集団的自衛権行使を既成事実化するな
ガイドライン再改定に反対しよう!


 10月8日、日米ガイドライン再改定に向けた「中間報告」が発表された。
 これは明らかに、集団的自衛権の行使を先取りし、米軍・在日米軍と自衛隊との関係をいかに強化するかという安全保障政策の大転換を、密室協議で既成事実化しようとするものだ。
 それは米国の軍事・外交の軸足をアジアに移すリバランス(再均衡)政策の重要環に位置づけられ、中国、朝鮮、東南アジアの人々とその国家に対する威嚇・攻撃を具体的にプランニングするものに他ならず、断じて許してはならない。
 政府は今国会では、日米ガイドライン(日米防衛協力のための指針)再改定の論議や集団的自衛権に関する法整備、消費税10%への引き上げ判断はしないとしている。来年の通常国会では予算成立を先行させ、4月の統一地方選挙後に、安全保障関連法の審議を企図している。強引な「7・1閣議決定」への世論の反発(世論調査で6割が反対)のほとぼりを冷まそうという魂胆だ。また一方で、TPP交渉も行き詰まり、靖国参拝や日本軍性奴隷制をめぐり日韓間、日中間の関係改善も見通せないままでは、安全保障法制整備の本格的・具体的な作業が進められないのも実情だ。
 労働者人民にとり肝心の課題を先延ばしし、政府への批判をそらしながら、一方でガイドラインをはじめ行政上の実務協議は先行させ、既成事実化をねらっているのだ。
 日米ガイドラインは、冷戦下の1978年、社会主義と資本主義の世界体制が対峙していた時代に、「ソ連の日本上陸」なるものを想定して策定された。日米の軍事的な役割分担・共同作戦の基礎になる文書だ。94年の朝鮮民主主義人民共和国の「核問題」を口実にした97年の改定では、日本の「周辺事態」にまで日米の協力を拡大し、安保条約の事実上の改悪を強行した。
 今回の「中間報告」の最大の問題は、従来の「憲法的制約」を取り払ったことだ。
 第一は、これまでにあった「周辺事態」という概念をなくし、地理的な制約を取り払った。「日本有事」と「周辺事態」という規定すらもなくし、日米の軍事行動を世界規模で可能にしようとするものだ。
 第二に、「後方地域」に変え「戦闘地域」での米軍支援を盛り込んだ。これまで、「周辺事態」における自衛隊の米軍支援は、「後方地域支援」であり、「非戦闘地域」での支援に限られていた。「中間報告」は、その「後方地域」を戦闘地域での「後方支援」にすり替えた。「平時」や「有事」の区分をなくし、まさに「切れ目なく」自衛隊の戦闘支援・参加を地理的・質的に拡大・深化させようとするものだ。
 日本国憲法に違反し、何ら法律に基づいていない集団的自衛権行使容認の「7・1閣議決定」。それをあたかも前提にして、ガイドラインの再改定作業を日米両政府間の交渉だけで進め、さらに中間報告を出して既成事実化をはかっている。国会審議もほとんどない。「国家安全保障基本法案」にかわる安全保障法制の骨格すら何ら示していない。国民主権(人民主権)無視、国会軽視、民主主義破壊の極みである。そんな違憲・無効な行政主導での米国との密室協議先行をただちにやめよ!
 日米両政府は、自衛隊と米軍との役割分担をめぐる協議を、さらに拡充し始めている。
 「離島の不法占拠」など他国からの武力攻撃にいたらない「グレーゾーン」事態に備え、外務防衛当局に警察や海上保安庁を加えた常設機関を戦後初めて設置するというのだ。
 日本側は内閣官房と外務・防衛両省が主体、米国側は在日米国大使館と米軍が主体となる。この会議で、米軍・自衛隊の共同作戦や部隊運用について協議し、警察との間でも部隊運用について協議・調整するという。実際は、米軍と自衛隊が組織運営を統括する軍事協議機関にほかならない。
 一方、在日米軍と自衛隊の協力態勢は、3・11を経てさらに、組織面のみならず、日本社会にも「認知」され、違和感なく「定着」しつつある。
 そうした軍隊の社会的浸透・社会の軍事化と、米軍・自衛隊の共同態勢強化は同時的かつ相互的におしすすめられている。現に、自衛隊の在日米軍基地使用や合同演習強化が、沖縄南西諸島の警戒監視を強化する「動的防衛協力」構築を柱に画策されている。
 われわれは、集団的自衛権行使の既成事実化を許さず、ガイドライン再改定に断固反対しよう!
【大山 歩】

(思想運動 947号 2014年11月15日号)