日本を対中攻撃の拠点にするな!
安保体制下自衛隊を「離島奪還作戦」に動員
歯止めのかからない大軍拡
強行成立した「重要土地規制法」は、戦時立法である。そのことを考えてみたい。
四月の日米首脳会談は、中国との対決姿勢を鮮明にした。バイデン政権は、新戦略=PDI構想(太平洋抑止イニシアティブ)を打ち出した。中国の空海軍を第一列島線内に閉じ込め、ミサイルを配備した南西諸島・奄美大島・九州と本土の自衛隊と在日米軍が、全面攻勢をかける構想だ。以前は仮想敵国はソ連であったが、今は中国が最大の「脅威」とメディアに煽らせ、日本を「安保」最前線へと駆り立てる。日本の今年度防衛予算は、五兆三四〇〇億円に上った。軍事力強化のための防衛費は、安倍政権時からうなぎ上りだ。最近の情報では、国産戦闘機を一兆四〇〇〇億円で開発するという。朝鮮民主主義人民共和国、中国、ロシアの「脅威」に対するミサイル防衛に、宇宙軍拡も語られ、歯止めがかからない。軍事演習で想像もつかないほどの血税が日々浪費されている。アメリカが中国敵視政策をエスカレートさせている今、日米合同軍事演習と多国籍軍の共同演習が増加し、演習区域も拡大して、世界戦争を想定させるような展開となっている。新聞報道で、軍事演習を拾ってみた。
米国以外の「同盟国」とも軍事演習
「四月上旬、インド洋の北東部のベンガル湾で、仏が主導し、日米豪印が海上共同訓練を実施。」ジプチには、仏軍および日米中の基地が置かれている。(『日本経済新聞』四月二十七日)
「五月十一日~十七日、相浦駐屯地(長崎県佐世保市)を拠点に、自衛隊の海兵隊である『水陸機動団』など約一〇〇人、米海兵隊と仏陸軍からそれぞれ約六〇人が参加、相浦駐屯地で図上演習を行う。
陸自霧島演習場(宮崎県えびの市、鹿児島県湧水市)では、兵員の輸送展開訓練や市街地戦闘訓練を実施。九州西方沖で展開した日米仏の艦艇から、米海兵隊のMV二二オスプレイなどを使って兵員を輸送、霧島演習場へ部隊を投入し、着上陸から市街地戦闘といった一連の離島奪還作戦を行う。」(『しんぶん赤旗』五月十一日)
「六月十八日~七月十一日、日米共同訓練を日米軍三〇〇〇人で、奄美(鹿児島県)・饗庭野(滋賀県高島市)・矢臼(北海道)など全国七ケ所で行う。六月二十三日、饗庭野演習場では、陸自の実弾演習で、一二〇ミリ迫撃砲一発が敷地境界を越え、西に一キロ離れた山林に着弾した。この事件は、六年間で四度目」(『週刊新社会』七月六日)。奄美駐屯地で対空戦闘の訓練を実施。陸自は、青野原駐屯地(兵庫県)から、陸路とフェリーで三日かけて奄美に移動した。米軍は嘉手納基地(沖縄県)から離島ミサイル防衛のための装備と部隊を運び込んだ。初めての試みである。奄美の訓練は、伊丹駐屯地(兵庫県伊丹市)で指揮をとり、サイバーや電磁波による攻撃にも対応した。(『日経』七月二日)
「アフリカ東部ソマリア沖で英海軍の最新鋭空母クイーン・エリザベスに海自からアデン湾に派遣された護衛艦とP3C哨戒機が参加し、英海軍の艦艇に同行している米・オランダ海軍も加わり共同訓練を行う。」(『琉球新報』七月八日)
「七月十四日、日米英豪とカナダ、韓国、ニュージーランドが豪州国内と周辺海域で共同訓練を行う。オブザーバー国として、インド・インドネシア・独・仏も人員を派遣した。陸自は、離島防衛専門の『水陸機動団』を送る。」(『日経』七月十六日)
第一列島線が対中国の最前線に
これらの軍事演習から見えてくるものは何か。帝国主義の国々が、こぞって資本主義の危機乗り切り策として、あわよくば戦争をと、社会主義を掲げる中国を叩く。装備の運用水準を高め、極高速滑空弾等の兵器の開発にお金を注ぎこむ軍産複合体の顔も見えてくる。日米安保体制の下で自衛隊が動員される。初戦では、米軍の主力はグアムに退き、自衛隊が米軍が選定した目標を指示されたタイミングで攻撃する。第一列島線が最前線となる。日米軍による「離島奪還作戦」では、その演習によって、沖縄をはじめ日本国土全体が戦場となることが示されている。
戦争に国民を動員するために、沖縄の運動を潰し、日本全土の基地反対運動・反戦平和の運動を潰す。これが、「重要土地規制法」の狙いだ。日本は、中国と日中平和友好条約の不戦条項を交わしている。法的にも政治的・経済的にも中国は友好国だ。「中国は常に平和の建設者」だ。これは、中国共産党創立一〇〇周年の習近平総書記の言葉だ。
権力者の思うがままにさせない抵抗闘争を、沖縄の闘いと共に全力で取り組むことが、今、やるべきことだ。
【大舘まゆみ】