軍拡と憲法破壊の流れを断ち切ろう!
10・21官邸前アクションに結集を
国葬・旧統一協会批判を壊憲阻止運動へ
安倍晋三の国葬反対、そして旧統一協会と自民党との癒着を批判する世論が日増しに高まるなか、岸田政権の支持率が急落している。
毎日新聞と社会調査研究センターの直近の(九月十七日~十八日)世論調査では、国葬について、反対↓六二%(前回〔八月二十日~二十一日〕比九%増)、賛成↓二七%(前回比三%減)、内閣支持率↓二九%(前回比七%減)、内閣不支持率↓六四%(前回比一〇%増)、自民党支持率↓二三%(前回比六%減)の結果が出た。
国葬はそもそも戦前の「国葬令」に基づくもので天皇制絶対主義を支える人民統治の手段として機能した。それは日本国憲法が謳う国民主権、思想・良心の自由、政教分離の理念に明確に違反する。そんなものに数億円とも十数億円とも言われる国費(われわれの血税だ)をつぎ込む。しかも国会にいっさい諮ることなく閣議だけでそれを決める。法治主義・立憲主義を真っ向から否定する「安倍国葬」は断じて許されない。
また、旧統一協会とその関連組織が行なってきた(今も行なっている)霊感商法に見られる反社会的行為はきびしく断罪されねばならない。
だが、こうした視点からの追及だけでよいのか。われわれが今なすべきは、「国葬」によって日本の支配層が美化・正当化しようとしている「アベ政治」の真実の姿、すなわち、日本の独占資本の政治的代理人としての反人民的・反労働者的・反共的性格、近現代における日本の植民地政策と侵略戦争を全面肯定する立場からの、そして新たな侵略戦争を遂行できる国家づくりをめざす立場からの、日本国憲法敵視、戦争政策推進の姿勢を徹底的に暴露しその継続を許さないことだ。
旧統一協会に対しても、カルト的実態や諸々の悪徳行為だけでなく、その反共主義・反左翼主義、改憲攻撃の先兵としての政治的役割(だからこそ安倍ら自民党右派との固い結びつきが生まれた)こそ問題にし指弾していく。あわせて統一協会だけでなく、神道政治連盟や生長の家、日本会議などの宗教右派や極右組織が自民党をはじめとする保守政党と深く結びついて日本の政治全体の反動化を押し進めてきた実態・構造を暴き出していく。
そうした政治宣伝を広く強力に行なうことによって、マスメディア主導でつくられた現在の国葬・統一協会批判の世論を正しく改憲阻止、戦争策動反対の方向にむけさせることができる。だが、この流れを一過性の「逆風」に終わらせずに、自公政権打倒の闘いに発展させていくためには、マスコミや議会政党頼だのみの運動ではなく、職場や地域における大衆的な抗議・糾弾行動の組織化とその前進がなんとしても必要だ。そのためにも、今こそ労働者人民は支配階級がもくろむ安倍の遺志=改憲の実現を阻止する闘いに全力を注ごう。
沖縄の闘いと本土の闘い
九月十一日投開票の沖縄県知事選挙では、辺野古新基地反対を訴えた現職玉城デニー氏(立憲、共産、社民、れいわ、沖縄社大、新しい風・にぬふぁぶし推薦)が、新基地容認の佐喜眞淳・元宜野湾市長(自民、公明推薦)と下地幹郎・元衆議院議員を破り再選を果たした。玉城氏と佐喜眞候補との得票差は約六万五千票、事前の予想を上回る大差をつけての勝利だ。
選挙戦に入る前から佐喜眞候補は旧統一協会との密接な関係を暴露され、そのことも敗北の大きな要因のひとつとなった。だが二〇一八年の前回選挙では新基地建設の賛否を明言しなかった佐喜眞候補が今回は明確に「基地容認」を打ち出して選挙に臨んだ事実を見れば、選挙結果は「基地建設反対」が沖縄の民意であることを改めてはっきり示したといえる。そのことは同時に行なわれた県議補選でオール沖縄の上原快佐氏が当選したことにも示された。
いっぽうで、普天間基地をかかえる宜野湾市の市長選ではオール沖縄の仲西春雄候補が保守の現職に大差で敗れた。
また新基地建設が強行されている名護市の市議会選挙ではオール沖縄の野党が二議席減らし、与党一五、野党一一の議会構成となった。ここでは日本政府の露骨な利益誘導による「アメとムチ」の政策が奏功する形となった。
では、日本全体をみればどうか。七月の平和に関する全国世論調査では日本が戦争をする可能性があると答えた人が四八%、また今年行なわれた複数の世論調査で憲法九条への自衛隊明記に賛成すると答えた人がやはり五割前後を占めている。「世論」の半数が日本の戦争をリアルにとらえ、自衛隊を容認しているなかでの沖縄県知事選の勝利の意義は大きい。
