年頭アピール
野蛮きわまる資本主義を打倒する反撃の狼煙をあげよう! 
                         

 昨年十二月、厚労省は新型コロナに関連した解雇・雇止めが七万七七三九人にのぼると発表した。倒産・廃業・規模縮小などでこの数はさらに膨れ上がると予想される。
 二十二日に経団連が発表した大企業の冬の一時金は、昨年を九・〇二%下回った。中小企業はさらに厳しく、支給しない企業が続出するだろう。
 非正規の女性労働者の自殺率も激増している。
 いっぽう政府は、十二月十五日、一九兆一七六一億円の第三次補正予算案を閣議決定した。新型コロナ対策に四兆三五八一億円、ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現に一一兆三七六六億円、脱炭素化の研究開発に二兆円の基金を創設。国土強靱化推進に三兆一四一四億円を計上、うち老朽化インフラの改修などの公共事業には一兆六五三二億円を充てた。
 菅は「国民の命と生活を守る」と言うが、全国民への無料のPCR検査は渋り、旅行、宿泊、観光、航空・鉄道・バス業界を支援するためのGoToトラベルは即時全面中止にせず、延長に一兆三一一億円を計上した。本来の新型コロナ拡大防止対策費がポストコロナの「成長力強化」にすり替えられている。
 十二月二十一日に閣議決定した来年度予算案は一〇六兆六〇九七億円。国債依存度は四〇・九%と前年度当初の三一・七%から大幅に悪化。債務残高の対国内生産(GDP)比は二六六・二%だ。そうしたなか防衛費は二八九億円増の五兆三四二二億円で前年度比〇・五%増、九年連続で増えつづけている。
 また政府は同日に二〇二一年度税制大綱を閣議決定。日本独占が日本経済の屋台骨と位置付ける自動車産業を守るための「エコカー減税」の延長、住宅ローン減税、贈与税非課税処置の延長、脱炭素社会やデジタル化に投資する企業の法人税を優遇するなど、金持ち優遇政策は露骨だ。
 さらに新型コロナの収束状況が見通せないなか東京五輪・パラリンピックの開催に固執、延期に伴う費用や新型コロナウイルス対策にかかる追加経費は二九四〇億円となり、大会経費は総額一兆六四四億円に達する見通しだ。
 その一方で七五歳以上の高齢者の医療費窓口負担を収入によって現行の一割から二割へと引き上げるし、福島原発事故により発生した汚染水の海洋放流を実施しようとしているし、辺野古新基地建設にともなう警備費は一日二二〇〇万円で十二月十七日までの総計は五〇八億円にのぼる。
 奴らは、露骨に「金を持たない年寄りは用済みだ! デジタル化に乗り遅れる中小零細企業は店をたため! 政府のやり口に口を出すな」と宣言しているのだ。
 こうした中、自民党の大物・小物政治屋による現金バラマキの選挙違反、カジノや鶏卵業関係者からのワイロ。史上最高の在職日数を達成した安倍晋三前首相の「桜を見る会」前夜の夕食会費用補填問題。安倍は国会で一一八回も虚偽答弁を繰り返したが、不起訴となった。これが自由で民主主義で、法が支配する、普遍的価値観を自慢する資本主義国日本の偽らざる姿だ。
 菅政権は決して無為無策ではない。独占ブルジョワジーはコロナ禍を悪用し、コロナ後を見据えて、虎視眈々と金儲け万能、「企業が一番活動しやすい」(労働者人民を分断し隷属させる)社会の実現に邁進している。
 日本の勤労人民は愚弄され、侮蔑のなかでの暮らしを強要されつづけている。
 権利は闘いとるものだ。労働者人民の未来はわれわれ労働者人民が切り拓くしかない。
 【広野省三】