状況2021・国際
朝鮮労働党第八回大会から学ぶもの
いきいきとした組織体をめざして                         

 さる一月五日から十二日までの八日間、朝鮮労働党第八回大会が朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の首都・平壌で開催された。
 今年二〇二一年は、この朝鮮労働党大会を皮切りにして、ベトナム共産党第一三回大会(一月二十五日~二月一日)、キューバ共産党第八回大会(四月十六日~十九日)と党大会がつづく。また、ギリシャ共産党もコロナ禍の関係でまだ時期は確定していないが、年内に第二一回大会を開催することを公表している。さらに、七月には中国共産党が創立一〇〇周年を迎えるなど、ソ連邦倒壊から三〇年を経ようとしているこんにち、世界の共産党・労働者党はさまざまな困難に逢着しながらも、地力を引き出すことによってこれらの困難をのりこえ、より確固とした社会主義世界を実現していく方向にすすんでいる。この度の朝鮮労働党第八回大会は、そのような方向性を典型的に示した大会であったといえる。
 この朝鮮労働党大会には、中国共産党をはじめキューバ共産党、ベトナム共産党など各国共産党・労働者党から祝電や祝賀メッセージが寄せられた。われわれが毎年行なうロシア十月社会主義革命記念集会と国際婦人デー集会に連帯メッセージを寄せてくれるフィリピン共産党(PKP‐1930)のアントニオ‐パリス書記長からも朝鮮労働党大会に祝賀メッセージが届けられたことが報道されていた。
 以下、在日本朝鮮人総聯合会中央本部国際・統一局から配信された「朝鮮労働党第8回大会の主要文献集」(『KOREA FILE』2021特別号)掲載記事を拠り所に、今次朝鮮労働党大会の意義を考えてみたい。
 まず、金正恩・朝鮮労働党委員長の開会の辞によれば、《本大会には、第七期党中央指導機関のメンバー二五〇名と全党の各級組織から選出された代表者四七五〇名が参加》、またオブザーバー二〇〇〇名も参加し、七〇〇〇名の党活動家・関係者が一堂に会した。その大会の様子が日本のメディアでも放映されたが、参加者のなかにマスクをつけているひとは見当たらず、朝鮮における新型コロナウイルスに対する防疫体制の徹底ぶりがうかがわれた。

目標未達成の公表

 大会は、一月五日の金正恩委員長による「開会の辞」で始められ、次の四つの議案が掲げられた。
 第一、朝鮮労働党中央委員会の第七期活動総括
 第二、朝鮮労働党中央検査委員会の活動総括
 第三、朝鮮労働党規約の改正について
 第四、朝鮮労働党中央指導機関の選挙
 そして、この「開会の辞」で金正恩委員長は、朝鮮労働党第八回大会は「活動する大会、闘争する大会、前進する大会」として、昨年八月に行なわれた党中央委員会第七期第六回総会以降準備してきたことを明らかにし、二〇一六年の第七回大会で策定した「国家経済発展五か年戦略」について《ほとんどすべての部門が掲げた目標をはなはだしく達成できませんでした》と率直に明かした。そして、《社会主義建設で絶え間ない新たな勝利を収めるために闘うわれわれの努力と前進を妨げ阻害する様々な挑戦は、外部にも内部にも依然として存在しています。/現在の折り重なる困難を最も確実に、最も早く突破する妙策は、まさにわれわれ自身の力、主体的力量を全面的に強化するところにあります。/欠点の原因を客観にではなく主観に求め、主体の役割を強めて全ての問題を解決する原則から出発して、今回の党大会では、総括期間の経験と教訓、誤謬を全面的に掘り下げて分析、総括し、それに基づいてわれわれが遂行できる、また必ず遂行すべき科学的な闘争目標と闘争課題を確定する予定です》と第八回大会の獲得目標を鮮明にした。さらに、《党中央委員会は、非常設中央検閲委員会を設置し、下部に派遣して実態を把握し、現場で働く労働者、農民、知識人党員の意見を真摯に聞くようにしました。/実態調査は、グループを各道に派遣して実態を把握させた上で、各省・中央機関に方向別、部門別に派遣して電撃的に、全面的に、具体的に行なうようにしました。/実態調査グループは、第七回党大会の決定の貫徹で誤りを犯したのは何か、十分できることもせずに怠ったのは何か、実利的に行なったのは何で形式的に行なったのは何か、間違ったことがあればその原因は何か、党の指導において欠点は何かといったことをはじめその真相を解剖学的に調べました》と、第八回大会の準備に入った昨年八月の党中央委員会第七期第六回総会から第八回大会までの四か月間の経過を報告した。

