駐日ベネズエラ大使が記者会見
二四時間でクーデター収束、米帝の介入は続く


 四月三十日午前五時、グアイド国会議長のビデオメッセージが全世界を駆け巡った。グアイドは首都カラカス市内にあるカルロタ空軍基地の内部に入ったと述べ「勇気ある軍人たちがわたしたちの元に駆けつけた。兵士たちは反政権で決起を」と訴えた。
 このクーデターはベネズエラ人民、政府、軍の反撃に合いわずか二四時間で収束した。
 四月三十日夕刻、一〇万人を超す人びとがマドゥーロ政権支持を訴え大統領宮殿前に集まった。翌五月一日メーデー集会が行なわれ外国勢力の介入に反対する四〇万人を超す人びとの隊列が首都カラカスの中心街を埋め尽くした。
 米国は引き続き軍事介入の可能性を示唆し、グアイドは米国『ワシントンポスト』紙(五月四日)やイタリア『ラ・スタンパ』紙(五月十日)のインタビューで「軍事介入に向けた米国の努力や提案のすべてを歓迎する。軍事介入の提案があれば承諾する」と述べた。

イシカワ大使の 記者会見

 五月十日、セイコウ‐イシカワ駐日ベネズエラ・ボリバル共和国大使が東京の日本記者クラブで会見し、〈①四月三十日に何があったのか、事実と証言を踏まえ、②ベネズエラの政治情勢にもたらす影響について〉報告した。以下、会見の内容を紹介する。

〈四月三十日に何があったのか〉

 まず、世界を駆け巡ったグアイドのビデオメッセージが流された。グアイドの背後に兵士が何人いるかはわからない。
 次に、直後の朝六時頃のカルロタ基地の近くのアルタミラ地区の映像。数人の兵士が街の人びとに「恐れるな、街頭に出てこい」と訴えている。動きはばらばらで手持ちぶさたな様子。
 グアイドたちがいたのはカルロタ基地の外側のアルタミラ地区。グアイドはビデオメッセージで基地内に入ったとアピールしたが実際は基地には入っていなかった。
 その次にグアイドが所属する人民意志党レオポルド‐ロペス党首と数人の兵士たちの映像。明らかに落ち着きがない。そしてアルタミラ地区の高速道路インターチェンジに連れてこられた兵士へのインタビューが上映される。兵士の証言によると経過は左記のとおりだ。
 前日(四月二十九日)午後六時、情報局本部で約一〇〇名の兵士が出動準備の命令を受けた。四月三十日午前三時、トコロン刑務所で緊急事態と言われバスに乗車。アルタミラの高速道路インターチェンジで下ろされ「君たちはベネズエラの歴史を変えるようなことを見る」と言われる。腕章を渡され道路を封鎖するよう上官から指示された。隙を見て逃げ出し基地司令官と連絡をとり基地に逃げ込んだ。
 今回の事件については、特別の調査委員会により事態の詳細があきらかにされ次第、関係者はすべて司法のプロセスで裁かれる。

〈補足=情報局長官の逮捕〉
 『テレスール』(五月十日)によると、情報局長官マニュエル‐クリストファー‐フィゲラ将軍は解任され逮捕された。一年前からCIAに買収されており、四月三十日午前九時に逮捕予定であった。逮捕を察知しクーデターを決行した。自宅軟禁中のレオポルド‐ロペス人民意志党党首の解放はフィゲラ将軍が指示した。
 五月七日ペンス米国副大統領は情報局長官を解任されたフィゲラ元将軍に対する経済制裁の解除を発表した。
 ロペス人民意志党党首はスペイン大使館に逃げ込み、兵士二五人がブラジル大使館に逃げ込んだ。

〈ベネズエラ政治状況への影響〉
 グアイドはついにその実像を見せた。たとえ表面上でも民主主義と選挙を求めていたが、今回銃を取り暴力に訴えた。米国を支持するリマグループでさえ五月三日の会議で姿勢を変化させ、EUはクーデターを支持せず平和的解決を求める声明を発表した。
 しかし、米国の介入主義的姿勢は続いている。ポンペオ国務長官はグアイドが訴えるクーデター「自由作戦」への支持を表明している。
 グアイドはたびたびデモを呼びかけているが参加者は減り続けクーデター後決定的になっている。五月四日のカラカス近郊のロステキス市中心部のデモの映像。参加者は少ない。
 米国の経済政策研究センターが発表したジェフリー‐サックスらの報告によると、二〇一七年と二〇一八年の二年間に米国の経済制裁により健康に甚大な影響がありベネズエラで四万人が死亡したと述べた。
 米国はベネズエラへの介入を強めている。大きな力となるのは国際世論である。ベネズエラの動きを見守り表面上の情報に惑わされず真実を見て頂きたい。

〈質疑応答=経済封鎖、偽情報について〉
 「四万人の死亡はどのような経過なのか。餓死したとは考えがたいが」との質問に対し次のようにイシカワ大使は回答した。
 ベネズエラに対する経済制裁の影響についてはさまざまな調査が行なわれている。最近二年間の損害額が三〇〇億ドル(約三・三兆円)、二〇一三年から二〇一七年の累計で三五〇〇億ドル(約三九兆円)など。
 経済封鎖によりベネズエラは医薬品を国際市場で調達できなくなっている。ベネズエラには公的医療制度があり国民はその恩恵を受けHIV患者の医薬品や透析など無料である。しかし医薬品が手に入らない。ベネズエラは汎米州保健機構に基金を持ちそれを通じて医薬品購入をしてきたが米国は金融封鎖で口座をブロックした。
 国営石油会社はイタリアと取り決め骨髄移植の子どもたちをイタリアに送り治療している。その費用四〇〇万ドルの支払いを欧州の銀行でブロックされ、二五人の子どもたちの一人が先週亡くなった。
 「マドゥーロ大統領が四月三十日飛行機に乗ってハバナに行こうとしたがロシアが説得したとの報道がある。また、米国トランプ大統領はキューバに対しベネズエラに派遣している二万人のキューバ兵を撤退させろ。撤退しないと最上級の制裁を行なうとのべているが」との質問に対しイシカワ大使は次のように述べた。
 ポンペオ国務長官がマドゥーロ大統領のハバナ行きについて述べている。しかし、マドゥーロ大統領もロシア政府も否定している。今の状況を見抜くことが必要である。フェイクだらけだ。
 ベネズエラに来ているキューバ人は医者や教師などで二国間協定に基づきベネズエラに貢献している人びとだ。米国の退役軍人団体はベネズエラにキューバ兵士がいる証拠はないとの声明を発表し、CIAですらキューバ兵がいる証拠はないと述べている。【三田 博】

(『思想運動』1041号 2019年6月1日号)