〈活動家集団 思想運動〉第50年度第4回全国運営委員会での報告より
「コロナ危機」を奇貨として戒厳状況をたくらむ支配階級といかにたたかうか
広野省三(〈活動家集団 思想運動〉常任運営委員会責任者)

以下に掲載する文章は、四月十二日に開催した〈活動家集団 思想運動〉第五一年度第四回全国運営委員会での常任運営委員会責任者・広野省三の「『コロナ危機』を奇貨として戒厳状況をたくらむ支配階級といかにたたかうか」と題する報告と、それを受けての討論をまとめたものである。当日は「コロナ感染者」の増加傾向に歯止めがかからないなかでの開催となったため、会議は参加者・時間を大幅に削減・短縮して行なった。掲載する文章は、報告者がその後の経過も踏まえ、加筆・補正したものである。 【編集部】

「緊急事態宣言」下でのわれわれの組織活動

会内の医師・看護師の助言を参考に、われわれの労働と生活する権利、闘う決意を手放すことなく行動しよう!
この間、会内の医療従事者から、さまざまに助言を受けている。三月七日の「国際婦人デー東京集会」の準備過程からコロナ問題対応の検討をはじめ、婦人デー集会は予定通り開催したが、デモは中止した。本日も会場の設営の仕方、会議時間等について助言を受けている。具体的には、
一、遠方から参加する委員、高齢者、ふだんより熱が高い、あるいは体調に変化がみられる会員には参加を見合わせてもらう。
二、会議時間の短縮。消毒・換気・手洗い・マスク使用の徹底。発言者のワイヤレスマイクの使いまわし禁止。
三、常勤者、日勤者、事務局員、新聞編集部員・校正協力者の出勤日・執務時間の削減、などである。
二については、本日の討議でもマイクをまわさず、発言者は前に来てマイクに触れず、立って発言すること。三については、事務局でローテーション案をつくり実施する。
われわれが、他団体やさまざまな協力者の方々と協働し、二〇〇〇年四月から開講している本郷文化フォーラムワーカーズスクール(HOWS)の第二一期・二〇二〇年前期講座は、五月九日の開講をめざして準備をしている。しかし、この状況では延期・中止・内容変更もあり得る。
開講講座は当初、朝鮮総聯兵庫県青年商工会が製作した、七〇年前にGHQ・日本当局の朝鮮人学校弾圧に抗して闘われた「四・二四阪神教育闘争」を題材とした『ニジノキセキ』(85分)の上映を予定していた。しかし上映時間が長いので、急きょ千葉朝鮮初中級学校初級部新一年生の入学式から一年間の様子を記録した『朝鮮人になるということ』(15分)に切り替えた。講演は金勇大朝鮮大学校教育学部准教授に「日本社会に朝鮮学校があることの意味」で変更はない。中原道子さんの「日本の近代化とアジアの女性」シリーズの後半二回分は、十一月からの後期に延期する。
今後の感染状況が見通せないので、とりあえず、五、六月は、それぞれ三回、四回の開催に減らす。また受講生も、今期前半は定員二〇名、事前予約制(変更の際の連絡体制をとるため申込時に電話番号を必ず教えてもらう)とする。参加者には前記感染予防対策に協力してもらう。さらに状況が悪化すれば、より限定した形で、講師と数名の参加者による報告と討議を収録し、それをDVDで頒布するなどの方法も検討する。これらの決定は、「緊急事態宣言」が延長されるか否かを見ながら、HOWS事務局、校務委員会、思想運動常任運営委員会で相談しながら判断する。
七月末に予定している〈HOWS二〇二〇夏季セミナー〉は、「反帝・反独占闘争としてのコロナ状況下での闘い」を統一テーマに開催を準備しているが、これも施設から中止要請がくるかもしれない。夏季セミナーを含め、今期のHOWS講座のプログラムについては、その運営について講師の方々からおおよその了解は得ている。しかしこれも状況次第で対応を考える必要がある。
わが会は規約で、集団の最高の意思決定機関である年次総会を毎年夏に開催すると定めている。今年の第五二年度総会は六月末に開催を予定していたが、この状況では落ち着かないし、十分な準備も困難、会場も都の施設は貸出を受け付けていないので、秋以降への延期とする。

