辺野古の埋立て承認「撤回」支持
政府の恫喝と工事強行を許さない


 八月十一日、沖縄県那覇市の奥武山陸上競技場で「土砂投入を許さない!ジュゴン・サンゴを守り、辺野古新基地建設断念を求める県民大会」がオール沖縄会議の主催で開催され、雨にもかかわらず七万人の人びとが参加した。八日に膵臓がんで亡くなった翁長雄志沖縄県知事の追悼も行なわれた。そして全国二五か所で、県民大会に連帯する集会や行動が取り組まれた。
 翁長知事は七月二十七日に辺野古埋め立て承認撤回を表明したあと、三十日に入院し、ベッドでも資料を読み、八月六日には沖縄防衛局に対し埋め立て承認撤回の「聴聞」時期の延期を認めない旨の文書を病室で決裁したということだ。亡くなる直前まで辺野古新基地建設阻止のために闘い抜いたことに頭の下がる思いだ。改めて心から哀悼の気持ちを送りたい。
 普天間基地の辺野古移設に反対し、二〇一四年十一月の県知事選挙で現職だった仲井眞知事に一〇万票差で勝った翁長知事は、一五年十月十三日に仲井眞知事による辺野古の埋め立て承認を取り消した。
 それに対して防衛省沖縄防衛局はただちに国民の救済を目的とする行政不服審査法を悪用して私人になりすまし、国交相に不服審査請求を行ない、承認取り消しの効力停止を申し立てた。いわば身内の国交相が承認取り消しの効力停止を決定し、政府の閣議決定を経て代執行訴訟を起こした。それと前後して政府は埋め立て工事に着手し、キャンプシュワブに警視庁機動隊を大量派遣した。沖縄県は執行停止を不服として国地方係争委員会に審査を申し出たが却下され、国交相の執行停止取り消しを求める抗告訴訟を提起した。
 代執行訴訟で裁判長は国と県に和解を勧告したが、「和解」は名ばかりだった。国は埋め立て工事をいったん中止して代執行訴訟を取り下げ、県は抗告訴訟を取り下げて、協議を進めることで合意した。しかし国はすぐに承認取り消しを違法とする是正指示を県に出し、そのため県はこれを違法として係争委に審査を申し出た。係争委は是正指示の適法・違法を判断せず、国交相は是正指示に従わないことを違法として不作為の違法確認訴訟で知事を訴えた。高裁は知事の承認取り消しを違法と断定し、県敗訴の判決を下した。県は最高裁に上告したが棄却され、二〇一六年十二月に県側の全面敗訴が確定した。
 非常に困難な裁判闘争であったにもかかわらず、八月三十一日、沖縄県はこんどは埋め立て承認後の工事の違法性や問題点を根拠に承認を「撤回」し、工事を停止させた。これは翁長知事とともに闘い抜いてきた沖縄の人びとの勝利だ。八月十七日と予告されていた土砂投入は、悪天候を口実に延期となったが、多くの人が指摘する通り、翁長知事が亡くなり、九月三十日に繰り上げとなった県知事選で辺野古新基地建設が争点となるのを安倍政権が恐れてのことだろう。小野寺防衛相は撤回にたいして法的措置に出るとしており、裁判所に執行停止を申し立てることが予想される。また昨年三月、翁長知事が「撤回」を明言したのをうけ、菅官房長官は「行政の長が権限の乱用をすれば違法」とし損害賠償請求を含めた法的措置を取ると言ったが、沖縄防衛局も撤回で民間業者との契約が解除となれば損害賠償が必要、と「聴聞」で沖縄県を恫喝し、その額は一日約二〇〇〇万円とも言われている。安倍政権はこれまで通り基地建設を強行するつもりだろうが、断固許してはならない。
 翁長知事は保守の政治家で元自民党であり、日米安保を容認していたが、辺野古に恒久基地ができれば本土の基地同様に国有地となり、沖縄で唯一県民の口出しできない基地ができてしまうことや、集団安全保障の法制化により米軍と自衛隊との共同使用が現実味を帯び、尖閣諸島を理由にした自衛隊の強化と合わせて明らかに沖縄の基地負担が増加することを見抜いていた(『戦う民意』)。「イデオロギーよりアイデンティティ」を訴え、沖縄の人たちの心をひとつにして基地をなくし平和で豊かな未来を築くために行動し、沖縄の人びとの苦難と闘いの歴史を県内外・世界に丁寧に伝えた。日米安保と米軍基地問題は日本全体の問題であり、民主主義と自治の根幹にかかわる問題だという訴えは、政府だけでなく本土に住むわれわれにも向けられたものだ。自民党総裁選が未来を決するかのような報道が垂れ流される現実に抗し、来る知事選では、翁長知事の遺志を継ぐ候補を全力で支援して、沖縄の人びととともに新基地建設を阻止しよう。
【日向よう子】

(『思想運動』1028号 2018年9月1日号