土砂投入を糾弾する!
だが、辺野古に基地はつくらせない


 防衛省は十二月十四日、辺野古の海にとうとう土砂を投入した。われわれは強い憤りをもってこれを糾弾する。無法な土砂投入をやめよ!
 十一月九日から政権と沖縄県の「集中協議」が四回にわたって行なわれた。協議をするなら、少なくともその間は工事を中止するのが当然だ。ところが工事は続き、政権は早くから「集中協議が終われば土砂投入する」と明言していた。同月二十八日には安倍首相と玉城沖縄県知事が対談したが、デニー知事が何を言おうと安倍は「辺野古移設が唯一の解決策」という従来の言葉をくりかえすだけ。これでは何のための協議か。沖縄県は真摯に対話を求めたのに国は工事を進めるために形を作っただけだ。
 辺野古埋め立ての土砂は海上輸送で本部町の港から搬出する予定だった。ところが九月末の台風二四号で岸壁が損傷したため本部町は国の受注業者の使用許可申請を受理しなかった。岸壁損壊はそのとおりだが、本部島ぐるみ会議を初めとする県民の闘いが本部町のそうした姿勢を支えたことが本紙十一月十五日号、大館まゆみの辺野古現地報告から覗われる。すると今月三日、名護市にある琉球セメントの桟橋で搬出用の土砂積込みが始まった。この桟橋は設置工事の完了届も未提出だった。県から指摘されて積込みを一時停止し、届は出されたものの、立ち入り検査が終わるまで作業を停止することを求めた県の行政指導に従わず五日には作業を再開した。
 琉球セメントは安倍晋三の地元・山口県に本社がある宇部興産の関連企業。そうしたつながりで系列の琉球セメントを動かしたのだろうが、条例に違反し、なりふりかまわず沖縄に分断を持ち込む手口は卑劣としか言いようがない。
 何が国をしてそこまで暴走させているか。じつは、基地建設の困難は増すばかりなのである。大浦湾の海底に活断層が存在することはかねてから指摘され、つい今月九日も現地調査をしたばかりの専門家が日本科学者会議の研究集会でその可能性が従来言われていた以上に高いことを明らかにした。そんな活断層の上に大量の燃料や弾薬や化学物質を扱う軍事基地など作れるわけがない。もうひとつ最近になって判明した驚愕の事実は、大浦湾の護岸設置個所の海底深くは超軟弱地盤になっていることである。マヨネーズのように柔らかく、そこに護岸を造るのであれば、設計の全面的なやり直しが必要だ。公有水面埋立法に基づき「設計の概要」を変更しなければならず、その変更は知事の承認を得なければならない。
 翁長・前知事が斃れたあと玉城知事を誕生させたことがここへきて決定的な意味を持ってくる。国はこれまで、「設計の概要」の添付文書については変更に知事の承認は必要ないと開き直ってきた。前述した本部港から琉球セメントの桟橋への変更もそうやってゴリ押ししたのである。だが、設計の全面的やり直しとなれば「概要」本文の変更である。知事がノーと言えば工事は進まないのだ。
 沖縄県の試算では基地が出来るとして費用は二兆五五〇〇億円である。政府の当初の想定二四〇〇億円の一〇倍以上だ。工事を請け負うゼネコンは笑いが止まらないだろう。
 しかし財政赤字が膨らみ福祉が削られている中でこんな膨大な浪費が続けば沖縄だけでなくすべての人民の首が絞められていく。辺野古の闘いを全国に拡げていくカギはここにもある。「基地の引き取り」(それは新たな基地を全国につくることを意味する)より、巨費を濫費する基地をつくるな! という声を全国で上げよう。ゲート前で海上で今日も続く辺野古現地の闘いと固く連帯して、われわれも総力をふりしぼろう! 【土田宏樹】

(『思想運動』1035号 2018年12月15日号