今次大会の内容

 このような準備のうえに、今次大会の骨格をなす金正恩委員長の「朝鮮労働党中央委員会第七期活動報告」が行なわれた。報告は大会初日から三日間、九時間にわたって行なわれたと報じられている。
 朝鮮総聯が配信した同報告は「要旨」であり、朝鮮労働党第八回大会で採択された決定書「党中央委員会第七期活動報告で示された課題の貫徹について」のなかで、《朝鮮労働党第八回大会の決定書は、全党の各級組織に党内本で配布される》とある。また、『朝鮮新報』一月十三日付も《金正恩委員長の活動報告は、朝鮮中央通信などメディアを通じて要旨のみが公開されたが、党大会参加者が九時間をかけて聴取した報告の詳細と労働党の戦略戦術が反映された党大会決定書は、党内限定本としてすべての組織に伝達、浸透されるという》と報じている。したがって、活動報告の全体像をわれわれは知ることができないが、要旨を読み込むだけでも、第七回大会から第八回大会までの五年間に朝鮮労働党と朝鮮人民が闘い取った成果と課題が見えてくる。
 「活動報告」は、次の四パートに章立てされている。
 1.総括期間の成果
 2.社会主義建設の画期的前進のために
 3.祖国の自主的統一と対外関係の発展のために
 4.党活動の強化、発展のために
 まず1.では、この五年間の闘いの成果が、政治・思想上の成果、各事業部門別の成果、核戦争の抑止力と自衛的国防力強化で収めた成果として概括され、その延長上に朝鮮民主主義人民共和国の対外的地位が飛躍的に高まったことが指摘された。
 2.では、アメリカ帝国主義の継続する「制裁・封鎖」策動に加え、毎年朝鮮を襲った自然災害とコロナ禍の長期化が「国家経済発展五か年戦略」の遂行に深刻な障害物として立ちはだかったことを指摘し、新たな「国家経済発展五か年計画」の策定を行なっている。この新たな「五か年計画」において、金属工業と化学工業がキーポイントになるとして両部門の強化、その他の主要経済部門、商業や国土管理、生態環境保護、観光などの部門、農業、軽工業、水産部門、国防工業部門、科学技術と教育、保健医療、文学・芸術、出版・報道、スポーツなどの部門が検討され、勤労者団体組織と青年同盟の強化が指摘された。
 3.では、北南関係とアメリカ帝国主義との関係を検討したうえで、対外活動部門の課題が検討されている。北南関係については、三年前の「板門店宣言」発表以前の状態に逆戻りしたといっても過言ではないとして、《北南関係が回復し活性化するかどうかは全的に南朝鮮当局の態度如何にかかって》いるとした。アメリカ帝国主義との関係は、《誰が権力の座についても、アメリカという実体と対朝鮮政策の本心は絶対に変わらず、対外活動部門で対米戦略を攻略的に樹立し、反帝自主勢力との連帯を引き続き拡大していかなければならない》とした。そして対外活動部門では、《社会主義諸国との関係を一層拡大・発展させ、自主性を志向する革命的党や進歩的党との団結と協力を強化し、世界的範囲で反帝共同闘争を果敢に展開し、国家の対外環境を一段と有利に変えていかなければならない》と、その方向性を示した。
 4.では、党活動のあり方について検討が加えられた。大会は、この三日間にわたる金正恩委員長の「朝鮮労働党中央委員会第七期活動報告」を、大会四日目(一月八日)と五日目(九日)の二日間討議に付し、さらに大会七日目(十一日)に行なった「朝鮮労働党第八回大会部門別協議会」での討議を経て大会決定草案として成文化し、大会最終日の十二日に「朝鮮労働党第八回大会決定書」として全会一致で採択した。
 また大会五日目(一月九日)には、党財政をめぐる第二議案「朝鮮労働党中央検査委員会の活動総括」をめぐって報告と討論を行ない、さらに第三議案である「朝鮮労働党規約の改正」について、これまでの政務局を書記局に戻すことなどが提案され、これも全会一致で採択した。
 大会六日目(一月十日)には、第四議案「朝鮮労働党中央指導機関の選挙」を行ない、金正恩総書記をはじめ一三八名の中央委員と一一一名の中央委員候補を選出。さらに同日、朝鮮労働党中央委員会第八期第一回総会を行ない、中央委員会政治局と政治局常務委員会の選挙をはじめ、各種党機関の選挙と任命が行なわれた。
 そして、大会最終日に金正恩総書記は「閉会の辞」で、《われわれの前途には依然として幾多の試練と難関が横たわっていますが、われわれの決心は確固たるものであり、未来は楽観的です。/わが党はこれまでと同様、今後とも変わることなく人民大衆第一主義に限りなく忠実であり、社会主義建設における絶え間ない新たな勝利を獲得するために全力をつくすでしょう》と述べ、最後に「インターナショナル」の演奏で全議事を終了した。

