HOWS夏季セミナーへの呼びかけ
「現在」とその変革のビジョンを
参加者の多様な構成
いま、HOWS事務局では、7月20日(土)~22日(月)に開催されるHOWS夏季セミナー(全6講座・詳細は今号2面参照)に向けての準備を進めています。現在、予約者は50名近くになっており、参加の枠は残り僅かです。
その50名近くには、これから新しい気持ちで各分野で運動や学習を始めようとする学生や青年もいれば、マルクス主義運動の長い経験のある方もいます。それから、労働組合運動でたたかう方もいれば、女性解放運動に取り組む方、反戦平和運動の方、文化・芸術運動の方面で仕事をされてきた方、ガザ・ジェノサイドに居ても立っても居られず活動をはじめた方、日朝友好・朝鮮学校支援で奮闘する方、革命運動や民族解放闘争への視座の下で理論研究に集中されている方もいますし、日本国内の植民地主義的民族抑圧に対して粘り強くたたかう在日朝鮮人の青年もいます。
つまり、今年のセミナー参加者は非常に多様なわけです。
各取り組みの独自性
そして、その多様さを活かして、新たな野蛮の時代に突入しつつある現代において求められる変革のトータルなビジョンをつくりだしていこう、あるいはその端緒となるような場を設定しようというのが、今回のセミナーです。
今期HOWSのリーフレットの呼びかけには、核戦争による人類生存の危機を克服しつつ帝国主義を廃絶して全世界的な社会主義への移行をいかになしとげるか、という「現代史の中心課題」を語る武井昭夫さんの言葉を引用しました。しかし、忘れてはならないのは、各々の取り組みはそれぞれ独自の方法で、「現代史の中心課題」に結びついていかなければならないということです。平和運動には平和運動独自の役割があるというように、それぞれがそれぞれの取り組みをその独自性において把握しつつ、「現代史の中心課題」を媒介に協働関係を結んでいく、そのことが大切なのではないでしょうか。
たとえば、文学運動についてドイツのマルクス主義詩人ヨハネス‐R‐ベッヒャーは、「文学独自の独立した方法で政治的にならないと、文学は政治に呑み込まれてしまう」(井上正蔵/高原宏平訳『ベッヒャー詩集』)と述べていましたが、これは文学の政治への隷属を拒否しつつも、よりよき世界をめざす目的のもとに、文学がその独自の方法で政治との緊張関係を保って政治に奉仕するという、詩人の決意を語った言葉でした。
このような独自性の自覚と理解こそが、多様な取り組みの共同への鍵だと思うのです。
トータルな展望を!
わたしたちには新しいラディカルな変革のビジョンが必要です。それも、一方の硬直した官僚主義や公式主義、他方の鼻まで状況に呑み込まれていく状況追随主義をともにみずみずしくのりこえてゆくようなビジョンが必要なのです。ウクライナ戦争、パレスチナ・ガザ絶滅戦争、核戦争危機に瀕する東アジア――、いま世界はまさに激動期に突入しつつありますが、新しい変革のビジョンは「現在」の状況をトータルに引き受けるものでなければなりません。
そうしたビジョンの形成には多様な関心・分野・領域における経験と叡智の結集、討論をとおした相互浸透が必要でしょう。わたしたちはそこからこそ「現在」とその変革のトータルな展望が生まれてくると信じています。そのための共同の場、HOWS夏季セミナーへの結集を訴えます。
【杉林佑樹・HOWS事務局】
(『思想運動』1102号 2024年7月1日号)