日本政府に賠償命令下した「慰安婦」訴訟判決
国際的な人権重視の流れは止められない
画期的な判決
一月八日、日本軍「慰安婦」制度被害女性一二人が日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、韓国ソウル中央地裁は被害女性たちの訴えを認め、日本政府に対し一人当たり一億ウォン(約九五〇万円)の賠償命令を下す画期的な判決を出した。菅首相は判決を「国際法上あり得ない、断じて受け入れることはできない」と却下を求め、自民党外交部会は、国際司法裁判所(ICJ)への提訴などの対抗措置をとるよう日本政府に決議文案を示した。二十三日、裁判を無視し続けた日本政府は、控訴せず判決が確定した。
被害女性たちは二〇一三年、ソウル中央地裁に慰謝料請求の民事調停を申請したが、日本政府が調停に応じないために、裁判への移行を訴えた。
日本政府は「国家には他国の裁判権は及ばないとする国際法上の原則=主権免除」を理由に訴状の受け取りを拒否し続けた。しかし地裁は日本側に訴状が届いたとみなす公示送達の手続きをして裁判が始まった。日本政府は裁判を一切否定するという韓国の司法を一貫して蔑ろにする行為を続けた。
日本政府は、日韓「慰安婦」問題を、一九六五年の日韓請求権協定と二〇一五年の日韓「慰安婦」合意で「すでに解決済み」との姿勢を貫き通している。それに加えて日本のマスコミ、一般大衆は、政権におもねり「司法の独立」を捨て去った日本司法の判決に慣れ切っている。韓国司法の人権尊重の原則に即した高次元の判決を、はなからまったく理解しようともしない。
「日韓関係の悪化の長期化」「国際法に違反する非常識な韓国司法」と単純な上位目線でしかみることができない。
時代錯誤の日本側「主権免除」
「主権免除」は一九世紀後半から例外的な事由を認め、恒久的なものではなく国際秩序の変動に従って修正されるとなっている。第二次大戦中のドイツによる強制動員に対する損害賠償訴訟では、「反人倫的な犯罪および基本的人権に対する重大な侵害など、国際犯罪にまで『主権免除』を適用できない」という判決がくだされている。
今回の判決文では、「主権免除の理論は、国際強行規範に違反し、他国の個人に対して大きな損害を与えた国家が、主権免除理論の陰に隠れて賠償と補償を回避できる機会を与えるために形成されたものではない。」と述べ、「慰安婦」制度は国際法で絶対に守らなければならない規範に違反する反人道的な犯罪として、日本政府の「主権免除」を認めなかった。
判決は、残虐な皇軍の軍靴に踏みつけられ人権を蹂躙された被害女性たちの裁判請求権を保障した卓越したものであった。日本政府が錦の御旗のごとく「主権免除」をくりかえして裁判を拒否しても国際的な人権重視の流れは止められない。
今回の裁判の原告側の代理人団長を務めた李相姫弁護士は、判決について「帝国主義の国際法秩序のなかで保護を受けられず振り回された元『慰安婦』被害者が市民として認められた点で安堵した」とインタビューで応えている。そして「判決は日本にも韓国にとっても真の謝罪とは何かを考える良い機会となる。国際司法裁判所(ICJ)も原告の立場としては怖くない。ICJを通じて日本軍『慰安婦』制度の反人倫性を国際社会に継続して提起できるようになるからだ」。また、さらに「わたしたちは『慰安婦』問題を扱うからといって日本を攻撃しようというものではない。国家暴力を量産する制度とシステムに対して問題を提起するものであって人類がどうやって責任を負うべきかという観点から、この問題に取り組んでいるという点を知ってほしい」と結んでいる。「人権の視点から見るとすべての人の問題であり普遍的な人権の問題」とする李相姫弁護士たちの何よりも被害者たちを重んじて日本政府に立ち向かっていく姿勢に共感する。
【倉田智恵子】