「コロナ危機」に対する基本的捉え方

『思想運動』四月一日号に、常任運営委員会での討議を経て、「状況2020」=「傍観するな!受け身になるな!労働者なら――政府独占の新型コロナを悪用した攻撃に反撃を」(大山歩)を掲載した。その冒頭の部分をわれわれの基本的な考えとして再確認したい。そこでわれわれは、
「周知のとおり、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)については、政府・マスコミが連日、大々的にこの問題を取り上げている。われわれもこれが、全世界の労働者階級人民に甚大な影響を及ぼす問題である、と認識している。しかしわれわれは、この問題を、巷間に広まる「国難」として捉え、「政府対応を不完全だと批判するより、いまは日本国民全体、中央政府も自治体も一致協力してウィルスに打ち勝つときだ」(三月二日『産経』「美しき勁き国へ」櫻井よしこ「疑わしい習政権の情報」)との主張に同意しない。なぜなら、こうした一見「正論」を装って、日々さまざまな人と手段を使って、事態を資本家階級の利益に回収する攻撃が意図的に行なわれているからだ。櫻井はここで「武漢ウィルス」という言葉を使い、中国共産党の特質を「第一は中国政府の情報は基本的に虚偽だ」と述べている(モリ・カケ、桜、検事長……中国を日本と読みかえよう)。財務相の麻生太郎は三月十九日の参院財政金融委員会で、中国の発表する感染者数などの数字について「信用しないのが正しいと思っている」と発言した。安倍の盟友のかれらは、まさに資本家階級としての自覚を持ち、階級闘争を貫徹している。
この問題の発生とその後の各国政府の対応を見るとき、問題の根底には、ここ数十年来の全世界の独占資本家階級(金持ち連中)による医療をはじめとする公的部門の民営化=私有化、公費削減=福祉切り捨て政策があり、それによって労働者階級人民の労働と生活、生命が金儲けの手段とされてきたことがはっきりと分かる。病院・医療従事者の削減、労働環境の悪化、値上がりをつづける医療費。ブルジョワ支配階級は、決して労働者階級人民の利益を第一には考えない。かれらの目的は金儲けだけだ。金が儲かるならば人殺しも戦争もやる。それは米国や日本国の歴史を見れば一目瞭然だ。われわれはまず、こうした認識に立ち、問題の把握と闘いを組み立てなければならない。
それは先回りして言えば、この問題は、われわれ労働者階級人民に『君たちは資本主義を選ぶのか、それとも社会主義を選ぶのか』という根本的問題を提起しているということだ」と主張した。
この認識は今も基本的に変わっていない。加えてわたしは、いまわれわれの任務を、以下のように考えている。

利潤至上主義の資本主義を批判し、社会主義を目指す闘いを、粘り強く展開すること
一九一七年十月のロシア十月社会主義革命によって、はじめて、労働者人民の生きる権利と健康・公衆衛生の権利が確立された。その後資本主義体制下で実施された社会福祉・社会保障は、資本家たちが国内の労働者から批判されるのをさけるために渋々やらされたという側面もある(もちろん資本主義国内の労働者人民の闘いがあってのことだが)。その意味では、「コロナ危機」は八九~九一年のソ連・東欧社会主義世界体制の倒壊と、その後三〇年間の資本の全世界的展開による一瀉千里の市場経済万能・金儲け路線が招いた結果と言える。
初動体制での誤りはあったものの、コロナ問題に対する中国共産党と中国政府の敏速な対応、キューバ、朝鮮の原則的対応、ベトナムでの取り組みの実例は、公的医療分野での社会主義の優位性を端的に示している。この機会にわれわれは、社会主義が獲得していたもの、その実践を誤りも含めて検討すべきだ。社会主義は過去のこと、あるいはずっと先のことではなく、いま現在、労働者階級人民に必要不可欠なものとしてある。

