答えはひとつ、抗争あるのみ
壊弾圧強める尹錫悦政権との闘いを宣布した民主労総


 本紙前号で既報のように、一月十八日、韓国の国家情報院(旧KCIA。以下、国情院)は、民主労総本部をはじめ傘下の保健医療労組などに押収捜索を行ない、その後、四名の組合員を「国家保安法」違反容疑で逮捕した。それ以降も韓国大統領尹錫悦による労働組合弾圧が続いている。

新年辞で弾圧を宣布

 昨年五月に大統領に就任して以降、検察出身の尹錫悦は労組嫌悪の姿勢をあからさまにし、今年一月一日におこなった「新年辞」でも《大韓民国の未来と未来世代の運命がかかる労働、教育、年金の三大改革をこれ以上先送りできない》として、三大改革のトップに「労働改革」を挙げた。
 そこでは《まず労働改革をつうじ、経済成長を牽引していかなければならない》として、《変化する需要にあわせて労働市場を柔軟に変えながら労使および労労関係の公正性を確立し、労働現場の安全を改善するためあらゆる努力を尽くす》と述べ、《労働市場の二重構造を改善しなければならず》、《職務中心、成果給中心の転換を推進する企業と、貴族的で強硬な労組と妥協して年功序列システムに埋没する企業に対する政府の支援はやはり差別化されるべき》として、《このような労働改革の出発点は「労使法治主義」であり》、《「労使法治主義」でこそ、不必要な争議と葛藤を予防し、真に労働の価値を尊重できる道》と強調した。
 これはなにを意味するか? すなわち、日本でもよく指摘されるように、労働市場の流動化を成し遂げるために、年功序列制から成果給中心の年俸制システムに転換していくことがあからさまに語られている。それにもかかわらず、これを妨げるのが労働組合であり、「利己主義」的で「貴族」的で、なにかというと「ストライキ」を連発する過激な組織、という「朝中東」(『朝鮮日報』『中央日報』『東亜日報』の意)をはじめとする保守言論が目的意識的に注入してきた反労働組合イデオロギーのうえにのって、政府に従わない労組・企業には「労使法治主義」で対応すると言っているのだ。
 だが、「魚は頭から腐る」ということわざのとおり、資本主義社会ではどんな法であれ、頭である為政者が腐っていれば法も腐る。そればかりか、弾圧の刃となって労働者・労働組合に襲いかかってくる。その現実は、この日本社会において、日々われわれが体験していることではないか。

弾圧の刃研ぐ尹政権

 また、二月二十一日に行なわれた第八回国務会議(=閣僚会議)を主宰した尹錫悦は、民主労総傘下の全国建設労働組合(以下、建設労組)を次のように暴力団まがいに罵倒し、「会計の透明性」という名目で労組自治への介入を指示した。
 《今日の国務会議では「建設現場の不法・不当行為根絶対策」を議論する。まだ建設現場では強硬既得権労組が金品要求、採用強要、工事妨害のような不法行為をおおっぴらに行なっている。そのため、労働者たちは働き口を失い、工事はずさんになっている。小学校の開校と新規アパート入居が遅れるなど、その被害は国民に転嫁されている。暴力と不法を見ても、これを放置したら国家とは言えない。不法行為を集中点検・取り締まり、不法行為が露顕する場合には、法により厳正に措置しなければならない。》《労働改革の出発は労組会計の透明性強化だ。この五年間、国民の血税で投入された一五〇〇億ウォン以上の政府支援金を使いながら、労組は会計帳簿を提出せず、組織的に反発している。周知のように米英などの先進国では、労組の会計報告と会計書類の提出義務を法が規定している。わが国では、労組の会費に対して相当額を税額控除して、事実上労組運営資金に対して、国民の税金で財政支援をしている。これは先ほどの一五〇〇億ウォンの支援金とは完全に別個の問題だ。会計の透明性を拒否する労組に対して、財政支援を継続することは、血税を負担する国民にはとうてい納得し難いものだ。雇用労働部をはじめとする関係部署は、労働改革を後押しできる立法をスピード感をもって推進するように願う。》
 だが、韓国の労働組合法第二五条(会計監査)は、労組の会計報告は、六か月に一回以上の会計監査員による会計監査を実施し、その結果を全組合員に公開する。また、会計監査員が必要と認める場合に組合の会計監査を実施し、その結果を公開できるとなっている。これは、日本の労働組合法もそうだが、あくまで労組自治の立場にたったものであって、ここに尹政権は介入しようとしているのだ。
 これに対して、「朝中東」のひとつ『中央日報』二月二十二日付「社説」は、「若者世代の新しい労働組合文化、希望が見える」との小見出しをつけて次のような主張を繰り広げた。《青年層が中心のMZ世代の労働組合は昨日、「刷新した労働者協議会」の発隊式を開き、公式活動を始めた。LGエレクトロニクスやソウル交通公社などからMZ世代の八つの労働組合が参加した。組合員の構成は幅広いが、二〇、三〇代の事務・研究職が多数を占める。韓国労総と民主労総という二大組織の巨大な影響力から抜け出し、青年世代の新しい風を吹き込むことができるか注目される。/(中略)すでにMZ労働組合は従来の労働界とは異なる動きを見せている。二大労総は会計帳簿公開に関して「自主権侵害」と反発するが、MZ労働組合は自発的に組合費の使用内訳を公開する。労働組合の会計透明性は当然であり義務だ。にもかかわらず従来の労働界の不透明な会計処理はMZ労働組合とは対照的だ》と、政権と言論は若い世代の政権寄り労組の育成にも余念がない。

