韓国政府が韓統連の旅券発給拒否・制限
国家保安法廃止訴え韓国大使館へ


 韓国外交部(日本の外務省に相当)は九月十一日、在日韓国民主統一連合(以下、韓統連)に対して、韓統連が申請していた韓国への旅券発給を拒否・制限する暴挙をはたらいた。われわれは、この暴挙に対して満身の怒りをこめて文在寅政権を糾弾する。
 韓統連はこの間、韓国政府が韓統連に対して旅券発給しないのは人権侵害であるという、韓国の国家人権委員会が今年五月にくだした勧告を受けて、六月にはいって孫亨根議長をはじめとする四名の韓統連幹部の旅券発給申請を行なっていた。これに対して韓国外交部は今回、この韓国人権委員会の勧告を蹴って、韓統連の孫亨根議長に対して旅券発給を拒否し、韓統連東京本部の梁炳龍代表委員と民主女性会の金知栄会長に対しては有効期限のある制限付き旅券発給措置をとったのである。
 今回の暴挙は、朴槿恵を政権の座から引きずり下ろした二〇一六年のろうそくデモに由来するとされる文在寅政権内部においても、元韓国中央情報部(KCIA)—元国家安全企画部の系譜を引き継ぐ国家情報院などの政権内反共・保守勢力が根強く存在していることを浮き彫りにした。
 周知のように韓統連は、その前身である韓国民主回復統一促進国民会議(略称、韓民統)の時代から韓国の民主化と南北朝鮮の統一に身を挺して尽くし、いまも闘っている団体である。そのような団体であるからこそ、朴正煕政権は一九七八年に、当時の韓民統を「国家保安法」にもとづく「反国家団体」指定し、以降、全斗煥、盧泰愚の反共軍事独裁政権は韓民統—韓統連を瓦解させるためのさまざまな工作をしかけ、続く金泳三政権時期の一九九〇年には、司法当局が「国家保安法」にもとづいて韓統連に対する「反国家団体」規定を適用した。韓統連はこうした弾圧をはねのけて、金大中政権時に初めて一時帰国を果たし、続く盧武鉉政権の時期には韓統連代表団の祖国往来を実現した。しかし、李明博、朴槿恵政権時期になってふたたび韓統連は「国家保安法」による捜査対象としての扱いを受けるようになり、そして今回、文在寅政権によって冒頭の旅券発給の拒否・制限を受けたのである。
 九月二日には、十月二十日にゼネストを予定している民主労総のヤン‐ギョンス委員長を襲って強制的に連行・逮捕拘禁し、十五日には潜水艦弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を参観して「北の挑発抑止」を云々し、そして今回の韓統連への旅券発給拒否・制限である。いったい文在寅大統領はどちらの方向をむいているのか? みずからの政権の由来を自覚するなら、積弊の最たる遺物「国家保安法」の撤廃こそ、人民から負託された崇高な仕事であろう。
 今後、韓統連は今回の文在寅政権の不当極まる措置に対して、韓国内の「韓統連の完全な名誉回復と帰国保障のための汎国民対策委員会」と連携して国家保安法廃止の闘いを不退転の決意で強化していくことを明らかにしている。われわれ活動家集団思想運動は、このような韓統連と、韓民統設立の一九七〇年代からこんにちに至るまで半世紀近いあいだ、友誼関係を築いてきた。われわれはこの関係を、われわれの国際連帯上の誇りとするものである。われわれはいまも韓国の運動陣営をきつく縛り付ける暴力装置「国家保安法」が、戦前の「治安維持法」に起因することの自覚をもって、植民地主義清算の闘いの一環として、韓統連と固く連帯して闘っていくことを誓う。

【土松克典】