南西諸島と日本全土の軍事化を阻止しよう
戦争政権打倒に向け広範な人びとの団結を

 日米軍事同盟を深化させる自公政権

 二〇二三年度自衛隊統合演習(実動演習)は十一月十日から二十日まで、全国各地とわが国周辺海空域で行なわれた。演習は、防衛、警備に関する自衛隊の統合運用能力の維持・向上、日米の総合運用向上をはかるもので、参加部隊は統幕長を統裁官に統陸海空幕、情本、陸自は陸上総隊と各方面隊など、海自は自衛隊と各地方隊など、空自は航空総隊と航空支援集団など、共同の部隊から自衛隊情報保全隊と自衛隊サイバー防衛隊の約三万八〇〇人、車両三五〇〇両、艦艇約二〇隻、航空機約二一〇機。米軍からは太平洋陸軍、太平洋艦隊、太平洋空軍、太平洋海兵隊、在日米軍の約一万二〇〇〇人が参加した。さらに、豪、加、仏、NZ、比、韓、米、英、独、NATOからオブザーバー参加があった。このような大規模な軍事演習が、国会で大した論議もされず、マスコミは日常茶飯事の一コマとして報道を消費していく。日本は、すでに日本国憲法を最高法規とする平和国家ではない。世界第四位の軍事力を持ち、日米軍事同盟を最高規範とする戦争国家の道をひた走っている。しかも、それがかのナチス礼賛者閣僚が言うように国民の大多数が知らないうちに反対する前に進行していることが問題なのだ。
 自公戦争政権は、二〇二〇年の新型コロナウイルスパンデミックによりあらゆる国民の社会活動が委縮する中でも日米軍事同盟を強化・深化させてきた。二〇二二年二月のロシアによるウクライナ侵攻を契機に軍事大国化路線のアクセルを踏み込んだ日本政府は、積み上げてきた朝鮮・中国敵視政策と米国を旗手とした西側資本主義国による中国包囲網への加担の度合いを強めている。一九七二年の日中共同声明と一九七八年の日中平和条約に基づく一つの中国、平等互恵という東アジア平和構想をかなぐり捨て、台湾有事を扇動して東アジア、沖縄・琉球列島における第二の沖縄戦の導火線に火をつけようとしている。