党内刷新の意義

 朝鮮労働党は一九八〇年に第六回大会を開催して以降、二〇一六年の第七回大会まで三六年間、党大会が行なわれない非正常な状態が続いてきた。もちろん、これはアメリカを先頭とする帝国主義列強の干渉・瓦解政策の影響によるものであるが、途中、ソ連・東欧圏倒壊のあおりもうけ、一九九四年の金日成主席の逝去以降二〇〇〇年までは「苦難の行軍」と呼ばれる厳しい時期も経験してきた。そして、金正日総書記のもとで先軍政治にもとづく経済建設を推し進め、二〇一三年からは金正恩第一書記(肩書は当時)のもとで経済建設と核武力建設の並進路線を歩んできた。そして、二〇一七年十一月の「火星砲15型」発射実験の成功により、並進路線の勝利が二〇一八年四月の党中央委員会第七期第三回総会で確認されて以降、アメリカの核脅威にたいする抑止力を確保したことで、社会主義経済建設に総力を集中して科学教育事業にも邁進する状態を闘い取ってきた。しかし、トランプ政権との二〇一八年六月「朝米シンガポール共同声明」発表以降、朝米関係が膠着状態に陥るなかで、二〇一九年十二月の党中央委員会第七期第五回総会で制裁解除に執着せず「正面突破」戦でアメリカ帝国主義と対峙していく方針がとられてこんにちに至っていた。
 二度と植民地支配は受けない、自主を瞳のように大切にする朝鮮労働党が、長年、アメリカ帝国主義を相手に一歩も退かぬ闘いを展開してきただけに、第八回大会が朝鮮労働党内部の刷新をはかる措置を取ったのには驚きもした。
 しかし、ここにメスを入れて刷新していかなければ党の未来はないと内部の宿弊剔抉に踏み切った朝鮮労働党指導部に、われわれはプロレタリア国際主義者としての連帯のエールを送る。
 金正恩委員長は今次党大会の「活動報告」の2.の部分で次のように指摘した。《客観的条件にかこつければ何事もできず、主体の作用と役割は不要になり、不利な外的要因がなくならない限り、革命闘争と建設事業を推し進めることができないという結論に達することになる。これが総括期間、国家経済発展五か年戦略の遂行が未達成となった原因に関する党中央委員会的な分析である。/国家経済発展五か年戦略が科学的な見積もりと根拠に基づいて明確に作成されず、科学技術が実際に国の経済活動を牽引する役割を果たせなかったし、不合理な経済活動システムと秩序を整備、補強するための活動がまともに推進されなかった。/今まで蔓延してきた誤った思想観点と無責任な活動態度、無能力をそのままにしては、また、今のような旧態依然とした活動方式をもってしては、いつになっても国の経済をもり立てられないというのが総体的な教訓である。/党と国家の活動全般を、新しい革新と大胆な創造、絶え間ない前進を志向し奨励する方向へ確固と転換し、われわれの前進を制約する古い活動システムと不合理かつ非効率的な活動方式、障害物を断固と取り除くための措置を講じるべきだ。こうすることによってのみ、今後達成すべき国家経済の展望目標をはじめとする社会主義建設のためのわれわれの闘いを人民に実際の福利をもたらす偉大な革命活動にすることができる。》