「国難」キャンペーン、ナショナリズムとの闘い
安倍ブルジョワ独裁政権は、朝鮮民主主義人民共和国のロケット実験の時に、子どもたちに机の下に隠れろと指示するような大騒動をやり、危機感を煽り、選挙を乗り切った。やつらは、いろんな事態を自分たちの政権延命に利用する(惨事便乗型支配)。そのパターンが今回も取られている。

天皇制批判
天皇による「お手元金」一億円の社会福祉法人への寄付が報じられている(お手元金とは何かというと、天皇の私的なお金という)が、天皇に私的なお金があるのが疑問、当然「国民の」税金から出ているお金なのだ。こう言う形で天皇が「国難」キャンペーンに利用されている。四月二十五日に共同通信が発表した世論調査では、天皇に対する受けとめは「親しみを感じる」が五八%、「すてきだと思う」が一七%、「なんとも感じない」一七%で、「反感を持つ」は〇(〇・五%未満)である。 

東京オリンピック・パラリンピック推進への批判
コロナ問題が起きる前には,官民ともに(なかには「革新」団体や労働組合にも)オリンピックの成功で何とか日本の沈滞ムードを打ち破ろう、という考えが強くみられた。これが初動とその後の対応に深く影響した。

事態の推移をみる

一九年十二月三十日 中国武漢当局が原因不明の肺炎患者を確認と通知
二〇年一月十六日 厚生労働省、国内で初の新型コロナウイルスが検出されたと発表
一月二十一日 米ワシントン州で感染一例目を確認
一月二十三日 武漢市、事実上の封鎖措置
一月三十日 自民党の伊吹文明元衆議院議長が(感染拡大は)「緊急事態の一つの例。憲法改正の大きな実験台と考えた方がいいかもしれない」と発言
一月三十日 世界保健機構(WHО)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言
二月十七日 内閣府が二〇一九年十~十二月のGDPが六・三%減と発表
二月十八日 中国全人代延期発表
二月二十七日 安倍首相全小中高に休校要請
二月二十九日 米国金融市場は。ダウ工業株30種平均が十二月二十四~二十八日まで七日続落し、週間下落率は一二%を超えた。二〇〇八年十月のリーマン・ショック以来の下落
二月後半以降 イタリア、スペイン、ドイツ、イギリス、フランスなど欧州各地で感染拡大
三月一日 東京五輪の日本代表選考の東京マラソン開催
三月五日 習近平国家主席来日延期、その日、韓国・中国から入国制限
三月十日 習主席武漢を訪問
三月十一日 WHOがパンデミック宣言。米国、欧州からの入国禁止(英除く)を発表
三月十三日 トランプ大統領「国家非常事態」を宣言
三月十三日 「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」成立(審議時間三日間)
三月二十四日 東京五輪延期発表。この後東京で感染者拡大が顕在化
四月一日 安倍のマスク五〇〇〇万枚配布表明(四六六億円)
四月三日 米大使館日本に一時滞在する米国人に帰国要請
四月六日 在日米軍が関東地方の基地や施設に非常事態宣言、その後全国に拡大
四月七日 日本政府緊急事態宣言(七都府県、期限は五月六日まで)事業規模一〇八兆円のコロナ緊急経済対策発表
四月七日 国際労働機関(ILO)が四月から七月の間にフルタイムの労働者一億九五〇〇万人分にあたる規模の雇用が失われると推計
四月八日 武漢の封鎖を解除
四月八日 世界貿易機関(WТО)二〇二〇年の世界の貿易量が一三~三二%減少と発表
四月十四日 「オール沖縄会議」キャンプシュワブ・ゲート前の座りこみ五年九か月(二〇一九日)で一時中断を決定
四月十四日 トランプ、WHО が中国寄りなので、拠出金を停止すると表明。米国はWHОへの最大の資金提供国で年間四億ドルから五億ドル(約五三五億円)を提供している(全体の二割)
四月十四日 IMF、最新の経済見通しで二〇二〇年の世界経済の成長率マイナス三・〇%(一月時点ではプラス三・三%)に引き下げ
四月十五日 「感染対策がないと八二万人重篤、四二万人死亡」。厚生労働省のクラスター(感染者終電)対策班メンバーで北海道大学の西浦博教授(理論疫学)が試算公表
四月十七日 安倍首相全国に「緊急事態宣言」拡大を表明。減収世帯に三〇万円を止め国民一人当たり一〇万円を表明

