岸信夫防衛相へのHOWSによる抗議文
軍備増強に断固反対する!                        
ここに掲載するのは、辺野古への基地建設を許さない実行委員会が六月六日に行なった月例の防衛省前行動で、HOWSメンバーが読みあげたうえ防衛省の担当官に提出した文書全文である。【編集部】

玉城デニー沖縄県知事は、辺野古埋め立て設計変更申請の不承認を国土交通相が取り消したことに対し、五月九日、採決を不服として国地方係争処理委員会に審査を申し出た。さらに国土交通相が沖縄県に対し、是正の勧告に続けて「是正の指示」を出したことに対しても、玉城知事は是正の指示は不承認処分と連動した違法なものとして、五月三十日、国地方係争処理委員会に審査申し出を行なった。
辺野古埋め立て設計変更申請書を出した防衛省・沖縄防衛局は紛れもない国の機関であるにもかかわらず、国民または永住・定住する民が公権力によって権利を侵害された場合に救済するための行政不服審査法を悪用して、国土交通相に行政不服を申し立てたこと自体が違法である。これを同じ国の機関である国土交通相が審査して沖縄県知事の不承認を取り消す採決をしたことも違法だ。そのうえ知事の不承認が公有水面法に照らして有効であるにもかかわらず、国土交通相が沖縄県に辺野古埋め立て設計変更申請を承認しろと、是正指示したことも違法。さらに知事が不承認としているにもかかわらず、埋め立て工事を強行していることも違法である。法令にのっとり、といいながら政府みずから法律を捻じ曲げている。政府が調整し適法にして何でも通す、それが辺野古新基地建設の実態である。
防衛省・沖縄防衛局は、マヨネーズ並みと言われるほど軟弱な地盤のうえに軍事基地を造るというのに、もっとも深い水深九〇m地点のボーリング調査はしないで七〇m地点の調査結果で済ませようとしている。大規模施設に必要な大地震に備えた耐震設計もせず、中程度の地震の想定で済ませようとしている。地質学の専門家は震度一でも工事中にも護岸崩壊の恐れありと指摘してきた。国の地震調査委員会は沖縄などでM8の巨大地震がありうるとの最新予測を発表している。それでも知事の不承認を認めず、沖縄防衛局のずさんな安全性を無視した申請を一丸となって通そうとする姿勢には、何が何でも辺野古新基地を完成させるという日本政府の強硬姿勢が如実に表れている。
一九七二年五月、アメリカは施政権を日本政府に「返還」することによって軍事基地を強化・維持し、日本政府は沖縄に自衛隊を送り込んで対朝鮮、対アジアの前進基地とした。それから五〇年。日本の〇・六%しかない沖縄に全国の七〇%の米軍基地が集中している。一日も早い沖縄の負担軽減のために普天間基地の代替施設を辺野古に造ると政府は繰り返すが、辺野古の基地に普天間にはない新たな機能強化が盛り込まれることからも、工期が政府の試算ですら一二年かかることからいっても、SACOにおける五年ないし七年以内に移設条件つきで普天間飛行場を全面返還するという合意は破綻している。普天間基地は無条件で閉鎖・返還させるべきである。その普天間基地が返還されても、七〇%の米軍基地の現実は変わらず、さらに辺野古新基地建設の強行だ。政府が沖縄の人びとにもたらしているのは基地負担の増大にほかならない。
今月、慰霊の日を迎える沖縄・琉球弧の島じまには、いま自衛隊配備が急ピッチで進められている。防衛省は、与那国島に沿岸監視隊、宮古島にミサイル部隊を配備したのに続き、今年度末には石垣島にもミサイル部隊を配備、その後うるま市の勝連分屯地に地対艦ミサイルを配備してミサイル部隊の連隊本部を置く計画だ。軍隊は住民を守らない。それは沖縄戦の痛ましい経験から得られた教訓だ。基地と軍隊の駐留、演習の激化がいまも沖縄の人びとの生活と命を脅かしている。軍備増強は沖縄の人びとをふたたび戦争の危険にさらすものであり、断じて容認できない。軍備増強はアジアに軍事的緊張をもたらし、人民同士を殺し殺させる戦争を呼び込むものであり、断固反対する。
日本政府・防衛省は、戦争政策をやめ、軍事演習をやめ、基地をなくせ。辺野古新基地建設を断念せよ。ミサイル配備を中止しろ。
二〇二二年六月六日
(『思想運動』1078号 2022年7月1日号)