戦争政策の背景に資本主義体制の矛盾

 なぜ、日米両政府はこのような戦争政策を推し進めなければならないのか。今、世界の資本主義体制は慢性的停滞に陥って出口が見えない。産業は情報通信産業に依存、支配されている。一次二次の生活に密着した農工業も、社会的インフラである土木・環境、教育、社会保障ですら企業の利潤第一主義の犠牲となっている。社会を支配するのは極少数の金融資本であり、社会の富を独占している。科学技術が進み、あらゆる産業において生産力はこれまでになく高まっている。にもかかわらず、なぜに人々は日々の生活に汲々とし、あるいは住居を失い、あるいは食事に事欠き、教育を受ける権利を奪われ、生活を支える職を失うのか。世界に目を向ければ、多くの地域で戦争の惨禍に命の危険を晒し、最低の衛生環境の中で飢餓に苦しまなければならないのか。それは、社会の一部の富裕層が、社会の生産手段と生産力を独占し、社会の富を占有しているからにほかならない。このような米国を一極とした先進資本主義国の世界体制がきしみだし、開発途上国の中からBRICSを中心とした新たな勢力が登場する中で、いま世界市場の再編が行なわれている。現下のウクライナ戦争も中央アフリカでの紛争も、また中東でのイスラエル・パレスチナ戦争も、また米国・先進資本主義国による対中国経済制裁・中国封じ込め政策などすべてが、資本主義世界体制の矛盾のたどり着いた結果と言っても過言ではない。
 その一つの表れとして東アジアの軍事的緊張を激化させる沖縄・琉球弧における日米軍事体制の強化と戦争の準備が推進されている。それを現在は岸田政権が進めているが、安倍・菅政権が進めてきたものであり、岸田政権以後も社会構造が変わらない限りつづくものだ。岸田首相は、国会議論も経ずにバイデン米大統領に日本の国防費を対GDP比二%に倍増する約束をし、今後五年間で四三兆円を超す大軍拡予算を打ち出した。その予算の多くが米国からの大量武器購入費に充てられ、国民は軍拡に必要な大増税に苦しむことは必定である。
 いま中国は、台湾は中国の一部であり平和的統一は十分時間をかけるべき事業だと言っている。日米政府は台湾を挑発して二つの中国を誘発している。そして東アジアに緊張が高まることによって、米国経済の延命と三〇年間停滞し続けている日本経済の再浮揚とをはかり、その軍事的保障として日米軍事同盟の深化、軍需産業、軍国主義、排外主義の醸成をはかっているのである。沖縄県民の命と暮らしを危険に晒す、辺野古新基地建設も沖縄米軍基地の再編強化も自衛隊ミサイル基地の沖縄全域への展開もすべてが日米政府と日米資本主義体制の頭目たち、資本家の意に適うものだ。その沖縄では、米軍や自衛隊の戦車や装甲車が公道を走り、戦闘服の兵士が隊列を組んで移動訓練を大っぴらに行なうようになった。航空機やヘリコプターが国内法規の最低一五〇mを特例変更し地上六〇mの超低空飛行訓練を行なっている。そのヘリコプターには機関銃の銃口を住民に向けた兵士が乗っているのである。現在、沖縄の米軍と自衛隊は高度に統合された訓練を行なっている。もちろん統合訓練の指揮官は米軍である。米軍は、第一列島線を犯した中国艦船や航空機を攻撃すると無責任にも言っている。それは第二の沖縄戦の先端を切ることであり、沖縄県全域が戦場になるということだ。そうなれば沖縄県民の避難先はどこにもない。沖縄県民が生き残る道は「戦争をしない、戦争をさせない」ことだけである。

沖縄と本土の各地で11・23平和集会

 沖縄県民は、玉城デニー知事を先頭に琉球・沖縄の全列島基地化に反対し、辺野古新基地建設に反対して闘っている。十一月十五日、辺野古新基地建設の設計変更申請をめぐり、沖縄県の「不承認」を国が覆した採決の取り消しを求めた訴訟の判決が那覇地裁であった。判決は、「原告は、取り消し訴訟を提起する適格を有しない」という門前払いの不当判決であった。
 政府、裁判所が一体となって地方自治と沖縄県民の民意を蹂躙する憲法違反の判決に対し、玉城知事は決して諦めないという意志を表明している。十一月二十三日には那覇市奥武山公園陸上競技場で沖縄県内六三の市民団体・個人が立ち上げた「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」が主催し、「沖縄県民平和大集会」が開催された。集会には、県内外から一万人を超す人々が結集し、玉城デニー沖縄県知事や台湾住民の参加、決意表明も行なわれ、「わたしたちの住む島を戦場にしないで」という切実な声を世界に向けて発したのだ。本土では、東京(国会前)、神奈川、滋賀、京都、奈良、大阪、広島、福岡など各地で連帯の集会が開催された。日米政府による戦争政策、大軍拡政策は、日米両資本主義の生き残りをかけた政策であり不動のものだ。わたしたちの闘いは、さらに強く大きくならなければならない。戦争をなくすためには基地と兵隊を撤去させねばならない。そのためには戦争政策を撤回させ、戦争政策を進める岸田自公政権を倒さなければならない。さらに戦争政策で甘い汁を吸っている資本家と資本主義を倒すのでなければ、戦争をなくすことも平和を築くこともできない。政府の戦争政策にノーと言えない「連合」を一日も早く真の労働組合ナショナルセンターに変えるために労働運動の抱える責任は重い。

【岡本茂樹】
(『思想運動』1095号 2023年12月1日号)