国際メーデー一三七周年にあたって
戦争国家化反対の闘いに起とう
ストライキで闘う思想と体制の確立を!


 支配階級がこの国を、軍事大国化の道へ、すなわち米帝国主義とともに・かつ・米帝国主義の手足として「戦争する国」たらんと遮二無二突き進みつつあるまさにこのとき、われわれは国際メーデー一三七周年を迎えている。
 岸田自民党・公明党連立政権は、ロシアのウクライナ侵攻を奇貨として、「台湾有事」なる虚構をでっち上げて防衛政策(軍事政策)を大転換した。敵基地先制攻撃を可能とし、防衛予算の上限も現在のGDP比一%から二%へと倍増した。宮古島など南西諸島への自衛隊配備も急ピッチで進められている。そして、五月十九日からは、西側帝国主義の軍事同盟の強化=戦争政策の共同推進を主要目的とするG7広島サミットが開催される。
 第二インターナショナルが五月一日を万国の労働者の国際的示威日と定めた一八九〇年の第一回国際メーデーは、「戦争に対する闘争を!」「常備軍を廃止せよ!」「八時間労働制を!」のスローガンを掲げた。
 日本の労働者人民にとって、今ほどこのスローガンが喫緊の課題であるときはない。
 二〇二三春闘の賃上げ動向は昨年までとは大きくさま変わりした。

春闘の情勢

 衣料大手のファーストリテイリングは初任給を三〇万円に引き上げるなど最大四〇%の賃上げを一月に公表、流通大手のイオンリテールも三月一日までに平均五%(パート労働者は平均七%)賃上げで妥結した。三月十五日の集中回答日には自動車、電機等の大手企業の満額回答が相次いだ。いっぽうで、私鉄など地場の中堅企業の回答は要求の半額程度にとどまった。四月十三日に公表された連合の第四次回答集計では、定昇込み加重平均で一万一〇二二円、三・六九%(昨年比一・五八ポイント増)、うち三〇〇人未満の中小組合は八四五六円、三・三九%(同一・三三ポイント増)。非正規労働者の時給は加重平均で五六・六五円増となっている。
 今春闘の賃上げ率は一九九〇年代半ば以降でもっとも高い水準であり、企業間格差はあるものの、大手だけでなく中堅、中小企業にもある程度波及していると見られる。
 今春闘の結果をどう見るか。
 今春闘の賃上げムードを演出したのは政府・独占の側であった。岸田首相は早くも昨年七月の経団連セミナーで三%以上の賃上げを要請してみせ、今年一月の経団連「経営労働政策特別委員会報告」は「賃金と物価が適切に上昇する好循環」を目指してベースアップを前向きに検討するよう会員企業に要請した。政府・独占は「ベア容認」の旗を振って、異常な物価高騰のもとで家計を切り詰めている労働者人民の不満を逸らすことと、賃上げによる需要喚起によって低迷する日本経済の浮揚を図ること、この一石二鳥を狙ったのだ。
 われわれは、今春闘の賃上げ率に溜飲を下げていてよいのか。否! 直近(二月)の統計で消費者物価の上昇率は引き続き賃金を上回っており、実質賃金は前年同月比マイナス二・六%、一一か月連続のマイナスだ。今春闘の結果は労働者人民の生活改善にはほど遠い。とりわけ、最低賃金すれすれで雇用されている非正規労働者、シングルマザーなどダブルワーク・トリプルワークを余儀なくされている労働者、フリーランス等の請負労働者、年金生活者、移住労働者などなど、賃上げの恩恵をストレートに受けることができない社会的弱者の困窮は解消されていない。
 もうひとつ、冷静に見ておくべきは、この賃上げの背後で、賃金体系の改悪が着々と進行していることだ。多くの企業は人材獲得競争のもと、賃上げ原資を初任給や若年層の賃金に厚く、中堅・高齢層には薄く配分している。その結果、賃金カーブのフラット化=年功賃金体系の破壊が急速に進んでいる。これは、いわゆる「ジョブ型雇用」への移行や「円滑な労働移動」実現の土台作りにほかならない。

世界の労働者は闘う

 本紙が報道してきたように、世界の労働組合、労働者は闘いの手を緩めていない。韓国貨物連帯労組は昨年十二月、安全運賃制の期限撤廃を求めて全国ストライキに突入した。イギリスでは看護師の労働組合である王立看護協会が、人員不足の解消と賃上げを要求して創立以来初めて三〇万人規模の全国ストに起ちあがった。アメリカニューヨーク州の看護師連盟も同じく人員不足解消を求めてストライキを実施し、勝利した。フランスではマクロン政権による年金の支給開始年齢引き上げに反対する三五〇万人規模の抗議行動が反復して行なわれた。ドイツでは一〇・五%の賃上げを求めて統一サービス産業労働組合(ベルディ)と鉄道・運輸労働組合(EVG)が連携し三〇万人規模のストライキに起ちあがった。
 日本での争議行為は年間でも数十件という体たらくであり、彼我の差は大きい。しかしながら、われわれは、連合傘下の大単産の多くが賃上げ要求を経済指標に従属させる思想にからめとられたまま「労使対話」を深めているのとは対照的に、全医労(全日本国立医療労働組合)、JMITU(日本金属製造情報通信労働組合)、郵政産業労働者ユニオンなどストライキを立てて春闘を闘った労働組合が存在したこと、全労連、全労協がストライキを打てる労働組合づくりに焦点を当てて取り組んでいることを評価する。大衆運動としての闘う労働組合運動の再生の可能性を、そこに見出すからだ。

われわれの課題

 労働戦線の右翼的再編の結果として、労働組合を中心とした大衆運動の方針と行動の統一が失われて久しい。メーデー集会は日にちすら違えて開催されている。
 憲法に保障された労働三権、とりわけスト権を行使することなしに、労働者の要求実現は不可能だ。職場の仲間と語り合い、団結をつくり出し、賃金要求や生活改善要求を職場生産点を基礎に練り上げ組織していく、要求実現のためにストライキで闘える体制をつくっていく、そして反戦平和闘争や憲法改悪を阻止する運動を、われわれの主戦場である職場生産点を基礎として、いざというときにはゼネラルストライキで「ノー!」を突きつけることのできる組織と運動を構築していかねばならない。そのためにも、いまはその実現への道筋はなお不透明だが、戦闘的、階級的な労働運動の指導部の再建こそが焦眉の課題だ。この課題を手放さない、志ある労働者、活動家、労働組合の交流と結集を強めていこう。
 国際メーデー一三七周年万歳!


【吉良 寛・自治体労働者】
(『思想運動』1088号 2023年5月1日号)