〈投稿〉 闘争のスポーツ
大阪朝高ラグビー部全国三位の意味

藤原晃(神奈川・学校労働者)

  大阪朝鮮高級学校のラグビー部が花園の全国大会で一〇大会ぶりに四強入りを果たした。
 特に注目したのが一月五日の準決勝。この四日後に優勝する桐蔭学園に一二対四〇で敗れた。
 桐蔭学園と言えば全国からスポーツ推薦で特待生を集める一方で難関大学受験に特化したコースをつくり「文武両道」を宣伝することで有名な神奈川の私立学校だ。全校生徒数は三千数百人(男子だけで二千名弱)を擁し、ラグビー部だけで監督、コーチ、チームドクターまで一一名が配置され、部員数一〇二名。
 人工芝のグランドをはじめ充実した設備、豊富な予算は大学や実業団なみだ。
 対して大阪朝高は全校男子生徒が一〇四名(全校二〇〇名余)、部員数は四二名(うち二名はマネージャー)。生徒数は、一〇年前と比べると半数近くだ。その原因は、右翼団体からだけではない朝鮮民族に対する侮辱、脅迫に加え、二〇一二年からは元大阪府知事橋下に「補助金」(教育補償費)を停止され、元首相安倍により高校の授業料無償からも排除されてきたからだ。
 ラグビーといえばフェアの精神が強調される。しかしコートの外に一歩出ればアンフェアに埋め尽くされている。
 そんな環境はおくびにも出さずに、ゴールラインに向けて一歩でも出ようとする低く激しいタックル、バチンと身体と体がぶつかり合う。平均で五、六キロもの体重差があるも圧し負けないスクラムやモール、倒されても立ち上がりラインを作る素早さ、そんな選手たちの姿に感動を禁じ得ない。後半は二トライを許したものの前半では双方二トライの互角。今大会で桐蔭から二トライを奪ったのは大阪朝高がはじめてだった。
 かれらの今季のスローガンは「使命」だという。自分たちの活躍によって大阪朝高でラグビーをしたいという後輩を増やすのだと。自分たちがラグビーに打ち込める環境を困難ななかで支えている、学校関係者、全国から寄せられる支援、その意味を理解し、コート内と外との闘争の結びつきを自覚しているのだ。
 朝鮮学校の存続、それは朝鮮学校攻撃への抵抗であり、必然的に抑圧民族としてある日本帝国主義への抵抗でもある。だからマイノリティー(少数派)の抵抗に見えてもすべての被抑圧民族、労働者階級という多数派の闘争なのだ、とわたしは思う。
 花園ラグビー競技場のスコアボードの上には「日の丸」が掲げられるが、その下には大阪朝高の選手たちの名前が堂々と並ぶ。そして襟首に「赤い星」が印された1stジャージで顔を上げ向う傷を浴びながら最後まで果敢に突撃を繰り返す。「使命」を自覚しながら。そんな姿を画面で見ながらわれわれ日本の労働者階級の抵抗もこうありたいと奮闘を促された。