労働組合が日米韓軍事演習反対に起ちあがった
その環をさらに広く、さらに太く!

 1か月前の7月31日夕刻、東京・虎ノ門駅出口に結集した労働者たちと在日韓国人たち約50名は、事前の意思確認と沖縄で相次ぐ米兵による性犯罪事件と日本政府の隠蔽に抗議する「基地・軍隊はいらない4・29集会実行委員会」からの連帯アピールを受けた後、おりから激しく叩きつける雷雨のなかを衝いて駐日アメリカ合衆国大使館をめざした。
 全水道東京水道労組と全国一般・全労働者組合、そして全国一般東京東部労組の3労組で構成する労組反戦行動実行委員会と在日韓国民主統一連合が呼びかける「日米韓軍事演習に反対する米大使館抗議行動」が始まったのだ。一行は、旧JTビルを過ぎ、駐日米大使館と目と鼻の先である共同通信会館脇の三叉路付近まで進んだところで、慌てて後ろから駆けつけてきた警視庁赤坂署の警官隊に行く手を阻まれた。なんらの法的根拠も示せず、《天下のエマニュエル米大使様に盾突くとは太いやつらだ。絶対に通さん!》とばかりに阻止線を張る警官隊と、《アメリカ大使館に用がある。邪魔するな!》と阻止線を突破しようとする労働者たちの抗議の直接行動であたりが騒然とするなか、労組反戦行動実行委員会と韓統連は駐日米大使館にむかって、それぞれ日米韓合同軍事演習の中止をハンド・マイクで訴え、その場で「日米韓軍事演習に反対する米大使館への抗議文」(左に掲載)を読み上げ、最後に全員で「日米韓合同軍事演習反対!」のシュプレヒコールをあげて、ずぶ濡れになった雷雨のなかの駐日米大使館行動を終えた。当日の行動は、組織された労働者・労働組合が日米韓合同軍事演習反対を掲げて反戦平和の直接行動に起ちあがったという点で、その意義がおおきい。
 だがこうした声を一顧だにせず、現在、朝鮮半島の韓国側では「ウルチ・フリーダム・シールド」(UFS)が8月19日から29日まで11日間の日程で強行され、朝鮮民主主義人民共和国は極度の緊張状態に置かれている。今回の演習は、朝鮮に対する核使用を想定した初の軍事訓練で、陸海空の野外機動訓練は48回(昨年比10回増)、旅団級の大規模訓練は17回(昨年比4倍増)におよぶ。また尹錫悦政権は8月22日、UFSに併せて「北からの空襲に備える」と危機意識を演出し、昨年に続いて「民防衛訓練」を韓国全土で強行して労働者人民に屈従を強いた。
 これに先立ち、日米韓3国が6月27日から29日の期間に強行した合同軍事演習「フリーダム・エッジ」に対し、朝鮮外務省対外政策室は6月30日付で公報文を発表した(本紙前号掲載)。それによれば、《バイデン行政府は、「インド太平洋戦略報告書」と「国家安保戦略報告書」を通じてアジアと欧州の同盟国が互いに連合して戦略的ライバルに対抗すべきであると唱えた》と指摘している。
 じじつ、2022年に発表されたこの傲岸不遜な2つの報告書では、《われわれはいま、アメリカと世界にとって決定的な10年の初期段階にいる》と認識し、戦略的ライバル(中国とロシアをさす)に打ち勝つために、《同盟国やパートナー国との幅広い連携を結集する》(以上「国家安保戦略報告書」から)と表明し、インド太平洋地域では《われわれは、豪、日、韓、比、タイの5つの地域条約同盟を深化させ、インド、インドネシア、マレーシア、蒙、NZ、シンガポール、台湾、ベトナム、太平洋諸島を含む地域の主要パートナーとの関係を強化している。また同盟国やパートナー国、とくに日本と韓国との関係を強化するよう奨励する》とし、さらに《インド太平洋地域と欧州大西洋地域との架け橋を築き、さらに他の地域との架け橋となる》(以上「インド太平洋戦略報告書」から)と描いている。この間の米韓や米日韓の合同軍事演習に朝鮮「国連軍司令部」としてNATO加盟諸国軍が参加しているのも、その「架け橋」の実践にほかならない。
 このように、衰退する米合衆国の死活を賭けて、世界の同盟国・パートナー国を抱き込んで、戦略的ライバルとの対抗戦略を打ち出している。昨年8月のキャンプ・デービッドにおける日米韓3国首脳会談や今年7月のNATO首脳会合への岸田首相と尹錫悦大統領の出席は、米合衆国が描くこうした戦略のなかでの行動である。さらに言えば、安倍政権下での集団的自衛権の行使を可能にした安保法の「基盤」のうえに立つ岸田政権下での安保関連3文書改定(2022年12月)も、米合衆国へのこうした戦略にたいする日本国為政者からの応答であった。国内壊憲勢力による日本国憲法の破壊策動も、こうした応答の一環としてあることを見逃してはならない。
 このような10年先の青写真しか描きえない衰退した米合衆国支配階級の、米合衆国支配階級による、米合衆国支配階級のための生き残り策にたいして、自主的に生きようとするわれわれはいかに対応すべきか? その姿を実践であざやかに示したのが、今回の「日米韓軍事演習に反対する米大使館抗議行動」だった。その非暴力の直接行動の環をさらに広く、さらに太くするためにさらに奮闘しよう! その道は、自主的に生き抜いていこうとする全世界の労働者階級の兄弟姉妹(上段写真参照)が歩む道としっかりとつながっている。

【土松克典
(『思想運動』1104号 2024年9月1日号)