歴史認識
「無礼」は河野・安倍ら日本政府の側
近現代を貫く帝国主義者の所業


 韓国大法院がくだした戦時強制動員被害者に対する戦犯企業(新日鐵住金・三菱重工業)への賠償命令に対し、安倍政権はさる七月一日、半導体素材の対韓輸出規制という報復行為に打って出た。安倍らは大法院判決とは無関係と強弁しているが、その理由に「半導体の核心素材が韓国を経て北朝鮮に入りかねない」などという言いがかりまで付け、その前日(六月三十日)に実現した朝鮮半島の三八度線上「板門店」における朝米首脳対面に泥を塗りつけたのだ。

被告席にいる日本

 日本の地で祖国の自主平和統一を願い闘っている在日韓国民主統一連合が発表した声明「安倍政権糾弾、歴史清算のための韓国国民の闘いを熱烈に支持する!」(七月十九日付)は、この報復行為に対して《加害者である日本が被害者である韓国に制裁を加えるという、驚くべき事態が現出した》と指弾した。しかし、《驚くべき事態》はこれにとどまらない。七月十九日、外相河野は南官杓駐日韓国大使を外務省に呼びつけ日本政府の主張を述べた後、南大使が韓国政府の見解と対処方法を話しはじめると、河野は途中でこれを遮り「極めて無礼だ」などと言い放った。メディアも同席する中での河野のこうした傲岸不遜なビヘイビアは、「聞く耳もたぬ」宗主国根性丸出しの粗野なものであった。
 こうした日本政府の一連の所業に対して、韓国の進歩言論『民プラス』は《過去の歴史問題について謝罪も賠償も認めない安倍政権、いまだに自分らを「朝鮮総督府」と錯覚し内政に干渉する日本は、いったいわが政府と国民を何だと思っているのか》(七月十一日付)と糾弾している。さらに朝鮮中央通信社は論評「日本は被告席にいる」のなかで、《利があるときは仲良くし、気に食わなければためらいもなく食ってかかる島国一族の振る舞いは、絶対に信頼できない日本の実体を国際社会にふたたび深く印象付けている。/日本が朝鮮半島をめぐる地域情勢の流れから完全にはじかれ「蚊帳の外」に置かれたのは、あまりにも当然である。日本は、被告席にいる自国の境遇をしっかりと自覚し、過去の清算から行なえ》(七月十八日付)と正当にも批判している。

問われる歴史認識

 こうした事態は、国内では参院選を背景に起きた。安倍政権は国内向けにハンセン病家族訴訟での控訴を取り下げ、謝罪と賠償を明言して「国民」の歓心をかう一方、外(韓国・朝鮮)に向かっては前述の暴挙に出て「国民」の排外心を煽ることで支持率を高めようと画策した。その心性は、戦時強制動員被害者(いわゆる元「徴用工」)をいまだに「旧朝鮮半島出身労働者」と言いかえ、あたかも自由に出稼ぎのために来たかのように誤魔化し、その強制性を「なかったこと」にする歴史の偽造に支えられている。
 それは戦時性奴隷被害者(いわゆる元日本軍「慰安婦」)への強制性否定にも通底する日本政府の詭弁・詐術だ。そしてその根底には、「日本の朝鮮統治は合法で正しいものだった」という近代以降の日本帝国主義者の歴史認識が横たわっている。その延長上で一九六五年の日韓基本条約と日韓請求権協定が結ばれた。
 南北朝鮮人民は、この日本帝国主義者の歴史認識を根底から問いただしているのだ。
 「他民族を抑圧する民族は自由ではありえない」――抑圧民族プロレタリアートのわれわれが、この真理からの解放をわがものにしようとするなら、嘘で塗り固めた日本帝国主義者の歴史認識を打ち破る言論戦が喫緊の課題となる。
 われわれはその道を進んでいこう。 【土松克典】

(『思想運動』1043号 2019年8月1日号)