「改正」入管法の成立に抗議する!
階級的立場に立った運動センターの形成を


 十二月八日未明、参院本会議において、「改正」入管法が自公、維新等の賛成多数で可決成立した。現代版の人身売買制度と言うべき技能実習制度を温存し、新たな在留資格「特定技能一号」「二号」を継ぎ足すことによって外国人労働者を剥き出しの搾取構造に放り込むこの改悪法の成立を、われわれは断固糾弾する。
 「改正」入管法の成立をうけて経済同友会小林喜光代表幹事が「外国人材受入れの基本的考え方や『新たな在留資格』の制度設計について十分な議論が行われたとは言い難い」「外国人材の受入れ見込み数や対象職種、必要な技能水準など制度の根幹に関わる部分についての議論なく成立した」と述べざるを得なかったとおり、「改正」入管法の内容はスカスカで成立後の政省令まかせ、審議は強引、形だけのものだった。なぜか。
 なんとしても成立させ、来年の統一地方選、参院選で現政権への支持をつなぎとめるためだ。人手不足にあえぐ業界団体にアピールするとともに、製造、建設、介護等の現場の労働力不足が市民生活に目に見える支障や停滞を引き起こす事態を回避しなければならないからだ。
 もともと政府・独占は、すでに「日本再興戦略2014」で、世界的な人材獲得競争が激化しているという情勢評価のもと、日本経済の競争力を高めるという独占資本の利害から、「高度外国人材」の受入れ促進、留学生の受入れ加速化を掲げて実行してきた。
 しかし、進行する急速な生産年齢人口の減少、露呈した人手不足に対応するために、安倍政権は今年六月の「未来投資戦略2018」「骨太方針2018」で「新たな外国人材の受入れ」=単純労働分野での外国人労働者受入れに公然と舵を切った。「移民政策とは異なる」というまじないを唱えつつ、入管法「改正」によって、技能実習生と留学生アルバイトのいわゆる「サイドドア」からの受入れに加えて、「特定技能」という枠で正面から外国人労働者受入れを可能としたのである。
 独占の側も一枚岩ではない。経済同友会と新経済連盟(代表は楽天の三木谷浩史)は、技能実習制度の廃止も含めた見直しを提言している。当面の人手不足対策より、むしろ中長期的な競争力強化を重視すべきという立場だ。このままでは「日本は選ばれない」という危機意識に立っているのだ。まことに階級的というほかはない。
 運動の側はどうだったか。この臨時国会では、入管法だけでなく、民間事業者に水道事業の運営権売り渡しを可能とする改悪水道法や、地元漁協に漁業権を優先的に割り当てるルールを撤廃した改悪漁業法も成立させられた。いずれも、独占資本への市場開放、規制緩和であった。全水道労組や、自治労、自治労連等の自治体労組、漁協など当該組織の反対闘争はほとんど報道されなかった。「改正」入管法についても、労働現場を基礎とした広範な反対闘争は組織できなかった。闘いは分散化し個別化させられている。
 かつて総評は、賃金闘争においても政治課題についても、それが十分であったかは措くとして、運動のセンターとしての役割を自覚的に担っていた。いま欠如しているのは、情勢の階級的な分析と評価を行ない、人民的な政策、方針を提起して運動の方向を指し示すセンターだ。それはひとりでになくなったのではない。支配階級の攻撃によって破壊され、自壊したのだ。
 「改正」入管法の基本方針、分野別運用方針、総合的対応策、政省令はこれから明らかになる。闘いは終わっていない。
 外国人・移住者とともに組織労働者として闘い、かれら彼女らの、そしてわれわれ自身の労働条件の改善、総合的な生活保障を勝ち取っていかなければならない。【吉良 寛】

(『思想運動』1035号 2018年12月15日号