 また、同じく「活動報告」4.の部分で、党員のあり方について次のようにも指摘している。《革命と建設に対する党の指導、政策的指導を強化するためには、当該単位の政治的参謀部である党委員会をしっかり固めてその役割を高め、党組織で党の決定を正確に採択し無条件に実行する革命的気風を確立し、行政代行、追随主義を徹底的に警戒し、提起される全ての問題を党的方法、政治的方法で解決していかなければならない。/党活動の抜本的な改善のためにはまず、発展する現実の要求に即して不合理な党活動システムと方法を改善し、また、わが党の以民為天(人民を天のごとく見做す)の思想を体し、党活動を親人民的、親現実的活動に切り替えなければならない。/党活動において親人民性、親現実性が真に具現されるほど、全党が真実と真理へさらに近づき、わが党の戦闘力は倍加されるということが報告に示された重要な思想である。/現在わが党が最も警戒し第一の闘争対象にすべき標的は、権柄と官僚主義、不正腐敗行為であり、党組織ではそれらの些細な要素とも妥協のない闘いを繰り広げるべきである。/党内で批判と思想闘争、学習を強化し、職能通りに活動する革命的規律を確立し、党活動家の水準と能力を画期的に高めることも、党活動を改善する方途になる。》――これらの指摘はどうか? 日本帝国主義の足下で苦闘するわれわれ日本の活動家にもまっすぐに響いてくるものではないか! 活動を刷新し、革命的規律を確立して、組織体をいきいきとしたものにしていこうとする共産主義者の前に国境はない。われわれも朝鮮労働党の先行する闘いから学べるものは学びとりたいと思う。
 朝鮮労働党第八回大会を報じた日本のマスメディアは、このような側面には見向きもせず、「金正恩氏『核抑止力強化へ全力』党大会閉会」(毎日一・一三)、「北朝鮮、核増強路線再び」(日経一・一四)、「軍事偏重をなぜ改めないのか」(読売一・一四社説)などと、朝鮮を核軍拡一辺倒に描いている。
 こうした中で、バイデン米新政権は文在寅政権とともに米韓合同軍事演習を三月の第二週にも強行する構えだ。二月二十二日には、在日韓国民主統一連合が呼びかけて日本人有志とともに駐日アメリカ大使館と駐日韓国大使館にたいして軍事演習中止を要求する申入れ行動を行なった(本紙今号八面に記事掲載)。三月三日には、「朝鮮半島と日本に非核平和の確立を! 市民連帯行動」もアメリカ大使館に抗議・申入れ行動を予定している。朝鮮半島を熱核戦争の危機に追いやる危険千万な米韓合同軍事演習に反対して、ともに起ち上がろう!
 【土松克典】