第2次朝米首脳会談で問われているのは何か
民族自決=自主統一に向かう時代の大道


緒戦から歪曲報道

 第2次朝米首脳会談が、ベトナム社会主義共和国の首都ハノイで二月二十七日~二十八日にかけて開催される。これについて日本のマス・メディアは「会談では北朝鮮の非核化に向けた具体的な措置とその見返りをめぐり、どのような合意をはかれるかが焦点」(二十六日午前七時、NHKラジオ)と報道している。だが、それは二重に歪曲した報道である。一つは「北朝鮮の非核化」ということ、もう一つは「見返り」である。
 これらは使い古された表現だが、マス・メディアが第2次朝米首脳会談に際し、朝鮮半島と東アジアの平和にまったく寄与しない誤った方向に日本人民を導こうとする魂胆(そしてそれを使嗾しているのが首相安倍ら極右勢力である)がこれらの表現から透けて見える。いま、もう一度、朝米間の現段階における到達点である第1次朝米首脳会談で発表された「朝米共同声明」に立ち返って、その本質が何なのかを確認してみよう。

非核化の主体は?

 まず「北朝鮮の非核化」だが、このような文言は「朝米共同声明」には出てこない。あるのは「朝鮮半島の非核化」である。この文言が出てくる「朝米共同声明」第3項は次のようになっている。
 《3.朝鮮民主主義人民共和国は2018年4月27日に採択された板門店宣言を再確認し、朝鮮半島の完全な非核化に向けて努力することを確約した》と。ここでは「朝鮮半島の非核化」努力の前提として、「板門店宣言の再確認」が謳われている。
 そして、その「板門店宣言」第3項「朝鮮半島の恒久的で堅固な平和体制構築」の4番目には《④北と南は、完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標を確認した。/北と南は、北側が取っている主導的な措置が、朝鮮半島の非核化のために非常に意義があり重大な措置であるという認識を共有し、今後、それぞれ自らの責任と役割を果たすことにした。/北と南は、朝鮮半島の非核化のための国際社会の支持と協力のために、積極的に努力することにした》と謳われている。
 このことから明らかなように、「朝鮮半島の非核化」は北と南の「共同の目標」なのであり、北と南はその目標実現のために「自らの責任と役割を果たす」ことにし、「国際社会の支持と協力」を得るために積極的に努力すると明言している。

問われる次の一歩

 それでは「朝鮮半島の非核化」に向けた北南の努力は現在までにどのように行なわれてきたか? それは「板門店宣言」に次ぐ金正恩委員長と文在寅大統領による三回目の南北首脳会談(二〇一八年九月十八日~二十日、平壌で開催)で発表された「9月平壌共同宣言」第5項で謳われている。すなわち《5.北と南は朝鮮半島を核兵器と核の脅威のない平和の地にしていくべきであり、このために必要な実質的な進展を速やかに遂げなければならないという認識を共にした。/①北側は、東倉里エンジン試験場とロケット発射台を関係国専門家たちの立ち会いの下に、永久的に廃棄することにした。/②北側は、米国が6・12朝米共同声明の精神に従って相応の措置を取れば、寧辺核施設の永久的な廃棄のような追加措置を引き続き講じていく用意があることを表明した。/③北と南は、朝鮮半島の完全な非核化を推進していく過程で共に緊密に協力していくことにした》と。
 このように、朝鮮民主主義人民共和国は非核化に向けた具体的工程を明示し一部実行することで、米側の対応を観ていたのである。これに、トランプ米政権は「核リストの申告」要求や「制裁」政策の続行で応じたために膠着状態が続いてきた。まさに問われているのは「北朝鮮の非核化」ではなく、段階を踏んだ同時行動の原則に基づく米側の「朝鮮半島の非核化」実現に向けた“次の一歩”なのである。

「新年の辞」の警鐘

 金正恩委員長は、今年一月一日の「新年の辞」で次のように述べた。《米国が世界の面前で交わした自分の約束を守らず、朝鮮人民の忍耐力を見誤り、何かを一方的に強要しようとして、依然として共和国に対する制裁と圧迫を続けるならば、われわれとしてもやむをえず国の自主権と国家の最高利益を守り、朝鮮半島の平和と安定を実現するための新しい道を模索せざるを得なくなるかも知れない》と。
 南北間では海外同胞も含め、朝鮮半島の非核・平和体制構築と自主平和統一にむけた総論的合意である「板門店宣言」と、その具体的方策を定めた「9月平壌共同宣言」と付属文書「歴史的な板門店宣言履行のための軍事分野合意書」に基づいた実践が各方面で取り組まれている。いま問われているのは、「朝米共同声明」に盛り込まれた総論を具体化する今後の朝米間の実践的方策なのである。

3・1に思いを馳せ

 冒頭に指摘したもう一つのマス・メディアの歪曲である「見返り」などといった、おおよそ朝鮮民主主義人民共和国を対等な交渉相手として見ない、なにか「恩恵」でも与えてやろうといった態度に米側が出るのなら、それは大きな誤算である。現代は冊封―朝貢の時代ではない。現代は、ロシア十月社会主義革命によって誕生したばかりの革命ソヴィエト政権が「平和に関する布告」で切り開き、アジアでは3・1朝鮮独立運動、中国の5・4運動につながった“民族自決”の延長上にある時代なのである。
 3・1朝鮮独立運動一〇〇周年を迎えるいま、われわれはこの〝時代の大道〟を理解し、沖縄・辺野古新基地建設反対のたたかいが自主平和統一をめざす南北朝鮮人民のたたかいと固く結びついていること、またベネズエラで米帝の「制裁」攻撃とたたかうマドゥーロ政権と南北朝鮮人民のたたかいが固く結びついていることを自覚し、メディアが振りまく第2次朝米首脳会談を貶おとしめる報道、その背後で使嗾する安倍極右政権とたたかい抜こう! 【土松克典】

(『思想運動』1038号 2019年3月1日号