朝鮮の対南政策の転換とわれわれの態度
戦争危機に労働者国際主義の実践を!


 昨年12月26日から30日にかけて朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)で開催された朝鮮労働党中央委員会第8期第9回総会拡大会議と今年1月15日に開催された最高人民会議第14期第10回会議において発表された、朝鮮の対南政策の根本的転換が波紋を投げかけている。
 この間、朝鮮側が南の呼称を「大韓民国」と表現し、その真意について各方面でさまざまに憶測を呼んできたが、この二つの会議をつうじて朝鮮側の考えがはっきりと闡明された。

二国家が並存

 まず、朝鮮労働党中央委員会総会を報じた『朝鮮中央通信』によれば、《結語では、対南部門で根本的な方向転換をすることに関する路線が示された。/(金正恩)総書記は、長きにわたる北南関係を振り返りながらわが党が下した総体的な結論は、一つの民族、一つの国家、二つの体制に基づいたわれわれの祖国統一路線と克明に相反する「吸収統一」「体制統一」を国策と定めた大韓民国の連中とは、いつになっても統一が実現しない》(web版『朝鮮新報』24年1月4日配信)との判断を下した。
 また、最高人民会議における施政演説で金正恩国務委員長は《今日、最高人民会議ではほぼ80年間の北南関係史に終止符を打ち、朝鮮半島に並存する二つの国家を認めたことに基づいて、わが共和国の対南政策を新しく法化した》(web版『朝鮮中央通信』24年1月16日配信)ことも明らかにした。
 以降、この方針にもとづき「6・15共同宣言実践北側委員会」や「祖国統一汎民族連合北側本部」、「民族和解協議会」などの朝鮮側の北南民間交流団体が解散し、日本の朝鮮総聯や韓統連などが参加する「6・15共同宣言実践海外側委員会」も3月に入って解散に至っている。また「わが民族同士」など朝鮮側に開設されていた北南交流の複数のウェブサイトも1月以降接続できない状態になり、さらに統一の象徴的存在であった南北を結ぶ鉄道・京義線の北側部分の切断や、金正日総書記によって2001年に建設された平壌市の南方入口にあったアーチ形の「祖国統一3大憲章記念塔」の撤去も指示された。

現実に迫る戦争

 いっぽう、こうした朝鮮側の動向に対して南側の大韓民国では、3月4日より14日まで米韓合同軍事演習「フリーダム・シールド(自由の盾)」が繰り広げられた。ここには、尹錫悦が政権の座について再開された昨年同時期の大規模訓練の2倍にあたる48回の陸海空および宇宙、サイバー空間にまでひろがる合同訓練が強行され、これに米軍・韓国軍だけでなく英・豪・加・仏・比など朝鮮戦争時に参戦した「朝鮮国連軍司令部」の構成国12か国の軍隊も参加した。
 さらに今後、4月10日に日本国首相岸田は「国賓」待遇で米合衆国を訪問し、バイデンと首脳会談を行なう。また同時期、フィリピン大統領マルコスも訪米し、11日には日米比三国首脳会談が行なわれることも報じられている。昨年8月に、バイデン・尹錫悦・岸田による日米韓3国首脳会談がキャンプ・デービッドで行なわれ、日米韓合同軍事演習をはじめとする対中国・朝鮮・ロシア包囲の準戦争同盟構築が決められた。そして今度は、フィリピンを抱き込んで対中・朝・露の政治・経済・軍事包囲網の形成が話し合われようとしているのだ。
 米帝国主義は、みずからが画策して起こしたマイダン・クーデタからつづく東欧のウクライナ戦争と中東イスラエルのパレスチナ・ガザ地区へのジェノサイドにつながる東北アジアの支配戦略を描いている。日米韓や日米比など複数国による準戦争同盟の構築ならびにゾンビのような「朝鮮国連軍」の蘇生をつうじてアジア版NATO体制を築き上げ、この間連携を強める中・朝・露への包囲網形成を画策しているのだ。
 こうしたなか、切れ目なく継続される朝鮮に対する戦争挑発に対して、金正恩総書記は先の朝鮮労働党中央委員会総会の壇上から《朝鮮半島地域の危険な安保環境を時々刻々激化させ、敵対勢力が強行している対決的な軍事行為を綿密に注目してみれば、「戦争」という言葉はすでにわれわれに抽象的な概念ではなく、現実的な実体として迫っている》と、党員たちに強調して訴えた。