政府・東京都の対応

日本政府の初動対策の遅れについては、真剣にコロナ対策に取り組む意思がなかったとしか思えない。ダイヤモンド・プリンセス号の対応についても専門家は批判していた。船内という密閉空間で何日も下船を許可せず、厚労省の職員や船内職員が相当感染し、拡大させてしまった。どうしたらいいのか分からなかったのか、大した問題ではないと思ったのか。
PCR検査(遺伝子検査)については、日本では四月十日の段階でも六万一九九一件、韓国は四三万件、人口比で言っても一億二〇〇〇万人の日本と五〇〇〇万人の韓国、人口が三倍近くなのにこれだけの開きがある。PCR検査をしない、できないのは検査キットと検査態勢の問題、そしてPCR検査の対象を拡大すると医療崩壊するなどと言われた。クラスター(感染者集団)対策に重点を置く厚生労働省は、当初PCR検査の対象を陽性になった人の濃厚接触者などに絞り込んだ。
検査数が伸びない要因については「保健所の職員数が抑制されてきて、効率化をした影響もあった」と指摘されている。そして政府は意図的にこのPCR検査をしない、させないことで「国民」の間に不安を増大させ、「自粛」を「強要」しているのだ。さらにこれは運動への分断攻撃としても使われる。「こんな状況下でも政府批判、反対行動をやるのか? 労組活動をやるのか?」とブルジョワ支配権力は運動内部に対立を誘発させようと企んでいる。われわれに大切なことは、政府・マスコミのたれ流し「情報」を鵜呑みにしないで、専門家の科学的意見を注視し(専門家といっても原発ムラがあるように、コロナムラが形成されていることも考慮に入れる必要があるが)、仲間と忌憚なく議論をし、行動を確認してゆくことだ。
医療現場・介護現場、困難に遭遇している人に対応する公務員、輸送労働者やスーパーなど、連日対応を迫られる労働者の疲弊は想像に絶する。「家族への感染が怖いので病院を辞めたい」「責任感だけで頑張っているが体はくたくた」。マスクやガウン、消毒薬など衛生備品の不足、現場任せの対応や院内感染を想定した準備の不十分がいたるところで指摘されている。
安倍首相はPCR検査拡大、マスクの増産、医療機器の早期搬入など盛んに目標は言うが、目標が達成されたとの話はきかない。この危機に際しリーダーがやるべきことは有医療従事者の人員不足の解消、不眠不休が続く労働状態の改善、防護服もマスクもない酸素吸入器も足りない、そういう状況を一刻も早く解消することではないか。われわれ人民に自粛を要請するなら民間病院もこの時期は接収する、そして人民の命を守る態勢を作るくらいの措置がとられるべきだ。だがすべてが中途半端で、金持ちの私的所有に関わることにはいっさい触れない。コロナ問題を政権維持に利用しているとしか見えない。
一月三十日にWHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言していたにも関わらず、三月一日には東京五輪の代表を選考する東京マラソンを強行している。習近平中国国家主席が来日する予定もあって、三月五日に来日が中止されるまで対応が遅れてもいる。
日米同盟を基軸とする対中国包囲網と、それとは裏腹な、日本経済にとって無視できない、いやすでに完全に組み込まれている中国経済の発展がある。そして日本経済は、消費税の一〇%値上げもあり、一九年十月から十二月のGDP(国内総生産)で六・三%も減少していたのである。国の借金は一一一〇兆円にのぼる。
東京五輪延期決定後、小池東京都知事が記者会見などでテレビに登場する機会が増え、あたかも安倍政権と対立しているかのイメージがばらまかれている。
四月六日の小池東京都知事記者会見で『日刊ゲンダイ』記者が「三月の三連休中の三月二十一日に厚生省クラスター対策班が、四月八日までに五三〇人感染者が増えるという提言を都の方にしておりました。ただ、三連休中にその公表を都の方ではされずに、三連休が明けた三月二十三日、ちょうど安倍さんがオリンピックの延期を容認した直後くらいに公表して、三月二十五日になって知事はロックダウンについて言及した。その前日には、オリンピックの延期が正式決定されたという時系列だと思うんです。なぜ、連休中、三月二十一日に厚労省クラスター対策班から感染者が増えるという情報が届いていたのであれば、今日のように夜に緊急会見を開いて、知らせなかった理由を教えてください。」という質問に対して、小池知事は、クラスター班の予測数字の揺れを指摘しつつも、「オリンピックとの関係で、御紙においては、そういう論を展開されているのかもしれませんが、それは全く関係がございません。以上です」と述べ、記者のなぜ公表しなかったのかの理由についての再質問に対しては「今、お答えしたとおりです」で答えなかった。小池の対応もひどいが、すぐにフジテレビの記者から次の質問が出され、問題の解明につながらない。記者同士が協力して権力が隠そうとしているものを暴く姿勢は微塵も感じられない。
政府も小池も「三密」=「密閉」「密集」「密接」を盛んに叫ぶが、そこには四つ目の「秘密(密室政治)」が抜け落ちている。いずれにしてもかれらは、景気対策、政権延命が先で、国民の健康、命を第一に考えてはいない。
質問にまともに答えない、政策決定過程を明らかにしない、データを集めない、公表しない、捏造する、は安倍政権の政権運営にとくに顕著にみられる。安倍首相の「ごはん問答」。菅官房長官の「それには当たりません」は意図的にやられている。
東京都知事選は七月に予定されている。自民党は二階幹事長の下、候補を出さず、小池支持を決めているようだ。

