川内原発再稼働を阻止しよう!
適合性審査手続きはデタラメだ
                   

川内原発の適合性審査段階

 九州電力は、2月5日の原子力規制委員会の審査会合で、川内原発再稼働の申請書類の一つである工事計画認可申請の補正書について、1号機は今月末、2号機は3月末に再提出の予定と報告し、それまでに工事を完了させて、認可後、直ちに使用前検査に入るという工程表を提出した。メディアはこれを受け川内原発の再稼働が今夏以降に遅れる見込みと報道した。しかし、審査手続きの問題点を棚上げにして「遅れ」もへったくれもない。
 川内原発の新規制基準適合性審査の経緯は、規制委員会発足(12年9月)→新規制基準策定(13年7月)→再稼働申請(同年7月)→川内原発優先審査決定(14年3月)→川内原発設置変更許可申請書に関する審査書案パブコメ(同年8月)→審査書決定(同年9月)→工事計画認可申請の補正書・保安規定変更申請の補正書再提出(九電準備中)と進められてきた。先頭を行く川内原発1、2号機はまだ審査書決定(設置変更の方針について許可が下りた)段階であり、これが合格証交付であるかのような報道は誤りである。

早期再稼働のために手続き変更

 安全上重要な設備、過酷事故関連設備に関する新増設や改造には、工事計画認可手続が必要である。通常の手続きは、まず設置変更許可(基本設計・方針等の審査)、次に工事計画認可(詳細設計の審査)、次に保安規定認可(運転管理体制等の審査)と段階的になっていた。これまでの実績では、工事計画認可に要する期間は1~2年程度、その後の使用前検査も含めた設置工事に1~2年を要するとのことだ。そうすると、本来なら申請から運転再開までに5年程度かかることになる。それを1年以内でやってしまおうともくろんだが、実際やってみたら、そうそううまく運ばなかったのではないのか。規制委員会と九州電力の見込み外れといったところであろう。
 「実用発電用原子炉に係る新規制基準について ―概要―(平成25年7月決定)」には審査手続きの迅速化のために、三つの申請書類を同時期に受け付け、同時並行的に審査すると書いてある(現在規制委員会H P の「概要」からはこの部分が削除されている)。これは、「当該工事に着手する前に、その工事の計画について原子力規制委員会の認可を受けなければならない。」(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第43条3の9)に違反している。
 九州電力は三つの申請書類を提出したが、工事計画認可申請書、保安規定認可申請書に不備があり、規制委員会から二度三度と補正書提出を求められた。一方、九州電力はそういった書類のやりとりとは無関係に、勝手に工事を実施していた。普通に考えれば、工事計画が認可されないのになぜ、工事ができるのかという疑問が湧く。この点について、2月4日、「鹿児島の女たち&福島の女たちの共同アクション」(写真)の省庁交渉で会場から違法工事ではないかとの質問があり、規制庁担当官は「3・11以後各原発に緊急補強工事を指示した。安全性向上のため事業者が自主的に進めている工事である」と回答した。これは前掲の法律第四三条三の九のただし書で、「発電用原子炉施設の一部が滅失し、若しくは損壊した場合又は災害その他非常の場合において、やむを得ない一時的な工事としてするとき」は工事計画認可の必要はなく、工事開始後に遅滞なく届け出ればよいとなっていることを根拠に言い訳しているのだろう。実態は、緊急工事と認可工事の区別がつかない状態で工事は事前に進められている。書類審査、補正の内容が実際の工事に反映されるかどうかは電気事業者任せである。同法律で発電用原子炉施設の設置変更の許可を受けるためには、許可の基準「発電用原子炉が平和の目的以外に利用されるおそれがないこと」に適合しなければならないとなっていることから、軍事目的への改造の余地を与えるこのようなデタラメは絶対許されないはずだ。

適合性審査は茶番

 工事計画認可申請書の内容はほとんどがコンピュータ解析の結果であり、補正書作成は、電力会社に都合のよい結果を得るため、前提となる条件を変えて計算し直すという作業だ。工事計画認可申請書は二基分で約四万ページと膨大で、九州電力は「データの再解析が必要なところがあり、一部を直すと全体の体裁を直す必要があるため時間がかかっている」という。今後、規制委員会は工事計画補正書を受理し、認可後に、認可前から自主的に進められていた工事を使用前検査で目視確認するのみである。規制委員会は工事の進捗に合わせて補正書を出させたりして、仕事しているふりをしているのでは? とも思えてくる。
 二番手の高浜原発3、4号機については、再稼働申請(13年7月)、設置変更許可申請書に関する審査書を決定(15年1月パブコメ、2月12日決定)したが、まだ2月2日に提出された工事計画認可申請の補正書の審査段階である。現在、再稼働を申請しているのは、合計13原発20基である。
 新規制基準をめぐっては、その中味が欠陥原発を容認するお粗末な基準であること、避難計画が規制基準となっていないことなど、厳しい批判の声が上がっているが、手続きについては、あまり指摘されていないのではないか。スピード審査とは安全軽視、手続きのデタラメは審査が茶番ということにほかならない。あらゆる手を尽くして抗議し、原発再稼働を阻止しよう!【中村泰子】

(『思想運動』952号 2015年2月15日号)