日本人民の未来は、 世界の労働者階級人民との連帯の中にこそある
国際主義と日本共産党第二八回大会
日本共産党第二八回大会が一月十四日から十八日までの五日間にわたって開催された。今大会の主要報告は、①志位委員長による「綱領一部改定案についての中央委員会報告」、②小池書記局長による「第一決議案(政治任務)についての中央委員会報告」、③山下副委員長による「第二決議案(党建設)についての中央委員会報告」の三本であり、一月十九日付『しんぶん赤旗』は、これら綱領一部改定案と二つの決議案を討議のうえ「全員一致で採択」したと報じた。
ここではこの三報告のうち、綱領改定について検討する。それは、二〇二〇年を迎えたこんにち、全世界の共産主義者に問われている、いかにして反帝国主義とインターナショナリズムの立場を貫くのかという、すぐれて各国共産党の存在の根幹にかかわる問題を、今回の綱領改定が内包しているからである。
昨年十一月四日に第八回中央委員会総会(以下、八中総)を開催、志位委員長がこの綱領一部改定案を提案し、以降、全党討議がすすめられてきた。八中総で志位委員長は、その改定案の要点を「今回の綱領一部改定は、綱領第三章・世界情勢論を中心に行い、それとの関係で第五章・未来社会論の一部を改定する」と報告し、その内容を三点に分けて説明した。
すなわち、①二〇世紀に起こった世界の変化のなかで、植民地体制の崩壊が最大の変化、②中国の評価にかかわる記述を全面削除、③発達した資本主義国での社会変革が社会主義・共産主義への大道であるという「未来社会論」の三点である。
二〇世紀の歴史と現代世界の構造
まず①について。われわれは日本共産党とちがって、二〇世紀に起きた世界の最大の構造変化は、ロシア十月社会主義革命と、それによって誕生したソビエト社会主義共和国連邦の成立にこそあると主張する。植民地体制の崩壊も、このロシア十月社会主義革命で掲げられた「平和に関する布告」に盛られた「民族自決」に端を発するものであり、これが全世界の被抑圧民族の長年にわたる反帝闘争に解放の道筋を与えたのである。すなわち、植民地体制の崩壊は社会主義の成立・発展と不可分の関係にあるばかりか、社会主義ソ連邦がこの世界に誕生したからこそなし得たものなのである。日本共産党はこの事実に目を閉ざす。
中国などの反米闘争の評価について
つぎに②について。中国の評価にかかわる記述の全面削除とは、具体的には前回の綱領改定時(二〇〇四年)に加えられた「今日、重要なことは、資本主義から離脱したいくつかの国ぐにで、政治上・経済上の未解決の問題を残しながらも、『市場経済を通じて社会主義へ』という取り組みなど、社会主義をめざす新しい探究が開始され、人口が一三億を超える大きな地域での発展として、二一世紀の世界史の重要な流れの一つとなろうとしていることである」の部分を指す。この部分の全面削除の理由として、中国の「新しい覇権主義・大国主義」を挙げている。そして党大会で志位委員長は、「中国社会に大国主義の歴史がある」として、近代以前の東アジアにおける中国と周辺諸国との朝貢関係をもちだすことまで行なった。
さらに、八中総では「資本主義から離脱したいくつかの国ぐに」の一つにキューバを挙げ、「ベネズエラ問題で民主主義と人権を破壊し独裁を強めるマドゥロ体制を支え、ラテンアメリカに分断を持ち込む役割を果たしていることを深く憂慮」するとも発言している。しかし中国もキューバも、さまざまな困難・矛盾を抱えつつもアメリカ帝国主義との闘い、反帝闘争の立場にたつことでは一貫している。そのことを棚上げし、自国帝国主義が、いまだに天皇制を支配構造に抱え、内に人民支配、外に戦争国家として乗り出していることを許している、そのことへの自省のかけらもない志位委員長のこれらの発言を、排外主義と呼ばずしてなんと呼べばよいのか。
さらにここには、「国際社会」「市民社会」「人権」といった概念を「社会主義」の理念と対立させて持ち上げ、ブルジョワ・マスコミの報道や国連を至上のものとする階級闘争軽視、「悪い資本主義よりいい資本主義」論が前提にされている。
闘わずして「未来社会」は拓けない
そのうえで、③が位置づけられるのである。「発達した資本主義国での社会変革が社会主義・共産主義への大道である」というこの「未来社会論」は、②との関係において導かれたものだが、われわれはここに自主独立を標榜する日本共産党の唯我独尊をみる。この「未来社会論」によって教育される党員が、「経済的に発展していない」他国の共産党、人民にたいして排外主義的な思考と行動に出ないと言い切れるか。党員をインターナショナリズムの精神で教育するのではなく、「日本は発達した資本主義」で、その分だけ社会主義に近いといった「発展段階論」や「民族優位」の考えで教育するなら、その行き着く先には排外主義が待つばかりである。
その「発達した資本主義」日本はどのような歴史を経て、こんにちあるのか。台湾・朝鮮を植民地支配し、中国とアジア・太平洋の諸国を半植民地支配して資本蓄積し、敗戦後もアメリカ帝国主義の庇護のもと、朝鮮戦争の惨禍を滋養にし、戦争責任を負わない「経済協力」方式の資本輸出で資本主義復活を成し遂げてきたのが、「発達した資本主義国」日本の真の姿なのである。そのうえにあぐらをかいて「発達した資本主義国での社会変革が社会主義・共産主義への大道である」などという夜郎自大は、猛省のうえ改められなければならない。
共産主義者の責任
じじつ、こんにちの国際共産主義運動のなかで日本共産党は孤立した状態だ。ギリシャ共産党の尽力によって毎年十一月のロシア十月社会主義革命の時期に開催されている共産党労働者党国際会議が、今年は隣国・朝鮮民主主義人民共和国の平壌で開催される。日本共産党は、この国際会議の準備会にこそ参加したものの、以降、二〇余年の実績をもつこの国際会議にはいっさい参加していない。朝鮮半島の非核・平和の実現と反帝国主義勢力の団結をめざして開かれるこの平壌国際会議に、日本共産党は今回も参加しないのだろうか?また本紙今号掲載の日本社会主義青年同盟・近藤委員長の報告にあるように、日本で世界の共産主義青年運動の流れに合流しているのは、この社青同と在日本朝鮮青年同盟のみである。日本共産党の影響下にある日本民主青年同盟は、以前この流れと協働していたが、いまは世界民主青年連盟からも脱退し、世界の流れから取り残されている。
わたしは思う。資本主義の不均等発展のもとで、「進んだ国」であれ「遅れた国」であれ、困難な中で社会主義権力を樹立し、いまもアメリカを先頭とする帝国主義勢力の瓦解攻撃と敢然と闘う中国やキューバ、朝鮮の共産主義者の党と、社会主義権力の樹立をめざして資本主義国内で階級闘争を担う共産主義者の党のあいだに優劣などない。
日本共産党第二八回大会でも野党共闘の進展を評価してたびたび発言された「リスペクト」(尊敬・敬意)なる姿勢は、中国やキューバ、そして旧ソ連や朝鮮の反帝闘争にたいしてこそ払われるべきものである。 【土松克典】
(『思想運動』1049号 2020年2月1日号)
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