野党共闘・憲法改悪への企みをめぐって

『毎日新聞』の四月十八日、十九日の電話による全国世論調査では、新型コロナウイルス問題への安倍政権の対応を「評価しない」が五三%で、「評価する」の三九%を上回った。三月十四、十五日の前回調査では、政府の取り組みを「評価する」四九%、「評価しない」四五%だった。安倍内閣の支持率は四一%(前回四三%)、不支持率は四二%(同三八%)と拮抗した。注目すべきは、政党支持率で、自民二九%(前回三三%)▽日本維新の会六%(四%)▽立憲民主五%(九%)▽公明五%(四%)▽共産二%(四%)▽国民民主一%(一%)など。「支持政党はない」は四三%(四〇%)だ。
野党共闘のなかでは、共闘を壊すなということでたがいに批判をしないという流れがより強くなっている。「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」「非常事態宣言」に賛成する、しないの問題でも、「国民の感情」を忖度し、与党と合同の会議を作ってみたり、支配階級の「国難」キャンペーンに乗せられている。「国民」はそうした「野党」の様子をみているのだ。そうしたなかで、日本共産党が安保・自衛隊容認に踏み込んでいる。
「緊急事態宣言」と憲法改悪攻撃の中で言われる「緊急事態条項」とは、まったく別次元の問題なのだが、安倍らは意図的にそれを混同させ「憲法に『緊急事態条項』がないから対応できない」などと宣伝している。すでに憲法二五条第二項には「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定してある。それをさぼって公的部門を金もうけの手段としてきたのが政府・独占階級なのだ。
憲法、法体系の浸食が進んでいる。自粛の要請(強要)によって、移動の自由、学習の自由、表現の自由、思想・信条の自由、労働者の団結権の侵害が露骨に出てきている。
われわれは今後も「96条改悪反対連絡会」および「戦争をさせない一〇〇〇人委員会」の活動に積極的に参加する。と同時に、われわれは、「安倍政権を批判する」とする「日本リベラル派」との論争も必要だ。さらに作家で元外務省主任分析官・佐藤優など、マスコミのどこにでも文章を書く「売れっ子の」言動にも注意する必要がある(かれは、『産経新聞』『月刊Hanada』などで「安倍首相の下で団結せよ」などと煽動しつつ『琉球新報』にも常設欄を持ち、『聖教新聞』にも記事を書いている。

