安倍政権と全面対決する沖縄・辺野古の闘いに連帯しよう!
辺野古新基地建設阻止で平和を切り拓こう
沖縄では国の代執行・提訴に激しい怒り


 政府安倍政権が11月17日に国が起こした裁判、すなわち知事に代わって埋立て承認取り消しの取り消しを行なう代執行に向けた訴訟の第1回口頭弁論が、12月2日、福岡高裁那覇支部で行なわれる。翁長知事は意見陳述を行なう。
 その日は県議会定例会の日で、沖縄県が日程調整をもとめたのに認められなかったという。この間、防衛省沖縄防衛局は翁長沖縄県知事の埋立て承認取り消しに対し、行政不服審査法を悪用して私人の1業者をかたり、国交省に行政不服審査請求を行ない、知事の効力の一時執行停止を申し入れた。10月27日、国交省は知事の承認取り消しの効力を執行停止にし、同日、安倍政権は代執行を閣議決定した。沖縄県が、執行停止されたら裁判も辞さぬとしていた意表を衝いて、国が先に裁判闘争を仕掛けた。しかも10月30日付で、高裁那覇支部長の首をすげ替えた。成田空港訴訟で土地の明け渡しと建物撤去を命じた裁判長だった人物に、である。
 一方沖縄県は埋立て承認取り消し執行停止をうけて、11月2日に国地方係争処理委員会に不服審査を申し出ている。県は委員会で主張が認められなければ、年内にも高裁に提訴する方針だ。『産経新聞』は「翁長氏手詰まり」(10月28日付)、『読売新聞』は「辺野古訴訟 政府自信」(11月18日付)と書き立てたが、理は沖縄県にある。沖縄では国の代執行、提訴に激しい怒りが噴出しているのだが、2つの裁判になっても主張することは基本的に同じと県は毅然とした態度であり、県民の信頼も揺らいでいない。安倍政権は政治権力とカネで力を見せつけ、人民の命と意思を踏みにじる。わたしたちは沖縄と力を合わせて勝たなければならない。

分断と虚偽宣伝

 安倍政権は露骨な分断工作も行なっている。10月26日、辺野古周辺の名護市久志、辺野古、豊原の久辺3区の区長を首相官邸に呼び、地域振興費総額3000万円を名護市を通さず直接交付する方針を伝えた。3区は名護市に55ある「自治区」だが、地方自治体のいわゆる市区町村ではない。地域を黙らせ、新基地建設反対の沖縄の民意に亀裂を生じさせ、それを県内外に宣伝する安倍政権の意図は明白だ。菅官房長官は11月10日の衆院予算委員会で振興費についてなんと基地反対運動への「地元の要望」を考慮したものと説明し、拡声器での抗議や違法駐車などへの苦情を紹介したという(11月11日『産経新聞』)。やむにやまれぬ思いで抗議する人びと、そして憲法の保障する権利への冒涜であり、こんな公金の支出が許されていいはずがない。
 また菅官房長官は、工事着手の翌日、29日にわざわざグアムを訪問し、「自然な形で、今日から工事を再開させてもらった」などと記者会見し、政府の強行ぶりや沖縄のたたかいを隠ぺいする虚偽の宣伝を行なった。海兵隊の移転先とされるアンダーセン空軍基地や海軍基地アプラ地区を視察し、グアム選出の米下院議員や米海兵隊司令官と会談して本体工事に着手したことを伝え、グアム移転の進捗状況を確認したとして移設や負担軽減が進んでいるかのように印象づけた。
 同じ日、中谷防衛大臣は、佐賀県庁で山口知事と会談し、政府が要請した佐賀空港への陸自のオスプレイ配備や米海兵隊のオスプレイ訓練移転計画について会談し、米海兵隊の訓練移転は地元の人びとの同意が得られないとして取り下げた。この報道は、県をあげてオスプレイ配備反対決議をあげ、首相に要請までしたにもかかわらず強行された沖縄県民の感情をひじょうに傷つけた。これはまさに沖縄県民と「ヤマト」を分断する効果を狙ったダブル・スタンダードである。
 抗議行動への警察機動隊と海上保安官の暴力行為もあとを絶たない。11月4日から東京の警視庁本庁から100人以上の機動隊員がキャンプ・シュワブゲート前に投入されている。その最初の日、拡声器で混乱を鎮めるよう呼びかけていて不当逮捕された男性について、機動隊員が押したように見える映像が『琉球新報』や市民の撮影した記録に残っている。また機動隊とのもみ合いのなか、20代の男性が後頭部を道路に強打して救急搬送されたが、男性はカメラを持って撮影中だったときく。狙いうちを思わせる。
 カメラは機動隊の暴力を監視し弾圧を防ぐ道具でもあるからだ。海上では11月18日に抗議船の船長が3人の保安官に押さえこまれて意識不明となった。非暴力でも機動隊や海上保安官が暴力的に抑圧・拘束してくるため怪我人が出る。とくに救急搬送される例はそれが顕著だ。

「歴史的な座り込み」に参加を!

