労働者通信
若者の運動の今、再生に向けて
労働者協同組合は「新しい」働き方か?
資本主義の下では搾取される存在
以前、職場で倒産解雇争議を経験し、裁判闘争でかちとった解決金を元手に組合員で編集プロダクションを業務とする労働者協同組合を立ち上げ、そこでの労働を体験した。編集プロダクションとは、出版社から受注を受け、本の制作を行なう事業体だ。元々、編集プロダクションの会社での倒産争議で、争議中も職場を占拠しながら自主生産で争議費用や生活費を捻出してきていた。倒産争議だったが、関係会社はまだあったので、そこへの職場復帰を望んでいたが、それはかなわず、であれば第二の選択として立ち上げた労働者協同組合だった。
経営者もいないが、残業代もなく、裁量労働制で自らみんな働きすぎ状態になった。わたし自身は争議中から患っていた持病が悪化したこともあり、二年半で常勤組合員をやめ、フリーランスをしながらの出資組合員となった。
出版不況が続く出版業界では、本の制作費は削られ続け、少ない制作費の中から、マージンもあまり取れずにフリーランスへの仕事を発注していた。それでも、わたしが常勤組合員を辞めた後には、若い労働者に常勤に入ってもらったりと若者の雇用の場を増やしたり、フリーランスの仕事おこしにも協力していくつかの良い本を作っていたと思う。
約九年続けていたが、他社との競争に置かれ続け、儲けが少なく、常勤組合員は過重労働で薄給という、普通に勤めるよりも悪い労働条件となり、やむを得ず解散となった。
この経験から、労働者協同組合法を作っても資本主義の下では運営していくのは難しいと実感している。労働者が主役の社会にするには、資本主義を倒すところから始めなければ。資本家の存在を黙認しながら労働者主役の社会を目指しても太刀打ちできずにつぶされてしまう。資本主義社会の労働者協同組合は結局は事業体になっても資本家に搾取される存在でしかない。
わたしが入っていた労働者協同組合は一〇年前に解散した。あれから社会は変わっただろうか? コロナの影響もあり、労働者を取り巻く状況は悪くなる一方だ。
労働者協同組合の在り方は理想だと思うが、継続して運営していくには何が必要かを冷静に考えていかなければならない。
【都筑 葉】