特定秘密保護法の施行断固糾弾!
戦争国家体制作りとの闘いは続く


 昨年の強行成立から一年をへた12月10日、特定秘密保護法が施行された。
 この日午前0時、首相官邸前では数日来国会周辺で抗議を続けてきた人々がこの稀代の反動立法の施行を怒りのシュプレヒコールで糾弾した。その中には多くの若者たちがいた。6日には、東京の日比谷野外音楽堂で、法律や出版・メディア関係者、憲法運動、平和運動、労働組合運動等、幅広い層を結集して、「秘密保護法」施行を許すな!大集会が開かれるなど、施行を目前にして全国の主要都市で反対運動が展開された。この種の反動立法との闘争において、法律の成立以降もなお一年の長きにわたり運動が持続・前進してきた例はきわめて稀であり、それはこの法律の内容がいかに危険で、その成立過程がいかに不合理なものであったかを物語ってもいる。
 この法律はまず第一に全面的な戦争遂行体制を構築するための「軍事立法」である。法律の主要な目的は軍事国家に不可欠の情報隠蔽・操作にある。と同時にこの法律は人民の運動を威圧・弾圧する「治安立法」である。法律が守るという「秘密」とは人民を統制、監視・弾圧するための「免罪符」にほかならない。
 アジア太平洋戦争にいたる日本の近現代史を振り返れば明白なように、侵略戦争の遂行と国家による情報隠蔽は常に密接不可分の関係にあった。
 いまこの国は、過去の侵略戦争に対する反省をかなぐり捨て軍事大国化をめざし全面的な国家改造を推し進めている。それは軍事や政治、司法の分野にとどまらず、経済や教育・研究、メディア対策、歴史認識を含むイデオロギー政策等、国家の支配機構のあらゆる領域に及ぶ。秘密保護法もその主要な柱として施行された。われわれは、戦慄をもってこれに抗議する。
 この間の論議で明らかなように、米国からの「機密情報」をはじめとした「特定秘密」は、内閣に設置された外交・軍事政策の「司令塔」=国家安全保障会議(日本版NSC)で分析・協議される。秘密保護法が、国家安全保障局の立ち上げ、国家安全保障戦略など一連の戦時立法の要として機能するその先には、はっきりと集団的自衛権行使と一体となったその目的が見える。
 集団的自衛権行使をめぐる7月1日の閣議決定は、「切れ目のない安全保障法制」の整備を謳い、従来の「平時」と「有事」の断絶をなくし「平時」における軍事化を強調した。そこに治安体制の整備が含まれることは言うまでもない。集団的自衛権行使の発動要件である「国民の生命、権利が根底から覆される明白な危険がある」「国の存立を危険に陥れるような事態」の解釈はきわめて曖昧であり、そうした判断の根拠となる情報そのものが「特定秘密」となりうると、政府は認めている。
 安倍政権は現在、集団的自衛権行使容認を具体化する法整備を進めており、それを次期通常国会で審議するとしている。しかし、特定秘密保護法下では、自衛隊派兵に至る米国との協議内容、軍事装備の内容も含めて自衛隊が海外でどのような活動をしようとしているか、それらすべてが「秘密」に指定される可能性がある。そうなれば国会議員にさえその内容が開示されることはない。集団的自衛権行使の具体的内容を暴露する術そのものが奪われるのである。
 盤石に見える日本国家の支配体制も、その基底では資本主義の構造そのものに根差した深刻な危機が進行しており、その矛盾の激化が労働者人民の階級闘争の爆発として発現することを支配階級は常に恐れている。秘密保護法に続いて盗聴法の改悪や司法取引の導入、テロ新法など、新たな治安・弾圧立法の整備が狙われているのはそのためだ。
 秘密保護法施行に至る動きが支配階級の総がかり的な攻撃の一環、とりわけ集団的自衛権行使合法化をはじめとする壊憲・戦争国家体制づくりと一体の動きであることを認識し、運動をさらに継続・発展させていこう。【丸山こじり】

(思想運動 949号 2014年12月15日号)