労働者派遣法改悪糾弾! 闘いは続く!
ナショナルセンターの枠を越えた共同闘争を前進させよう


 三つのナショナルセンター等が廃案を求めていた労働者派遣法「改正」案が8日、参議院厚生労働委員会で自民所属の委員長を除く24名の委員のうち自民11名・公明2名の計13名の賛成で可決された。翌9日には参議院本会議で自民・公明の賛成で可決、11日には衆議院本会議で可決、改正案が成立した。また骨抜き「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案」(通称「同一労働同一賃金推進法案」)も成立した。
 二度にわたる廃案を経て今国会で成立した「改正」案の内容については、本紙961号(2015・7・1)に記載の通りである。紙面の都合により繰り返しは避けるが、要するに派遣先企業が永続的に派遣労働者を利用し続けることができる、常用代替防止の原則を捨て、正社員から派遣労働者への転換を促進、派遣労働者は一生涯派遣のまま、あるいは3年ごとに派遣先を解雇になる、労働者の生活と権利を危機にさらす大改悪である。
 8日の厚生労働委員会では、「改正労働者派遣法の施行日を9月30日」とする修正案(原案は9月1日施行)が可決された。衆議院での法案成立・公布から施行までは2週間程度しかない。これまで労働者派遣法の「改正」における公布と施行日までの期間は6か月程度であった。
 政府与党が9月中の施行を急ぐのは、改正前の現行労働者派遣法には、2015年10月1日付で施行される「労働契約申込みみなし制度」の規定があるからである。この「みなし制度」とは、派遣先企業が違法派遣と知りつつ派遣労働者を受け入れている場合において、派遣先企業が当該派遣労働者に対して直接雇用の労働契約を申し込んだものとみなすという制度である。9月30日施行で「みなし制度」が効力を失われる。派遣労働者にとって数少ない直接雇用・正社員化の機会を奪うのが、「改正」労働者派遣法なのである。

労働法制の改悪今後もつづく

 政府は6月30日、「経済財政運営と改革の基本方針2015」と「日本再興戦略・改訂2015」を閣議決定した。今回の労働者派遣法「改正」も雇用維持型から労働移動支援型への転換を図る、雇用制度改革の要の一つとして「日本再興戦略」に盛られている。他には以下がある。
 ①今会期中の成立は断念しているが、「高度プロフェッショナル制度」(いわゆる「残業代ゼロ法案」)と裁量労働制の適用範囲対象を営業職(セールスマン)などに広げることを内容とする、労働基準法「改正」。②早ければ2017年通常国会に法案提出が目論まれている、「解雇の金銭解決制度の導入」。③今通常国会において成立している、「女性の更なる活躍促進」(9月4日公布ずみ)。

戦争法案との闘いと一体となって

 安倍政権の経済産業政策を論議している「経済財政諮問会議」「産業競争力会議」「規制改革会議」はすべて関係閣僚、財界代表、学者で構成されていて、労働者代表は排除されている。こうした状況で、安倍の「岩盤規制」破壊政策=労働法制改悪を阻止するには、労働者・労働組合の闘いの強化しかない。闘いの基本は職場である。「改正」労働者派遣法においては、派遣先企業において同じ仕事で3年を越えて引き続き、別の派遣労働者を受け入れる場合には、派遣先労働組合あるいは労働者の代表の意見を聴取しなければならない(同意は必要ないが、労働組合の意見に誠実に対応する規定がある)。求められるのは、まず派遣先企業の労働組合の方針だ。派遣労働の新規導入と正社員・直接雇用者の派遣労働者への置き換えに反対しよう。派遣の人数拡大に反対しよう。派遣労働者の正社員化を要求するとともに待遇改善に取り組もう。
 連合は8月23日、労働者派遣法と労働基準法の改悪断固阻止と「戦争法案」廃案に向け、国会を取り囲む1万4000人の行動を行なった。また8月28日にも、国会前での座り込み行動を行なっている。全労連、全労協、MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)などでつくる「安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクション」は、参議院厚生労働委員会の開催日の昼に、国会前での抗議行動を続けてきている。
 「労働基準法改悪」、「解雇の金銭解決制度導入」とこれからが正念場ともいえる。闘いが勝利するには、ナショナルセンターの枠を越えた労働組合の結集が不可欠だ。国会前では連合、全労連、全労協の行動が隣合わせになることが多い。日本労働弁護団などの呼びかけでは一緒に行動できる。是非ともナショナルセンターを束ねた共同の闘いを構築しよう。
 戦争法案廃案の闘いは14日の週が最大の山場になる。戦争法案は、労働者・人民の国家・独占資本への従属。そして労働法制改悪は、独占資本・企業の利益拡大のために労働者の権利を奪い、低賃金で長時間という、都合のよい労働を狙ったものである。共通しているのは、日本国憲法が定めている「国民主権」「基本的人権」「平和主義」の破壊である。労働者・労働組合は、戦争法案と労働法制改悪に反対する闘いを一体のものととらえ運動を進めよう。【田沼久男】

(『思想運動』965号 2015年9月15日)