 ゲート前での抗議行動参加者は、弾圧にもかかわらず減るどころか増加している。沖縄防衛局が陸での作業を再開した10月29日、前後にNHKや新聞各社が本体工事着手と報じたためか、抗議参加者は前日の倍くらい集まった。沖縄2紙の「本体工事」報道の大きな見出しは、沖縄の人びとの怒りを代弁しているかのようだった。早朝から100人以上が集まり、座り込みの抵抗で工事関係車両がゲートに入るのを30分ほど遅らせることができた。報道によると11月11日には500人以上が集まり、約1時間半にわたって工事車両を立ち往生させたという。座り込みが始まって500日目の18日には1200人が結集し、工事車両の進入はなく、機動隊の排除もなかったという。
 『琉球新報』によると25日には700人が集まり、抗議の人が200人くらいに減る11時頃まで、工事関係車両が入ることはできなかったそうだ。
 こうした行動ができるのはやはり人数がいてこそだ。県内各地から出勤前に早朝だけ参加する人や、ゲート前で抗議してからカヌーにのって海上行動に出る人もいて、頭のさがる思いだ。島ぐるみ会議が運航するバスも数が増えている。全国各地・世界からの参加者も増えている。
 もうひとつは、行動の統制がとれているからでもある。たたかいの現場は新基地建設を止めたい一心で集まった人たちが、各自役割を担い、注意事項と達成目標を確認し、意思疎通して行動している。団結して座り込む。弾圧されたら助けに行く。ずっとたたかってきたリーダーが、一回り若いリーダーと肩をくみ、みなと歌う。米軍、防衛局、機動隊に抗議する。プラカードを掲げて練り歩く。工事車両がきたら座り込む。排除されてもまた座り込む。ゲート前から道路を隔てたテントに戻ると、運動の歴史や各地での展開について、法廷闘争について、政府の汚い遣り口について聞き、話す。怒り、感動し、笑い、歌う。そしてまた座り込む。ヘリ基地反対協議会、沖縄平和運動センター、平和市民連絡会、統一連などが協働してリーダーシップを発揮している。
 テントは学びの場でもある。「辺野古文庫」のスペースには本あり、写真や新聞の切り抜きあり、テントで開かれた学習会、辺野古総合大学の資料が掲示してある。背後にはさまざまな横断幕が張られ、道路沿いには各地の島ぐるみ会議・村民会議を中心にしたのぼり旗がはためく。
 わたしは辺野古への基地建設を許さない実行委員会のカンパを受けて、10月末に4日間だけゲート前行動に参加できた。そこで配られているチラシの通り、まさに「歴史的な座り込み」が行なわれている。条件の許す人はぜひ辺野古に行く機会をつくってほしい。

新基地建設阻止がひらく展望

 いま沖縄島のほぼ全域で組織されている「沖縄『建白書』を実現し、未来を拓く島ぐるみ会議」も日々の抗議行動を支える。11月15日から22日まで島ぐるみ会議の訪米行動が取り組まれ、市民団体や退役軍人、労働組合、議員などに沖縄の現状が訴えられた。
 また10月27日付『琉球新報』は「新基地阻止へ新組織」と題し、県議会与党、市民団体、経済界の一部を網羅する「オール沖縄県民会議」の発足が準備されていると伝えた。辺野古新基地建設をとめるために人びとが改めてつながりを深め始めている。それがたたかいの現場と結びついている。
 安倍政権は辺野古新基地建設を強行し、選挙にかち、選挙後は憲法改悪に着手しようとしている。安保法制強行とともに日米軍事一体化とアメリカの言い値での武器購入と軍需産業拡大がすすみ、辺野古新基地建設強行はその一環としてある。
 戦争のための基地を自ら差し出すことはしない、新基地建設なら全基地撤去だ、銃剣とブルドーザーで奪われた土地を返せという沖縄県民の意思をあつめた辺野古新基地建設阻止のたたかいは、敗戦の反省にたった前文を掲げ、人民のたたかう権利を保障する現憲法とひびきあう。人民主権・平和のたたかいの展望をひらく辺野古新基地建設阻止を沖縄の人たちとともにかちとろう。【日向よう子】

(『思想運動』970号 2015年12月1日号)