19参院選
選挙中心のものの見方から、大衆闘争中心のものの見方へ転換を!

 七月二十一日投開票の第二五回参議院選挙は、二十二日朝刊各紙が報じるように「与党勝利改選過半数」『読売』、「改憲勢力三分の二は届かず」『朝日』という結果であった。
 詳しい検討は別の機会に譲るが、ここでは基本的評価と今後の闘いの方向性を述べる。
 「最大の争点は『政治の安定』でした」「衆議院も併せれば、六回連続、国政選挙において、国民の皆様から、自民党への強いご支持を頂きました」「(「憲法改正」については)少なくとも『議論は行なうべきである』。これが国民の審判であります」という七月二十二日の記者会見での安倍発言は、投票率が史上二番目に低い四八・八%(低投票率は常態化)、公示前議席数からマイナス一〇、比例区での票を前回の一六年参院選より二四〇万票も減らした自民党の責任者による、またしてもの我田引水、噴飯もの。
 いっぽう、安倍政権による憲法改悪、貧困と格差の拡大などに反対する「野党共闘」側は、「改憲勢力三分の二割れ」を実現できたことを高く評価している。われわれも安倍政権打倒のためにともに闘っている者として、「改憲勢力三分の二割れ」を評価する。
 しかし、もちろん非は安倍自公政権側にあるとしても、衆参同日選挙の脅しをかけられ内閣不信任案を参院解散前日にしか提出できなかったこと。改憲、辺野古、原発問題などでも統一した、毅然とした態度がみられないこと。政権側に数々の失政・失策がありながら、結局は逃げ切りを許してしまうこと。総じてブルジョワ支配階級による「金持ち優遇・貧乏人冷遇」攻撃に「野党側」が有効な反撃を組織できていないこと。
 こうした現実が、労働者人民の間に「政治に期待してもしょうがない」というあきらめムードを増長させている。そしてそうした現状に不満を抱く層が、〈反緊縮・反エリート〉を掲げる左派ポピュリズムとして「れいわ新選組」を受け入れ、二議席を獲得させたのではないか。
 さらに言えば、繰り返される選挙そのものが、とりわけ安倍政権下での選挙は、政権延命の手段として使われているのが実情ではないか。低投票率での低得票の「勝利」を、安倍たちはそれがまるで自分たちへの白紙委任ででもあるかのように利用している。
 選挙となると、ややもすると上からの候補者選びが先行し、大衆運動の積み上げが軽視される。そして「大半の国民」に受け入れられる無難な政策が重用される。そこでは天皇制、侵略と植民地主義の歴史などの「難しい問題」は敬遠され、イデオロギーにおける保革(資本家階級と労働者階級)の対立はぼやけていく。立憲民主党代表の枝野による「令和デモクラシー」発言はこの間の事情を端的に表している。
 では、われわれはどう闘うのか? 参院選の直後から、「次は総選挙だ!」の声が聞こえる。しかしそうではなくて、われわれは沖縄選挙区で高良候補が勝利したように、辺野古新基地建設反対という沖縄県民の大半の支持を得る大衆闘争を基盤にした、そうした選挙の闘い方に学ぶべきではないか。
 また今号二面に掲載したが、いま全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部に対して延べ七五名の逮捕という凄まじい弾圧がかけられている。資本と国家権力が一体となったこうした攻撃と労働者同士が連帯して闘うこと。その中で労働組合運動の再建・強化、労働者階級の階級意識の再形成をめざすべきだ。未だ資本の強制する「現実」に抑えつけられている人びとを奮い起こすためにも、闘う部分とその闘いを共有しようとする仲間が大衆運動レベルで連携し、協働・連帯の力を示すことがまず必要だ。【広野省三】

(『思想運動』1043号 2019年8月1日号)