われわれの態度

 こうした朝鮮半島をめぐる情勢のなかで行なわれた今回の朝鮮による電撃的な対南政策の転換という措置に、在日韓国民主統一連合(略称、韓統連)に所属するある在日韓国人活動家は、「3・1朝鮮独立運動105周年集会」の準備会議における意見交換の場で次のように語った。「自分たちが国家保安法ひとつ撤廃させることができていない責任がおおきい」と。周知のように韓統連は、その前身である韓民統(正式名:韓国民主回復統一促進国民会議日本本部)の時代から祖国の統一と韓国の民主化を課題とする運動体として結成され現在に至る。その構成員が、金大中政権も盧武鉉政権も文在寅政権も成さなかった「国家保安法撤廃」の課題を、韓国の民主化と祖国の統一に結びつけて考えている。そうなのだ、かれは今回の朝鮮側による対南政策の転換を、みずからの責任として受け止めている。その姿勢が大切なのだ、とわたしは思う。
 かつて、われわれは1972年の「7・4南北共同声明」の発表に際して、「人民こそ統一の主体」という見出しを掲げて次のように主張した。《この「共同声明」を、南北朝鮮統一の第一歩にしうるか否かは、この事態の動きを労働者・農民・学生大衆のイニシアティヴによって押し進めうるか否かにかかっている。(略)統一の主体は、あくまで南北朝鮮人民なのである。統一の実現は、労働者階級を軸とする基盤での大衆運動による以外にはない》(南基執筆、『思想運動』第36号、1972年8月1日付)。われわれは、今回の朝鮮の対南政策の転換に際してもこの原則を貫く。そうであるならば、今回の事態に対するわれわれの課題はなにか? それは、韓統連が尹錫悦政権による反自主統一・反民主化攻撃に対して固い団結をめざして闘うように、われわれは日本帝国主義の朝鮮侵略策動の本質を暴露して、これと徹底して闘うことにつきる。

労働者国際主義

 こうしたなか、全港湾沖縄地本八重山部会に所属する組合員50人が、民間港である石垣港に米海軍ミサイル駆逐艦「ラファエル・ペラルタ」が寄港することに反対の態度を貫き、入港中の3月11日から13日にかけてストライキを実施し、石垣島市民たちも石垣港前で入港抗議の声をあげた。昨年9月の米掃海艦の寄港に反対するストライキに継ぐ闘いだ。
 また、平和フォーラムや日韓ネット、朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会など日本の市民団体で構成する東アジア市民連帯と朝鮮青年同盟など朝鮮総聯傘下のメンバーや韓統連など60名は、3月5日にフリーダム・シールドの強行に反対する「米韓合同軍事演習抗議行動」に立ち上がり、駐日米大使館と駐日韓国大使館前で抗議のシュプレヒコールをあげた(関連記事3面)。『朝鮮新報』3月25日付によれば、同様の取り組みは新潟(4日)、広島(5日)、横浜、札幌(7日)、大阪、福岡(12日)、名古屋、神戸(13日)でも取り組まれたと報じられている。さらに、東アジア市民連帯は3月13日にも衆議院第2議員会館に外務省担当職員を呼び、自衛隊の米韓共同訓練の参加中止と、朝鮮との対話再開を求める申し入れを行なった。3月22日、全水道東京水道労組、全国一般東京東部労組、全国一般・全労働者組合を呼びかけ団体とする労組反戦行動実行委員会も東京・JR水道橋駅頭において、「労働者の力で戦争をとめよう!」とシュプレヒコールをあげ情宣活動に取り組んだ。われわれも国際婦人デー3・9東京集会において「戦争をとめよう!」のスローガンのもと街頭デモンストレーションを行ない、道行く人びとにロシア・ウクライナ戦争、パレスチナ・ガザ地区のジェノサイド、米韓合同軍事演習の中止を訴えた(関連記事6~7面+付録)。
 先の最高人民会議における施政演説において、金正恩国務委員長は出席した代議員たちに《反帝・自主は正義、真理であり、尊厳と主権、平和と安全はこの道でのみしっかり守られる》と強調したうえで、《社会主義国との関係発展を優先課題にして双務的・多角的協力をよりいっそう強化し、国際的規模での反帝共同行動、共同闘争を果敢に展開し、自主と正義を志向する全ての国、民族と思想と体制の差を超越して団結し、協力して、国の対外関係領域をいっそう拡大するための活動で新たな進展を遂げなければならない》と呼びかけた。われわれはこれを、ソ連邦の倒壊から30余年にわたる苦難の闘いをへて宣明された「革命の三大潮流」復活にむけての社会主義朝鮮から発せられた意志表示であると受け止める。
 その朝鮮側の呼びかけに連なり、われわれも帝国主義日本の地において社会主義をめざし、自国の支配階級と闘うことをつうじて朝鮮半島と東北アジア、ひいては世界の平和に寄与する、この労働者国際主義の精神で、日米韓帝国主義の輩がもっとも嫌う中・朝・韓・露の労働者階級との団結をかちとるために奮闘しよう!
社会主義にむけた運動の弁証法において、朝鮮南北間のあり方は、われわれもその一翼を担う互いの闘いのなかから、より高次の姿を現わしてくると確信する。

【土松克典】
(『思想運動』1099号 2024年4月1日号)