国際メーデー138周年にあたって
闘う労働組合を建設し団結して闘おう
労働者人民は戦争への加担を拒否する


 4月10日に行なわれた日米首脳会談の共同声明で、バイデンと岸田は、米軍と自衛隊の「作戦及び能力のシームレスな統合」、米英豪の対中軍事同盟AUKUSと日本の協力、武器輸出全面解禁と軍需産業の強化、日米ミサイル共同開発・共同生産等々を打ち出し、アジア版NATOを展望しつつ、米帝国主義の事実上の指揮下で米日が手を携えて対中戦争体制を構築することを宣言した。日米軍事同盟が新たな段階へ飛躍的に強化されようとしている。
 労働者人民は、利潤を求めて戦争に突き進む米日帝国主義の策動を許してはならない。
過酷な長時間労働が当たり前だった19世紀後半、8時間労働制を求めて米国各地の労働者が統一ストライキやデモに立ち上がった1886年5月1日がメーデーの起源だ。第2インターナショナルが呼びかけた1890年の第1回国際メーデーは「戦争に対する闘争を!」「常備軍を廃止せよ!」「8時間労働制を!」のスローガンを掲げて行なわれた。
 このスローガンは、われわれ日本の労働者人民にとってまさしく焦眉の課題となっている。

今春闘の情勢をどう見るか

 3月13日の集中回答日、マスメディアはことさらに各社の「満額回答」を報じた。日本製鉄に至っては組合のベア要求3万円を上回る3万5000円の回答だった。この20年、いかに大企業が儲けをためこんできたか、だれの目にも明らかだ。4月16日の連合第4回集計では、賃上げ回答は定昇込み加重平均で1万5787円、5・20%となり、昨年同時期比で4765円、1・51ポイントの増。33年ぶりの5%超えとなった。
 われわれは、賃上げの成果は成果として評価する。この間の中小労働組合の闘いが部分ではあれ反映しているからである。
 全労連・国民春闘共闘の4月4日時点の調査では、傘下の148組合がのべ173回のストライキを実施していた。帝国データバンクの企業意識調査では、賃金改善が「ある」企業は59・7%で3年連続の増加だった。「ある」の理由として「労働力の定着・確保」が75・3%で最も高かったほか、「同業他社の賃金動向」が一昨年比6・9ポイント増、前年比3・0ポイント増の25・3%だった。ストなしの「集団的物乞い」の域を出ない労働組合がまだ多数であっても、賃金闘争の効果は一企業内にとどまらないことが示されている。
 しかし、5%程度の賃上げでは実質賃金の低下に歯止めはかからず、物価高騰に苦しむ労働者人民の生活は改善されない。
 そもそも、多くの企業は人材獲得競争のもと賃上げ原資を初任給や若年層の賃金に厚く配分している。40代以降の中堅・中高年労働者の手取りはほとんど増えない。結果、全体として賃金カーブのフラット化=年功賃金体系の破壊がますます進み、いわゆる「ジョブ型雇用」への移行や「円滑な労働移動」に親和的な賃金体系に変わりつつある。
 連合集計で300人未満の中小組合の賃上げは1万2170円増、4・75%増と、大企業と中小の賃金格差もますます広がっている。非正規労働者はどうか。連合集計では、有期・短時間・契約等労働者は加重平均で時給66・44円、月給1万3442円増で、引上げ率はそれぞれ6・08%、5・98%と過去最大となったが、絶対額では平均でなお正社員の7割程度にとどまっている。しかも、連合集計のほとんどは、UAゼンセンに組織された短時間労働者だ。大多数の非正規労働者の賃金は、依然として最低賃金にはりついたままだ。
 政府・独占は23春闘に引き続き「ベア容認」の旗を振った。岸田政権はこの賃上げと訪米、さらに6月の所得税減税で解散総選挙を乗り切る腹づもりだ。独占資本は独占資本で「経済の好循環」が生み出すであろう将来の利益拡大を見越して、蓄積のほんの一部を吐き出したにすぎない。
 この賃上げが、全体としては「失われた30年」の資本家階級的な打開、長期的な企業利潤の確保と拡大という日本独占の意図に沿った、政労資一体の「官製春闘」の文脈で実現していることを、われわれは直視しなければならない。

世界の労働者は闘っている

 世界の労働組合、労働者はストライキで闘っている。
 ギリシャでは、アテネとテッサロニキの二大水道公社の12年にわたる民営化反対闘争が勝利した。スウェーデンでは、電気自動車のテスラ資本(反組合のイーロン‐マスク!)が自動車整備士の労働条件に関する労働協約締結を拒否したことに対してストライキで闘っている。特筆すべきは、当該の金属産業労働組合(IFメタル)はもとより、港湾労働者がテスラ車の荷下ろしをボイコット、郵便労働者がナンバープレートの配達を拒否、電機労組が充電ステーション等でサービス提供を拒否と、あらゆる産業の労働組合が総力を挙げてテスラと闘っていることだ。アメリカでは全米自動車労組(UAW)が大手3社に対する6週間にわたるストライキ闘争で勝利し、4年半で25%の賃上げを勝ち取った。同時に、より重要な成果は、賃金をインフレ率と連動させる生計費調整の復活、二層賃金制度(2007年以降の新規雇用者の賃金は低く設定されていた)の廃止、臨時工の正社員化を勝ち取ったことだ。
 3月、UAWのフェイン会長が、連合・自動車総連にではなく、全労連にビデオメッセージを送った。「米国の労働者が搾取されれば、日本の労働者が搾取に苦しむのも時間の問題です」「資本に国境はありません。労働者にも国境はないはずです。‥立ち上がっている全労連と労働者のみなさんに、UAWが連帯していることを誇りに思う。みなさんの闘いはわたしたちの闘いです。企業経営者に目にもの見せてやりましょう」と。われわれはここに、闘う労働者、労働組合の国際主義を見ることができる。

われわれの課題

 半世紀前の1960年代から70年代前半の高度経済成長期、日本の労働組合は年平均10%以上の賃上げを勝ち取っていた。しかし同時期に、民間大単産の指導部が政府独占の攻撃のもと労資協調の右派に占められていき、それが75年以降の「減量経営」期の徹底した左派排除、80年代の国労つぶし、総評解体と労働戦線の右翼的再編へとつながっていったことを忘れてはならない。
 賃上げ闘争は重要だ。そのことを確認したうえで、しかし、どのような労働組合を組織し闘うのかが、決定的に重要だ。職場の仲間と語り合い、職場生産点を基礎に賃金要求や生活改善要求を練り上げ組織しよう。賃金闘争を闘うなかで、多くの労働者の労働組合への団結と、階級志向の・闘う労働組合の建設、再建をめざそう。
 憲法に保障された労働三権、とりわけスト権を行使することなしに、労働者の要求実現は不可能だ。ここ数年で復活してきたストライキで闘おうという流れをさらに強めよう。要求実現のためにストライキで闘える体制をつくりあげ、反戦平和闘争や憲法改悪を阻止する運動を、われわれの主戦場である職場生産点を基礎として構築していこう。
 そして、そのためにはやはり、戦闘的、階級的な労働運動の指導部の再建こそが焦眉の課題だ。この課題を手放さない、志ある労働者、活動家、労働組合の交流と結集を強めたい。
 国際メーデー138周年万歳!

【吉良寛・自治体労働者
(『思想運動』1100号 2024年5月1日号)