「一ミリもぶれない」強固な意志で闘った玉城氏とそれを支えた沖縄の人びとの勝利は、岸田政権には大きな痛打となり、全国で反戦・反基地、改憲反対の運動を担う仲間たちには大きな励ましとなった。心より敬意を表したい。
知事選が新基地建設反対の民意を明確に示したにもかかわらず政府は今回もまた「辺野古移設が唯一の解決策」(松野官房長官)との態度表明を繰り返した。この政府と対峙し、日本の労働者階級は沖縄の人びとと連帯していかに闘うのか。そのことがきびしく問われている。
「防衛」政策の根本的転換策す岸田政権
岸田政権は、年末までに「防衛」政策の三文書=国家安全保障戦略(NSS)、防衛計画の大綱(大綱)、中期防衛力整備計画(中期防)を「見直す」としているが、その要点はこれまでの「専守防衛」や「海外での武力行使の禁止」といった原則を捨て「敵基地攻撃」や「先制攻撃」を可能とする方向に日本の「防衛」政策の基本的スタンスを転換させること(実質的な平和憲法破壊)である。だが現実には三文書の改定を待つまでもなくなし崩し的な方向転換が進んでいる。一例を示せば、防衛省が八月三十一日に決定した二〇二三年度概算要求では、過去最大の五兆五九四七億円が計上されたが、これ以外に金額を明示しない「事項要求」が一〇〇件以上盛り込まれており、この先の予算編成でさらに上積みされ六兆円台半ばの規模になる見通しだ。岸田政権がめざす「防衛力の抜本強化」の方針の下、青天井の要求となっているのが実態だ。内容の面では、「スタンドオフ防衛能力」が強調され、現在の百数十キロから一〇〇〇キロ程度に射程を伸ばす「12式地対鑑誘導弾」(地発型 中国本土まで狙える長射程ミサイル)の量産化が盛り込まれるなど、敵基地攻撃能力保有につながる多くの事項が織り込まれている。
こうした実質的な憲法改悪と並行して、岸田政権は七月の参議院選挙で改憲四党が議席の三分の二以上を獲得した状況を活かし、明文改憲にむけた動きを加速させる魂胆だ。今年一月~六月の通常国会では、衆院憲法審査会が緊急事態条項や九条をテーマにほぼ毎週開かれ、通常国会では過去最多となる一六回の開催を強行した。岸田政権は、改憲攻撃をリードしたこの布陣(衆院憲法審査会の森英介会長〔自民〕、新藤義孝与党筆頭幹事〔自民〕、古屋圭司自民党憲法改正実現本部長)を継続させ、秋の臨時国会から来年の通常国会にかけて、改憲原案の作成、憲法審査会への提出・議論、改憲発議へと持っていくシナリオを描いている。
労働組合は反戦運動の先頭に立とう!
ウクライナ戦争そして帝国主義がつくり出した「台湾海峡危機」を政治的に利用し軍備増強と壊憲の流れがかつてなく強まっている。われわれはかねてより労働者・労働組合が反戦運動・改憲反対運動の先頭に立つべきだと主張してきた。その立場から、この九月には、労組が主軸となった「壊憲NO!96条改悪反対連絡会議」主催の二つの労働者・市民集会(国葬反対と壊憲阻止がテーマ)の組織化の一翼を担った。
しかし、最大の労組ナショナルセンター・連合の会長が恥知らずにも日本の反動化・右傾化の元凶、労働運動攻撃の旗頭であった安倍晋三の「国葬」出席を表明する、あるいはコロナ解雇や急激な物価高騰によって労働者が過酷な状況に置かれていても、労働組合がストライキはおろか大衆集会ひとつ打てない現実(欧米では賃上げや生活防衛のためのストライキが闘われている)に見られるように、こんにち日本の労働運動は、非常に大きな後退を余儀なくされている。
こうしたきわめて困難な状況にあっても、原則を堅持して労働者の権利、雇用を守るためストライキを打って資本家と対決し、反戦平和や反原発などの政治的課題にも向き合っている首都圏の労働組合が、ウクライナ戦争を契機に協同して反戦行動に起ち上がっている。別掲のとおり、全水道東京水道労働組合、全国一般東京東部労働組合、全国一般・全労働者組合が中心となり組織する労組反戦行動実行委員会の呼びかけで、十月二十一日の国際反戦デーに「官邸前戦争反対!アクション」(一八時半~)が行なわれる。一人でも多くのみなさんの結集を呼びかける。
【大山 歩】
(二〇二二年九月二十七日)
(『思想運動』1081号 2022年10月1日号)
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