戦争は最大の人災・人権侵害だ!
参院選で一人でも多くの戦争屋を落とそう

ロシアによるウクライナへの「特別軍事作戦」が実行されてから3年半になろうとしている。多数の死者が出ており、その数は20万人とも30万人とも、いやそれ以上ともいわれている。両国の発表する数字が違っているので断定はできないが、凄まじい数に上っている。しかし、いまだ停戦のめどはたっていない。
イスラエルによるガザ地区のパレスチナ人民虐殺・ジェノサイド攻撃は1年半以上止められることなく、ガザ当局の発表では多数の女性・子どもの犠牲者を含め、その数は5万5000人を超えている。
イスラエルは3月初旬以来、ガザ地区への食糧、避難所、医薬品、燃料などあらゆる物資の搬入を許さず、ガザでは住民210万人の人道危機が起きている。5月27日、イスラエルはアメリカの民間団体が主導する「ガザ人道財団」によるガザ地区での食料の配給が始まったと発表したが、配給所付近でイスラエル軍による攻撃があり、多数の死者が出ていると報じられている。空腹を抱え、10キロも20キロも歩いて食料を求めに来た女性や子どもを殺す、まさに悪逆非道、鬼畜と呼ぶほかない行為である。イスラエルはこれを兵士の身の安全を守るための「自衛行為」と強弁している。
第二次大戦終結から80年を迎えるいまも、世界は暴力と野蛮で覆いつくされている。
6月13日、イスラエルはイランの核関連施設を中心に爆撃を実行し、22日、米・トランプ政権はそれを支援し、B2ステルス爆撃機を使い、イランの3か所の核施設を攻撃した。その攻撃には地中深くまで入り込んだ後爆発する地下貫通弾(バンカーバスター)が14個使われた。

資本主義の矛盾と行き詰まり

こうした事態がなぜ起きているのか? その根底には、資本主義の矛盾・行き詰まりと現代世界の構造的変化がある。一口に言って、第2次世界大戦後、米国を中心に形成されたドル中心の世界経済体制が、90年代初頭のソ連東欧社会主義体制倒壊後の米国一人勝ちのグローバリズムを経て行き詰まり、ドルの基軸通貨としての地位が揺らぎ、その間に米国と協調しつつ社会主義市場経済を採用した中国が飛躍的な経済発展を遂げ、GDP(購買力平価)で米国を追い抜く状況が生まれ、BRICSとグローバルサウスが世界の政治経済局面での影響力を増大させた。
米国とG7陣営はそれとの対決に迫られているのだ。バイデンは22年10月「国家安全保障戦略」を発表し、中国を「国際秩序の再構築を目指す意志と力を持つ唯一の競争相手」と位置付け、軍事や外交、経済などでの対抗を最優先に据えた。ウクライナに侵攻したロシアを「差し迫った脅威」と指摘し、「今後10年の取り組みが決定的な意味を持つ」と訴え、同盟国を集め対中対ロ包囲網を強化しようとしたが、米国の支配階級はバイデンの手法では手ぬるいと判断し、米国第一主義のトランプが生まれ、「力による平和」の政治が展開していると見るべきだろう。トランプは米ドルに代わるBRICS通貨を導入すれば、150%の関税を課すとけん制している。
このように現在、国際政治の場面では激烈な闘争が展開されており、それがウクライナで、ガザで、イランで戦争という形で表れていると捉えることができる。そしてグローバルサウスの成長はあるものの、全世界でトランプを支持し移民反対を掲げる極右勢力が伸長している。

資本主義体制護持の日本の支配階級

6月16・17日にカナダで開かれたG7首脳会議は、50年の歴史で初めて首脳宣言をとりまとめられず、トランプは1日で帰国し、中東情勢をめぐる個別の共同声明はイスラエルの「自衛権」を支持することでガザ・ジェノサイド、今回のイラン攻撃を後押しする内容となった。サミットの前はイラン攻撃を「極めて遺憾」と述べていた石破首相は声明を受け入れ、攻撃容認の方針に転換・追随した。
日本のブルジョワ支配階級と石破政権の、激動する国際政治への対応は、徹頭徹尾西側の資本主義体制を守り抜くというものだ。戦前戦後、一時敗戦による中断があったものの、かれらは一貫して自らの階級的利害に忠実であった。
いま、トランプ米政権はNATO加盟国に国防費を現行の2%から5%に増やすよう求めている。トランプ米大統領は増額しなければ有事に際し欧州を守らない可能性にも言及している。
いっぽうNHKは22日、「アメリカ国防総省がGDPに占める国防費の割合について、日本を含むアジアの同盟国に対して、NATOで議論されているのと同じ水準の5%に引き上げる必要があるとの認識を示した」と報じた。その理由については「中国が大規模に軍事力の増強を進めていることや北朝鮮が核・ミサイル開発を続けていることをふまえると、アジアの同盟国もヨーロッパのペースや水準に合わせるよう、迅速に行動するのが常識だ」としている。
トランプ政権は日本の軍事費をGDP比3%増、いや3・5%増と注文を付けてきたが、今度は5%である。内閣府が5月17日に発表した2024年の日本の名目GDPが609兆2887億円なので5%だと30・45兆円となる。取り引きのためのブラフとばかりは言えないだろう。
米国のイランへの攻撃を支持するともしないとも言わず、のらりくらり、前言撤回連続の石破政権。これに対して米国の側にある石破政権と批判するのは正しいが、先にも述べたとおり、日本のブルジョワ支配階級の階級的利害からすれば当然の態度と言えるだろう。それほど国際情勢に対するブルジョワ階級の危機意識は強いということだ。
24日~26日、国防費や安保関連経費を含む計5%の新目標の合意を目指すNATO首脳会議がオランダ・ハーグで開かれるが、石破首相はこれにも参加する。そういった意味からも、いま、世界は、そして日本は、第3次世界大戦と核戦争の危機のただなかにあると言える。わたしは、こんにちの国際情勢と国内情勢を捉えるとき、この観点を外してはならないと考える。
2022年末の「安保3文書」が打ち出した方針(敵基地攻撃能力の保有と5年間で43兆円の大軍拡)は確実に実行に移され、沖縄・南西諸島→九州→日本全体の軍事要塞化(長射程ミサイル配備、自衛隊施設の強靭化、大型弾薬庫の整備、「先島諸島」の島民避難計画等々)が進んでいる。
そうしたなかで6月はじめにあった日中の軍用機が異常接近したケースのごとく一歩間違えれば交戦にいたるような危険な事態もおきている。

