遂行・国家総動員体制づくりの正当化のために、エセ「朝鮮脅威」の喧伝と一体となった朝鮮学校に対する弾圧・排除を国策として執拗に強行する安倍政権。その一環として、またしてもくり出された今回の不当な文科省「通知」に抗議する緊急集会が4月8日、参議院議員会館において、朝鮮学校全国オモニ会連絡会の主催で開かれた。
 主催者あいさつにつづき糸数慶子参院議員(沖縄での日程のため参加がかなわず秘書の代読)、阿部知子衆院議員から連帯アピールを受けた。
 次に在日本朝鮮人人権協会の金東鶴さんが「通知」の不当性を追及する報告を行なった。以下に要約する。すでに「高校無償化」排除の動きと連動して、東京、大阪など各知事が補助金を停止してきた。昨年六月、自民党拉致問題対策本部は、補助金全面停止を地方自治体に「強く指導」するよう政府に要請し、今年2月にも、同本部は補助金の廃止を文科省に働きかけた。

在特会と同じレベルの排外主義

 そもそも、朝鮮民主主義人民共和国と朝鮮総聯、そして民族学校である朝鮮学校が「密接な関係を有する」のは当たり前である。その当たり前のことに対して、非難すること自体が不当な政治介入であり一切無効、断じて認められない。「通知」には「朝鮮学校に通う子供に与える影響にも十分に配慮しつつ」などという文言が踊るが、その文言を実行するのであれば、今回の「通知」内容と正反対の、補助金回復・続行、拡充を促し、ひいては「高校無償化」制度適用を政府は行なわなければならない。2014年8月、国連・人種差別撤廃委員会は、「高校無償化」制度からの除外と自治体の補助金凍結は教育権侵害として、政府は自治体に是正を「促す」べきとしている。また、在特会による京都の朝鮮学校襲撃事件に対する大阪高裁判決は、在特会の行為が「在日朝鮮人の民族教育を行なう社会環境も損な」うものと指摘している。今回の「通知」は、まさに在特会と同じレベル、同じロジックであり、文化的ジェノサイド=魂の虐殺だと金さんは弾劾した。
 1948~49年の朝鮮学校閉鎖令につづく、不当弾圧が繰り返されてきた。65年の文部事務次官通達は「朝鮮人としての民族性または国民性を涵養することを目的とする朝鮮人学校は、わが国の社会にとって、各種学校の地位を与える積極的意義を有するものとは認められないので、これを各種学校として認可すべきでない」とした。以来政府はこの立場を堅持していることが厳しく批判された。しかし、この通知が出て以降も、各地方自治体の権限ですべての朝鮮学校を認可してきたことに注目すべきであり、今後も各自治体への働きかけが重要だと呼びかけた。

オモニ会の発言

 次に、神奈川、千葉、埼玉、西東京など首都圏のオモニ会からの発言を受けた。子どもを朝鮮学校に送り出す母親の立場から、憤りを噛み砕くようにして話される声の振動が会場にひびいた。西東京からの発言では、国が率先して朝鮮人への差別を助長していることへの怒りがあらためて表明された。「朝鮮学校の親も納税義務を果たしている、そもそも国費で補償すべきだ。ただちに『通知』を撤回し、子どもたちに謝罪すべきだ。」そして朝鮮大学校の学生中心に行なわれている文科省前の「金曜行動」まで足を運べないオモニたちが地元で「水曜行動」として街頭宣伝を行なっていることが報告された。
 「雨が降っても雪が降っても。仕事帰りクタクタに疲れているが、子どもたちの権利を獲得するため、親として大人として、この状況をこのままにしておけない。この行動は外に向けられるだけのものではなく、ハッキョを守るわたしたちの意識の再確認の場にもなっている」と発言した。
 連帯発言として、朝鮮女性と連帯する日本婦人連絡会の鴻巣美知子さんは、文科省が今回の「通知」を安保法制施行の日に出したことに触れ、朝鮮半島情勢と朝鮮学校を結びつけ政治的に利用する安倍政権の意図を強く批判した。また、東京朝鮮高校無償化裁判の事務局であり、「高校無償化」からの朝鮮高校排除に反対する連絡会の森本孝子さんは、安倍政権は朝鮮学校の子どもたちを痛めつける一方で、同時に辺野古に基地をつくり、原発推進=潜在的核保有をすすめている、これら総合的な戦争政策を連携の力で止めていこうと呼びかけた。
 集会後、文科省前の「金曜行動」に参加し、政府・文科省への怒りと抗議の声をあげた。日本は在日朝鮮人に対する植民地支配をいまも継続している、と痛感する。このことと向き合うことが日本の戦争政策に抗う一歩一歩ではないだろうか。【米丸かさね】

(『思想運動』978号 2016年4月15日号)