外国人労働者を雇用の調整弁にするな
技能実習制度をただちに廃止しよう


 十月二十四日に開会した臨時国会の冒頭、安倍首相は所信表明演説で「入国管理法を改正し、就労を目的とした新しい在留資格を設ける」と述べた。これまで高度な技術を持つ人や技能実習生に限ってきた外国人労働者の受け入れを、単純労働者=ノンスキルドワーカーにまで拡大するため、臨時国会で入管法改正案を成立させ、来年四月から実施しようとしている。
 自民党内からも拙速と批判が出るほど急ぐ理由は来夏の参院選対策だからだが、同時に、中長期的な労働力人口減少に対応するには女性、高齢者に加えて外国人に頼らざるをえないからでもある。早くも経団連は「外国人材の受入れに向けた基本的な考え方」を発表、政府方針支持を表明した。
 二〇一七年十月末の外国人労働者数は一二八万人で、この五年間で倍増した。日本で働く者の五〇人に一人が外国人である。いまやこの国は外国人労働者なしには回らない。そのうち技能実習生は二五万七〇〇〇人、外国人留学生は二五万九〇〇〇人で、実態としてすでに四割以上が単純労働に従事しているのだ。
 全統一労働組合やものづくり産業労働組合(JAM)などの労働組合、外国人技能実習生問題弁護士連絡会、移住労働者と連帯する全国ネットワーク(移住連)などNPOの取組みによって明らかにされてきたとおり、技能実習制度は現代版の人身売買だ。転職の自由や居住移転の自由を奪われ、法律上は「日本人と同等以上」という賃金も最低賃金水準、そこからアパート代・食費等の名目で天引きされる。低賃金と長時間労働、パワハラやセクハラが横行し、抗議する者は借金をかかえたまま強制帰国させられる。
 さらに醜悪なのは、民間人材ビジネス業者が跳梁し中間搾取を行なっていることだ(留学生の日本語学校ビジネスもしばしば同様だ)。
 しかし政府・独占は、技能実習制度を温存したうえで、新たな在留資格「特定技能」を継ぎ足そうとしている。六月の骨太方針では対象は建設、農業、介護など五業種と言われていたが、業界団体のロビー活動が功を奏したか、法案では造船、自動車整備、飲食料品製造、外食等を含む一四業種に拡大している。まことに、資本の触手はとどまるところを知らない。
 われわれは、安倍政権の入管法「改正」案を、この国の外国人労働者政策の転換とは考えない。低賃金、かつ、雇用の調整弁として外国人労働者を「活用」しようとする政府・独占の姿勢になんら変化はないからだ。
 そのうえ、安倍政権は「移民政策とは異なる」と強弁することで、家族帯同を拒み、永住を認めず、労働条件の確保や日本語教育その他の環境整備に国が責任をもつことを回避している。われわれは、外国人労働者の人権を認めないこのような手口を許すことはできない。
 この数十年われわれは、本工労働者の限定、非正規雇用や派遣労働への置きかえにさらされてきた。それは、使いたいときに安価に雇い、景気が悪くなれば簡単に辞めさせることができ、労働者どうしを競わせることができる、資本にとってのみ都合のよい雇用形態の拡大だった。外国人労働者が置かれている状況と、その本質に違いはない。敵はひとつだ。
 技能実習制度をただちに廃止しよう! 外国人労働者の入国と就労を合法化し、日本人労働者と同等の権利と労働条件をかちとろう! すべての労働組合はナショナルセンター所属を超えて、人権侵害に呻吟している外国人労働者とともに闘おう!【吉良 寛】

(『思想運動』1032号 2018年11月1日号