労働者階級はどう闘うべきか

われわれの闘いの基本になる労働者運動・労働組合の強化の課題
関西生コン、東京東部労組などの闘う労働運動、沖縄の反基地闘争、原発被災地での闘い、在日朝鮮人運動との連帯を、この困難な状況のもとでより強化することがわれわれに求められている。
今後、失業の問題が当然出てくる。われわれは失業を許さない闘いを、労働組合自身が闘争の中で、労働者自身が闘う中で進めてゆくべきだと考える。政府へ補償を求めるのはもちろんだが、闘いを自粛して補償要求だけで終わっては、要求が通るわけがない。
われわれは、運動を進める中で生じる各人の意見の違いを、規約などで一律に規制するという考えには立たない。相互討論を通じた共通認識の確立を目指す。いままさにわれわれには、権力が強要する「秩序」ではなく、労働者階級人民自身がつくりだす「規律」が求められているのだ。ブルジョワ権力が「要請(強制)」する「自粛」に無批判には追随しない。萎縮してはならない。
さいごに、もう一度、運動内部の討論と行動のあり方について発言しておきたい。
われわれは、労働者の闘いを権利として捉える。日本政府はPCR検査をきちんとしていない。それをちゃんとやるよう要求することは重要だ。誰が感染しているか? 自分も感染してないか? と脅えながら、人との接触の多い職場で毎日働く人びとの悩みは切実だ。しかし、データに科学的根拠がないから、われわれが労働者の権利を主張し、行動することに自信が持てないと考えるのは間違っているのではないか。日本共産党の「われわれはデータを持ちあわせていない。緊急事態宣言について判断するのは政府だ」という考えもその延長線上にある。
キューバでは、例年一〇〇万人規模となるメーデーパレードを、今年は中止した。その上で、メーデー祭典そのものを中止するのではなく、全国労組センターにメーデーの進め方を検討するよう要請している。ギリシャ共産党も権力側の集会中止命令をはねのけながら、注意しながらさまざまな大衆的抗議行動を継続している。
いま、大小の各大衆団体・市民団体は大衆集会や諸行動の開催をどうするかを、必死で考えている。コロナ感染をしない配慮をしながら取り組んでいる。開催するかしないかで内部分裂するのではなく、十分討論をしたうえで決定し、決定したら全体がその決定に従う。分裂は敵の思うつぼだ。意見の違いを、討論をつうじて団結を強めていく方向で解決していくことが大事だ。
権力はわれわれの大衆的な行動に対し、もしもその中から感染者が出たら、感染経路がほとんど分からない状況の中で、「抗議行動を行なったからそこでコロナ感染が発生したんだ」とも言ってくるだろう。
しかしわれわれは、自分たちがやるべきことをやらず、労働者人民に一方的に受忍を強いる政府・独占のやり方に対し、「権利の行使」を基軸におき、その上で最大の注意を払い、創意工夫をしながら闘っていかなければならない。身を守っていく必要がある。権力は、われわれの活動に対し「不要不急」の行動だと言ってくるだろう。
われわれは、機関紙『思想運動』発行とHOWSの運営を継続する。そしていま、国際連帯運動をより強固にするための不定期刊のパンフレット『国際主義』を準備している。
(二〇二〇年四月二十六日)

(『思想運動』1052号 2020年5月1日号)