コロナ禍のなか世界の労働者たちは権利を要求し命を守るために闘う!

コロナ感染による危機は、資本主義国がもとから抱えてきた経済格差や医療問題のひずみを白日の下にさらしている。
四月上旬フランス保健省は、三月末時点で、仏で貧困や階層間対立を抱える代表的な地区であるパリ近郊セーヌサンドニ県の感染者死亡率が六三%で、富裕層が多いパリ市内は三二%。同県で死亡率が高い原因として、同県の保健医療レベルが低く、住民の多くがテレワーク可能な職種ではなく現場出勤が必要だと述べた。
米国シカゴでもコロナ感染死者の七割を住民の三割に過ぎないアフリカ系(黒人)が占め、米国主要都市はどこでもマイノリティに感染者が偏っている。脆弱な雇用と貧困が原因だと指摘されている。

ゼネストで闘うイタリア労働者たち

このコロナ感染のなか、全世界の労働者が、労働者としての権利を要求し、自分たちの命を守るため闘っている。
イタリアでは感染の拡大、死者の急増に伴い、山猫ストが全土に広がった。
三月十日南部のフィアットクライスラーのナポリ工場で労働者たちはシフト時に一斉退社で抗議。会社側は、十四日までの工場閉鎖を発表した。
十二日北部リグーリア州のフィンカンティエーリ造船所で感染者が出た後、労働者が職場放棄。他の造船所にも山猫ストが広がった。
十三日北部ロンバルディア州でソラロ電子工場の女性労働者七〇〇人が出勤拒否、コルネリアーニ紳士服工場の四五〇人がスト。中部トスカーナ州の日立製作所の鉄道車両工場労働者が一週間のストに突入。また、同日、鉄鋼産業では、労組が操業停止しないならスト実施と警告。一連の鉄鋼企業が二十二日までの操業停止を発表した。
イタリア労働総同盟、イタリア労働組合連盟、イタリア労働同盟が政府と不要不急の産業部門での解雇と操業停止について交渉するなか、三月二十五日操業停止と労働者の生活保障を要求しゼネストを実施した。一方、資本家の団体イタリア産業連盟は、政府に閉鎖企業の見直しを要求し、政府は防衛産業やコールセンターなどの閉鎖見直しを約束した。

イタリアの闘いがブラジルに波及

ブラジルでもコロナ感染が広がるなか三月十九日コールセンターの労働者たちが決起した。
イタリアの多国籍企業アルマビバ社はブラジルの一一都市にコールセンターがあり三万七〇〇〇人を雇用する。イタリアのシチリア島のアルマビバ本社では二八〇〇人がストに入り閉鎖、ホームオフィスを開設。このことを知ったサンパウロの労働者たちは、コールセンター閉鎖を要求し三月二十日ストを行なった。
コールセンターの職場は窓がなく密閉。会社のコロナ対策は万能クリーナーと雑巾でシフト時に拭かせるだけ。オペレーターは非正規で、賃金は最低賃金以下、休めば収入がない。コールセンター労働者の抗議ストは、ブラジルで八万人を雇用するスペインの多国籍企業アテント社などの多くのコールセンターに波及した。
このような状況のなかボルソナロ大統領は労働者の懸念や心配を「ヒステリー」で予防対策は「資源のムダ」と述べた。激怒した人びとは一週間以上、毎晩八時に自宅の窓から一斉に鍋を叩き抗議行動を行なった。
隣国のボリビアでは、クーデターで政権を奪取したアニェス政権は、モラレス政権が整備した社会保障制度を解体してしまった。このアニェス政権に対し、コロナ感染が広がるなか、北東部ベニ州リベラルタなど多くの地域で日々の労働で生計を立て貯えのない人びとは街頭デモを行ない、空の鍋を叩きながら行進し、支給品や食料不足に抗議した。
四月二十二日アルゼンチン、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、グアテマラ、ペルー、スペインの七か国の配達労働者が声明を出し二四時間ストを実施した。声明は言う。「雇用主たちはコロナ危機を利用し労働者の権利を抑圧しようとしている。この計画に抗しわれわれを組織しよう」と。

北米では三大自動車を操業停止に

三月十六日スペインのバスク地方のメルセデスベンツ工場で、コロナ感染に対し工場閉鎖を要求し五〇〇〇人がスト。スト開始直後、会社は八日間の操業停止を発表した。
英国では一二七万人を組織する労組ユナイトが食品生産ラインで二メートルの隔離ルールを要求し闘っている。アイルランド北部のシーゴーモイパーク家畜処理工場でこの要求を掲げ一〇〇〇人が職場放棄をした。
イギリス労働党党首選挙で右派が勢力を広げるなか、労働党左派の基盤である労働者代表委員会は四月上旬声明を発表。「コロナ危機対応は強い社会主義的対応が必要である。保守党は利益の神に人びとの幸福を捧げている。われわれは右シフトと闘い、草の根の精神と組織を強化する必要がある」と。
米国自動車組立工場ではコロナ感染が広がるなか、三月十七日デトロイトのファイアットクライスラーのスターリングハイツ工場で労働者はライン作業を拒否。会社と全米自動車労組が生産継続を発表した直後であった。翌十八日同工場で労働者はラインに座り込んで作業を拒否。同じデトロイトのジェファーソンノース工場、オンタリオ州ウィンドーソ工場などでも労働者たちはライン作業を拒否。
山猫ストが全米に広がりかねない状況に直面し、ファイアットクライスラー、フォード、ゼネラルモーターズは、十八日夕刻、メキシコとカナダを含む北米工場を三月三十日までの閉鎖を発表した。
また、看護師たちのマスクや医療防具を要求する抗議行動が続いている。四月二日ニューヨーク州モンテフィオーレ病院の看護師たち、六日同市ハーレム病院の看護師や医療スタッフ八〇人が病院前で抗議行動。八日全米看護師協会とニューヨーク州・マサチューセッツ州・ペンシルバニア州看護師協会が看護師の保護を要求し共同声明を発表。
三月三十日アマゾン傘下の食料品チェーン「ホールフーズ」労働者が「病欠」スト実施。創設四〇年で初めて。
コロナ感染拡大のなか、資本主義政府や資本家たちは、利潤を最優先し、同時に労働者の諸権利に攻撃をかけてきている。全世界で労働者たちは、命を守るためコロナ感染と闘いながら、同時に労働者の権利を守るため、立ちあがり闘いを展開している。
【沖江和博】

(『思想運動』1052号 2020年5月1日号)