命まもる労組の闘い

 建設現場の元請け、下請け、孫請けなどの多重構造により、建設労働者は二重三重に搾取され、危険な労働環境に置かれている。建設労組の報告によれば、昨年一年の建設現場における労働災害の死亡者は三四一人で、全産業の労働災害死亡者の約半数を占める。じつに一日に一人の建設労働者が労災事故で命を失っている状態だ。建設労組が未組織の建設労働者たちを組合に組織して、安全な労働環境づくりを雇用主に対して要求する当然の組合活動も、腐った頭の尹錫悦から見れば、「金品要求、採用強要、工事妨害」に映る。
 これは昨年六月と十一月に「安全運賃制」の継続と適用範囲の拡大を求めてストライキで闘った民主労総傘下の公共運輸労働組合貨物連帯の場合も同様だ。大型トレーラーや生コン車を運転する労働者で構成する貨物連帯は、この一〇年間の物価引き上げ率よりも貨物運送料のほうが下落したため、貨物労働者たちは一日一三時間を越える過労と危険な過積載、猛スピードを強要されてきた、と指摘する。そして、道路公社によれば高速道路における貨物車事故の主要原因のトップが眠気(四二%)、二位が注意怠慢(三四%)、三位が猛スピード(八%)と言う。低い運送料をカバーするため、貨物労働者は長時間労働と夜間運行、過労と過積載にはしり、それが道路上の危険につながっているのだ。そうした危険を除去するために、貨物連帯は政府・荷主と交渉して、二〇二〇年から貨物労働者の最低賃金と言える「貨物自動車安全運賃制」を期限付きではあったが法制化させ施行してきた。この期限が三年で切れるために、貨物連帯は昨年六月と十一月に「安全運賃制」の期限条項の廃止と適用範囲を貨物トレーラーや生コン車の運転手からさらに他業種の運転手にも拡大することを要求してゼネストに突入したのである。これに尹錫悦政権は、国務会議で「貨物自動車運輸事業法」にもとづく「業務開始命令」を決定し、従わなければ刑事罰に処する攻撃で臨んできた。
 これら建設労組や貨物連帯の闘いは、労働組合が資本の飽くなき利潤の追求によって命まで奪われる労働環境に歯止めをかけるための最低限の規制をかけるものであった。これらの闘いは、日本の全日建関西生コン支部の闘いと国家権力による弾圧に通底する要素をもっている。資本は国境を越えるが、労働者は国境を前に立ちすくんではならない。建設労組や貨物連帯の闘いの意味を知り、国境を越えた連帯が、われわれ日本の労働者に問われている。

全人民の反撃を準備

 尹錫悦政権の労組弾圧は現在進行形である。
 二月中旬には、民主労総の幹部が国情院の取り調べを受けた。日帝植民地支配からの解放記念日を前にした昨年八月十三日、ソウルの龍山区にある駐韓米軍基地付近で開催した民主労総と韓国労総、そして朝鮮民主主義人民共和国の朝鮮職業総同盟(以下、職総)の三大労総による「韓米合同軍事演習反対! 韓米日軍事協力反対! 民族の自主、平和、大団結のための南北労働者決意大会」(同大会の決議文は本紙二〇二二年十月一日付に翻訳掲載)において、職総から送られてきたメッセージを代読したことが、「国家保安法」違反に当たるかどうかの取り調べであった。
 また二月二十三日、これも民主労総傘下の金属労組慶南支部を国情院捜査官が家宅捜索に乗り出した。金属労組慶南支部の幹部一名と同支部所属の巨済統営固城造船下請支会幹部一名に対する「国家保安法」違反容疑が理由だ。
 国情院がこれほど「国家保安法」を振りかざして民主労総組合員に対する家宅捜索を強行する背景には、文在寅前政権の時期に国情院法改正の一環として、二〇二四年一月に「対共捜査権」の国情院から警察への移管が決められていることが指摘されている。警察の能力では国外で活動するスパイ網を捕捉できないことをアピールするため、国情院が死活を賭けて「国家保安法」違反のスパイ事件を捏造しようとしているのだ。「国家保安法」違反を口実にした国情院の捜査は、労働界ばかりではなく、戦時性奴隷制被害者の支援活動を行なってきた人びとや全国農民会総連盟、政党では進歩党にまで拡大している。そして、最大野党である共に民主党の李在明代表に対しては、城南市長時代の大庄洞地区の都市開発事業に関連して背任容疑で検察が拘束令状を裁判所に請求している。尹錫悦の妻・金建希の株価操作疑惑や学歴捏造疑惑に対して、検察はただの一度も調査したことがないが、李在明代表に対しては二七六回にわたる押収捜索が行なわれている。
 こうした一九七〇年代から八〇年代にかけての政治犯捏造事件を彷彿させる暗黒政治=ファッショ公安統治が息を吹きかえしている状況に対して、闘いの中軸になる民主労総は二月七日に第七五回定期代議員大会を開催して、反尹錫悦闘争の全面化を確認した。具体的には、三月に民主労総闘争宣言大会を開催し、四月に生命安全改悪阻止闘争、五月に全国同時多発二〇万総決起、六月にすべての労働者の賃上げのための最低賃金闘争を経て、七月第一週と二週に民主労総ゼネスト決行を決議した。
 反尹錫悦闘争はすでに始まっている。建設労組は全組合員に対して、二月二十八日のソウル上京闘争を指示した。尹錫悦政権の労組弾圧・ファッショ公安統治に対して、民主労総と基層人民の答えはひとつ、抗争あるのみだ。
【土松克典】
(『思想運動』1086号 2023年3月1日号)