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金持ち優遇の菅反動政権を打倒しよう!
コロナ特措法、感染症法の改悪を許すな
この間政府がコロナ対策を名目に打ち出している財政政策――第三次補正予算、新年度予算、税制改正大綱は、コロナ問題の解決よりも資本家の利益を優先する内容となっている(本紙前号年頭アピール参照)。
コロナ感染が急拡大しているいま早急に求められている対策――PCR検査体制の拡充や公衆衛生、医療体制の抜本的強化、廃業や解雇等で苦境に立たされている人びとへの補償や支援――に十分な財政的措置を行なわず、金持ちや大企業をよりいっそう肥え太らせ、「ポストコロナ」における日本資本主義の新たな成長戦略(脱炭素社会、デジタル化など)を軌道に乗せるために、また日米軍事同盟の強化に向けた軍事費の増大をまかなうために、莫大なカネをつぎ込もうとしているのだ。第三次補正予算ではあれだけ非難をあびた「GoTo」事業にも一兆円超の予算が充てられた。
税制大綱を例にとると、固定資産税の据え置きや住宅ローン減税・エコカー減税の期間延長は、土地、持ち家、車を「持たない・持てない」貧困層には何ひとつ恩恵をもたらさない。五〇か国でコロナ対策として実施されている貧困層にも恩恵が及ぶ消費税の減税を行なうことはまったく考えていない。デジタル化や脱炭素化に取り組む企業には減税で後押しをし、脱炭素化にむけた研究・開発支援として二兆円の基金を創設するという。徹頭徹尾金持ち・資本家を優遇する中身になっているのだ。
感染拡大は基本的対策を怠った結果
連日報道されているように、感染拡大が続くなか全国の医療機関で病床の逼迫や医療スタッフ不足などの「医療崩壊」が起きている。医療労働者は過酷な労働を強いられる一方でいわれのない差別にもさらされている。日本看護協会の調査によると、一五・四%の病院で看護師や准看護師が離職する事態が起きている。そうした中、感染者が病院に入院できず自宅療養を余儀なくされる、自宅にいる間に死亡する事例が増えている。また各地の保健所の業務も逼迫していて、感染者の入院や療養先の振り分けができなくなったり(その結果行先が決まらない「調整中」の待機患者が急増)、以前には行なっていた感染経路の追跡調査を断念する自治体も出ている。
こうした事態をもたらした原因は、長期的に見れば数十年にわたる新自由主義路線に基づく公的な医療や公衆衛生体制の破壊・弱体化政策であり、短期的にはこの間政府が本来なすべき対策をまったく実施しなかったことだ。具体的には、経済を優先させ、PCR検査体制の拡大強化など「検査と隔離」の原則に立って感染の広がりを徹底的に封じ込める対策を行なわなかったこと、「GoTo」事業の実施などで逆に感染を広げたこと、緊急かつ抜本的な拡充が求められていた保健所や医療機関等の体制を強化する対策を怠ったことである。二回目の緊急事態宣言が出されたが、具体策は飲食店を対象にした夜間の時短要請のみ(それも十分な補償なし)、あとは行動変容を求める空疎な訴えを繰り返しただけだ。
しかし、通常国会での菅の施政方針演説や答弁には、そうしたことへの反省はいっさいない。相変わらず実効性のある対策は何一つ打ち出されていない。代わりに出てきたのがコロナ特措法、感染症法に罰則規定を盛り込む改定案だ。休業等に対する十分な補償や検査・医療の体制の拡充こそが第一に行なわれるべきなのに、それをせずに罰則だけを設けても感染の防止にはつながらない。感染症法改定について、日本医学会連合は、かつてハンセン病や後天性免疫不全症候群(AIDS)対策における強制的措置が著しい人権侵害を生んだ歴史的反省に触れ、刑事罰・罰則を恐れて検査を受けない、あるいは検査結果を隠ぺいする可能性があり、感染の防止が困難になることが想定されると指摘し、感染者とその関係者の人権に最大限の配慮を行なうよう訴えている。政府が罰則に固執するのは、これで何か新規の強力な対策を打っているように見せかけるためでもあるが、自民党が以前から目指している憲法への緊急事態条項導入の地ならしという意図もあるだろう。
二つの現実から
『毎日新聞』(一月一日付)に「1本1000万円以上の時計がよく売れる? コロナ禍で高級商品が好調なワケ」という記事が載った。「2019年まで全店で月に数本程度だった1本1000万円以上の時計の売れ行きが、コロナ禍の今、毎日どこかの店舗で売れるようになった。柚木崎政和社長は『時計や宝石を買うのは楽しいこと。コロナ禍で楽しみが減る中、富裕層の消費の受け皿になっている』と話す」。コロナ禍で海外旅行や贅沢な会食ができなくなった富裕層が高級な宝飾時計や現代アートの絵画などの購入でみずからの消費欲求を充足させているのだ。一方にこうした現実がある。
もう一方の現実。コロナの影響による解雇や雇止めが一月七日までに八万人を超えた。周知のとおりその中では非正規労働者の占める割合が高く、とりわけ女性労働者が非常に厳しい状況に置かれている。たとえば現在営業時間の短縮を迫られている飲食店では、働く労働者の八割がパートやアルバイトなどの非正規労働者で、その大半が女性と学生だ。雇止めされたり仕事を減らされた人たちの中には家賃が払えずネットカフェで寝泊まりしたり、路上生活に追い込まれる人が増えている。昨年十一月に東京・渋谷で女性の路上生活者が近隣の住民に殴り殺される痛ましい事件が起きた。ホームレスになる前彼女はパートで働いており、おそらくコロナの影響で仕事を失ったか職を求めても得られなかったと思われる。殺された時の所持金は八円だった。
女性のパート・アルバイトの失業者数は政府発表の数字よりはるかに高いというデータも出ている。野村総研の調査によると、女性のパートやアルバイトで仕事が半分以下に減り休業手当も支払われない「実質的失業者」が昨年十二月時点で九〇万人に上る。政府の労働力調査による女性失業者数七二万人(昨年十一月)にこの数を足すと、広義の失業者は一六二万人に達する。この調査の対象には派遣や契約社員は含まれていないので、この人たちにも同様の調査を行なえば、女性の非正規労働者全体の失業者数はさらに高い数字となるはずだ。
実態としては恐慌局面にあるのに株価だけは下がらない、いやむしろ異常なほど高騰している。安倍政権以来の「異次元の金融緩和」の規模をさらに拡大させ、金融市場にジャブジャブとマネーを注ぎこんでいる結果だ。ストレス解消のために一〇〇〇万円を超える高級時計を買い求める富裕層は、この株高で大儲けをするような連中だ。こうした層がいる一方、数百円のお金にも事欠く貧困層が存在する。なんという不合理だろう。しかし、こうした不合理は資本主義体制である限りなくならない。資本家階級が権力を握る社会では、労働者人民の命や生活よりも金儲け(利潤追求)が優先される。
労働者人民に不利益をもたらすさまざまな矛盾がコロナ禍で噴出している。そしてその基底的要因は資本主義の制度にある。諸矛盾の根本的解決にはこの体制を打ち倒し社会主義を実現するしかない。その主張を堅持しつつ、労働組合で闘う労働者を先頭に現在の社会や政治状況に批判をもつすべての人びとと協働して当面はコロナ禍を利用し資本家優遇の政策を押し進める菅政権打倒の闘いに全力を傾注しよう!
【大山 歩】