沖縄の独自外交と地方自治権の擁護
国による代執行を許さない闘いを

 沖縄県は、23年4月に県の7か所の海外事務所の情報を集約し、地域外交の司令塔的役割を担う「地域外交室」を設置した。6月、照屋義実副知事が韓国・済州特別自治道の呉怜勲知事と会談、済州道が呼びかける「グローバル平和都市連帯」に参加を表明した。「グローバル平和都市連帯」は、第一次世界大戦で激戦地となった仏ベルダンと独オスナブリュックと連帯・協力して構成した都市間ネットワークである。

知事の訪中

 玉城デニー知事は、日本国際貿易促進協会(河野洋平会長)の一員として7月3日から7日まで中国を訪れた。李強首相と会談、経済・文化交流の活性化に向けてビザの取得手続きの簡素化や直行便の復旧について協力を要請した。要請に応え、9月17日から中国国際航空が那覇―北京便を復活、ビザ取得手続きの簡素化に加えて団体旅行が解禁された。知事は「日本と中国の友好関係に貢献したい。安定的・建設的な対話によって地域の平和が保たれるようにしたい」と述べた。会談に先立ち、習近平主席が「福州で働いた際にこの地が琉球との交流の根源が深いと知った」と語ったことが『人民日報』に載り、話題となった。
 6日、知事は友好都市である福州市を訪問、明から清の時代に福州で亡くなった琉球人の墓地を訪れ、沖縄から持参した平御香とウチカビ(沖縄で先祖供養の際用いられる冥銭の一種)を供えた。その後、中国への貢ぎ物を献上するため派遣された琉球人らが拠点とした地に建ち沖縄と関係する文化財を展示した「琉球館」と、福建省との経済・文化交流促進のために建設された「福建沖縄友好協会」を訪れた。中国側は、王文濤中国商務部長(経済産業相に相当する)や周祖翼省党委員長書記(福建省トップ)との会談を用意し、歓迎した。10月6日、日本沖縄華僑華人総会は、創立50周年を記念した講演会を開催、呉江浩中国大使が講演し、「中国と日本は厳しい状況にあるが中国は侵略を行なわない」ことを強調した。岸田政権が沖縄をはじめ日本全土を軍事要塞化し、戦争をする国の建設を押し進めている現在、中国さらに韓国の平和勢力との連帯は、反戦・平和の推進に貢献することは疑いない。

知事の国連発言と地方自治権

 知事は、9月18日から21日までジュネーブで開催される国連人権理事会に参加した。2015年に翁長前知事が出席して以来、5年ぶり。18日、国連人権委員会の国際秩序に関する会合に出席、2分間のスピーチをおこなった。日本全土の0・6%しかない沖縄に在日米軍施設の約7割が集中している現状を述べ、県民が県民投票という民主主義的な手続きにより明確に新基地建設に反対しているにもかかわらず、日本政府は建設を強行していること、さらに軍事力を増強していることに対して、「わたしたちは、2016年国連総会で採択された『平和への権利』を、わたしたちの地域において具体化するよう、関係政府による外交努力の強化を要請」した。
 自民党の県連とその会派は、知事に対して「辺野古問題を人権に結び付けず、冷静に発言してほしい」と申し入れたが、いったい、平和的生存権と結びつかない人権が存在するのであろうか? 琉球大学の阿部藹さんは、翁長前知事が述べた人権や自己決定権が知事のスピーチにはいっていないことを今後の議論の課題として挙げている。
 県の自己決定権には、二つの方向性がある。一つは、「独立の権利」であり、もう一つが「高度の自治権」である。翁長前知事の主張は後者だった。これは地方自治権である。いま沖縄でたたかわれている地方自治権擁護の闘いは、国との闘いとなっている。知事のスピーチに反論したのは、日本政府代表塩田崇弘である。かれは沖縄の米軍駐留について、「地政学的理由と日本の安全保障に基づいており、差別的な意図はない」とシラをきり、「日本は法治国家で、知事の埋め立て許可を受け、法に従って辺野古埋め立て地の建設がおこなわれている」と述べた。この時期、同時に進行した新基地建設をめぐる法廷闘争は、日本の権力が法治国家であることを放棄していることを明確に示している。

権力の法治の放棄との闘い

 2020年4月、沖縄防衛局は、仲井眞元知事が許可した設計図に対して、軟弱地盤改良工事の必要性から設計変更の申請を県に提出したが、県は承認しなかった。防衛局は私人に成りすまし、県の不承認を不服として身内である国土交通省に訴え、国土交通相が県に対して承認するよう「是正の指示」を出した。県がこの「是正の指示」を不服として訴訟を起こしたことに対する判決が9月4日に最高裁から出され、県の敗訴となった。正に、司法が政権のシモベであることが示された判決であった。これでは、一度知事が認めた新基地建設は、新しく選ばれた新知事が何度拒否しても変更できない。法による地方自治体の権限をも否定するものだ。玉城知事の「地方自治体の自主性や自立性、ひいては憲法が定める地方自治の本旨をないがしろにしかねない」という批判は、正当だ。
 10月4日、知事は国交省が設計変更を申請するよう求めた「指示」に対して「期限までに承認を行なうことは困難」と回答し、事実上の不承認とした。国は、5日に代執行訴訟を起した。知事は、11日に承認しない立場を明確にし、応訴することを正式に表明した。国は、県が承認しないのは「著しく公益を害する」としているが、知事は、「国の言う公益と県民の考える公益にはかなり乖離がある」と述べている。
 9月4日に県敗訴が確定してからは、ゲート前に県民が集まり、判決を糾弾して知事を支持する集会が開かれている。10月30日には、当日国の代執行をめぐる口頭弁論に臨む知事を激励する集会が、福岡高裁那覇支部の門前で開かれた。さらに、11月5日には、「国による代執行を許せない!デニー知事と共に地方自治を守る県民大集会」が、北谷公園屋内運動場で開催された。県議会11月定例会は5日に空転した。知事が「辺野古新基地建設」と発言したことに対し、赤嶺昇議長(オール沖縄から自民党支持へ鞍替えした)は、国の呼称「普天間飛行場代替施設建設事業」を使えと迫り、自民会派全員は退席した。
 沖縄は、反戦・平和の闘いの最前線にある。1月24日のHOWS講座は、「今こそ、戦争をさせない行動を! 沖縄の反基地闘争の現場に通って思うこと」のテーマで内田雅敏さんが講演する。多数の方々の参集を!

【阪上みつ子】
(『思想運動』1096号 2024年1月1日号)