戦争屋を落選させ軍拡路線止めよう

昨年11月の総選挙で30年ぶりに自公の過半数割れが実現した。しかしこれによって日本政府の戦争政策にブレーキがかかったか。否である。食品をはじめとする全分野での物価高、例年の2倍以上で高止まりしたコメの問題、連日報じられる備蓄米をめぐる小泉劇場、給付か消費税減税かをめぐる綱引き。挙句の果ては内閣不信任案すら提出できずに今国会は終わった。超軍拡予算はそのまま通った。
自民党は19日、夏の参院選の公約を発表した。物価高対策として、子どもや住民税非課税世帯の大人に1人4万円を支給し、その他の人に1人2万円を給付。持続的な賃上げを実現し、2030年度に賃金約100万円増を目指す方針も盛り込んだ。あきらかに選挙目当てのバラマキだ。石破首相は2040年にGDPを名目で1000兆円にするとともに国民の平均所得を現在から5割以上上昇させることを公約の1番目に指示している。「楽しい日本?」「あんたが言うか」と政治不信が深まるだけだろうが、「小泉劇場で支持率も上がり、国民はいつも通り騙せるだろう」とでも踏んでいるのだろう。
6月8日の『東京新聞』は「こちら特報部」で、自民党が参院公約に「違法外国人ゼロ」に向けた取り組みを公約に入れる方針、と報じた。その中である大学教授は「昨年の衆議院選挙で岩盤保守層の票が国民民主党や日本維新の会、参政党に流れたことが一因だとみられる」とし、政治ジャーナリストは「物価高で自国民が困る時に外国人を優遇するな、という主張は欧米諸国で支持を得ている。……日本でも同じような右傾化が起きている」と述べている。
各社の世論調査を見ると、参政党が支持を伸ばしている。コロナワクチンや食品添加物、環境問題を取り上げ、自民党や既成政党を強烈に批判し、旧社会党系や自然・環境問題の活動家にも浸透している。ヨーロッパの右翼の動向・手法も取り入れているようだ。
5月に参政党が創る新日本憲法(構想案)が出されたが、前文から天皇中心主義、徴兵制を容認するような項目もある。しかし地方議会で議席を伸ばし、東京都議選でも初めて3議席を獲得している。玉木や神谷などはSNS・ユーチューブの利用が上手で多くのフォロアーを持っている。いまはまさに町中にスマホがあふれかえっている。それを使って「戦争がスマホの中でつくられる」時代ともいえる。
いっぽう、参議院選挙を前に、消費税減税をめぐる財源論議が盛んに行なわれているが、軍事費を大幅に削って財源にしろとの声は野党の大多数から聞こえない。軍事費を半分にすれば消費税の5%への減税は十分可能なのに。
「国際社会」が止められない米・イスラエルの暴虐。しかしこれは、80年前の日本軍・日本国の姿と同じだ。そしていま日本のブルジョワ支配階級と戦争勢力は再びその道を突き進んでいる。
われわれは、いまイスラエルがガザで行なっているジェノサイドが、日本軍がアジア太平洋戦争下、中国で行なった「殺し尽くし・焼き尽くし・奪い尽くす」三光作戦、朝鮮・アジアで繰り広げた蛮行と同じ質のものであり、それをファシスト・ネタニヤフらが学んで実行していることを認識できているだろうか。
戦争・飢餓・難民があふれる世界。いまも昔も、政治家、そして政府の任務は人民を災害(最大の災害は戦争だ!)から守ることだが、まったくその使命を果たしていない。それどころか金儲けのためには人の命を命とも思わず、「自衛権」を叫び、人殺しを平気で自慢する鬼畜が白昼大手をふるってメディアに登場している。
自公とそれを右から突き上げ補完する超右翼勢力、中道を謳う「リベラル戦争派」を一人でも多く落選させ、一人でも多くの戦争反対派を当選させることが大切だ。
(6月23日記)

【大山歩】
(『思想運動』1114号 2025年7月1日号)