安倍改造内閣 最悪かつ最強硬な改憲シフト
現場を基礎に秋以降の闘いへ


 九月十一日、第四次安倍再改造内閣と自民党の新執行部が発足した。その顔ぶれを見ると、新しい体制が改憲と軍拡、民族排外主義路線を強硬におし進めるきわめて危険な布陣であることは一目瞭然だ。二〇名の新閣僚の内、日本会議議連(日本会議の国会議員組織)の幹部が実に一二名を占める。首相の安倍晋三と麻生太郎財務相は同議連特別顧問、菅義偉官房長官、高市早苗総務相、橋本聖子五輪相が副会長、衛藤晟一沖縄北方相が幹事長、加藤勝信厚労相が副幹事長、萩生田光一文科相が政策審議副会長……といった具合だ。党役員では、下村博文選対委員長、稲田朋美幹事長代行も日本会議の中心メンバーで改憲派の急先鋒である。
 安倍側近の世耕弘成が参院幹事長に就いた。世耕の任務は、山東昭子参議院議長とタッグを組み参院で改憲論議を活性化させ改憲派を三分の二以上に増やす多数派工作を強めることである。新体制は、安倍と同じ思想信条をもつ「お友達」や「側近」をズラリと揃えた最悪かつ最強硬な改憲シフトといえよう。
 二〇二〇年中の新憲法施行という安倍たちの当初のもくろみが破たんするなか、ここで何としても巻き返しをはかり、安倍の総裁任期が切れる二〇二一年九月までに憲法改悪を実現する、これが改憲派の描く新たなシナリオだ。
 米軍との一体化を伴う大軍拡路線も進むだろう。八月末に来年度の概算要求が出揃った。軍事費は五兆三二二三億円、八年連続の増加で過去最大となった。最新鋭ステルス戦闘機F35Bの購入費など米国製武器「爆買い」の費用は五〇一三億円にのぼる。イージス・アショア関連費一二二億円、護衛艦「いずも」の空母への改修費用三一億円なども盛り込まれている。
 辺野古新基地建設の問題はどうか。『琉球新報』九月十三日付社説は、安倍再改造内閣を「辺野古移設強行の布陣だ」(大見出し)とし、「強硬姿勢が顕著な河野氏を防衛相に据えたことは、何が何でも辺野古新基地建設を強行するという安倍政権の強い意志の表れと見ていい。離島住民の反対が強い南西諸島への自衛隊配備を巡っても、周辺地域との緊張を高めることもいとわず突き進むようでは危険だ」と強い警戒感を表明した。
 改造内閣発足の日の記者会見で日韓関係について問われた安倍は、「政府は国際法に基づいて韓国側に適切な対応を求めている。その方針は新しい体制のもとでもみじんも変わらない」と強弁した。歴史修正主義者のオンパレードといってよい改造内閣によって、関係改善どころかより強硬な民族排外主義の外交路線が打ち出されることは想像に難くない。朝鮮や中国への対応についても同じである。
 朝鮮高校無償化裁判における相次ぐ不当決定やあいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」の中止問題に見られるごとく、国内においても歴史修正主義・民族排外主義の流れが強まっている。政府・マスコミがこの傾向を一段と加速させる危険性が出てきた。
 消費税が一〇%に増税される一方で、社会保障政策では、あらゆる分野でいっそうの給付の削減と人民の負担増が強いられようとしている。政府は全世代型社会保障検討会議を発足させたが(九月二十日に初会合)、ここには経団連、経済同友会のトップ二人が加わる一方で労働組合や福祉現場の代表は一人も参加していない。労働政策についても、資本家の利益にかなった「規制緩和」が着々と進められるなか、関西生コン支部への不当弾圧に見られるように、抵抗する労働組合に対しては徹底的な破壊攻撃が仕掛けられている。
 以上縷々述べたような反動政策をより強力に遂行することが改造内閣の使命なのだが、小泉進次郎入閣の政治的演出なども功を奏し、その本質はぼやかされ、各種世論調査における内閣支持率は軒並み五〇%を超えた。森友疑惑の中心的政治家である萩生田の入閣、電波停止発言の高市が再び総務相に就いたことなどはもはや問題視されない。
 敵の攻撃の要は、体制が抱える矛盾、人民の不満を外部に向けさせる民族排外主義のイデオロギー政策だ。十月~十一月の新天皇即位関連儀式や東京五輪に向けたムード作りもナショナリズムへの世論誘導に最大限利用される。これに打ち勝つ階級的・歴史的観点に立った思想闘争の強化が求められる。
 そして何よりもそれぞれの持ち場で頑強に闘い抜くことだ。本紙今号には、朝鮮高校「無償化」裁判を闘う金斗植教諭の文章が載る。その結びはこうだ。「俺たちは負けない」「いくらでも倒してみろ」、「必ず勝つ!」 【大山 歩】

(『思想運動』1045号 2019年10月1日号)