4・27南北首脳会談の快報に接して
日本は宗主国・植民者意識を改めよ


統一への新段階築く

 四月二十七日、朝鮮半島を南北に分断してきた三八度線上の板門店で、金正恩・朝鮮民主主義人民共和国国務委員長と文在寅・大韓民国大統領が出会い、歴史的な南北首脳会談が行なわれた。そこで両首脳により署名された「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」は、三つの柱で構成されている。第一は「北と南は、北南関係の全面的で画期的な改善と発展を実現することで、断たれた民族の血脈をつなぎ、共同の繁栄と自主統一の未来を早めていくであろう」という北南関係の改善・発展である。第二は「北と南は、朝鮮半島で先鋭化した軍事的緊張状態を緩和し、戦争の危険を実質的に解消するため共同で努力していくであろう」という軍事緊張の除去にむけた努力である。第三は「北と南は、朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制の構築のため、積極的に協力していくであろう」という朝鮮戦争の停戦協定を平和協定に転換し、かつ朝鮮半島の非核化実現のための措置である。
 この「板門店宣言」は、二〇〇〇年の金正日国防委員長と金大中大統領による「6・15共同宣言」と二〇〇七年の金正日国防委員長と盧武鉉大統領による「10・4宣言」の積み重ねの上に成り立ったものであり、今後この「板門店宣言」にのっとった南北双方の課題履行にむけた真摯な努力が期待される。

並進路線の勝利宣言

 この4・27南北首脳会談に先立つ四月二十日、朝鮮労働党は中央委員会第七期第三回総会を平壌で開催した。その要旨を伝える『朝鮮中央通信』四月二十一日付報道(本紙姉妹誌『社会評論』一九二号インターナショナルレビューに掲載)によれば、今次総会の議案は、⒈革命発展の新たな高い段階の要求に即して社会主義の建設をより力強く促すためのわが党の課題について、⒉科学教育事業において革命的転換をもたらすことについて、⒊組織問題について――以上の三つであった。それを要約すれば、朝鮮労働党中央委員会二〇一三年三月総会で提示した経済建設と核戦力建設を並進させる並進路線が勝利をおさめ国家核戦力の建設をこの五年の短期間で達成したこと、その国防力の確保を担保にしてこれからは社会主義経済建設に邁進していく方針が決定された。そして、そのために科学教育事業に力を傾注していくこと、そのための人事の決定であった。さらに、第1議案の決定書「経済建設と核戦力建設の並進路線の偉大な勝利を宣布することについて」では、核の兵器化を実現したことをもって、以降の核実験と大陸間弾道ロケット試射を中止し、北部核実験場も廃棄して、「朝鮮は核実験の全面中止のための国際的な志向と努力に合流する」と、今後の朝鮮の非核の意思と方向性も闡明した。朝鮮にとって、4・27南北首脳会談と六月十二日にシンガポールで行なわれる予定の朝米首脳会談は、この朝鮮労働党の決定の上でのものであることを、われわれはしっかりと踏まえておく必要がある。

誤導するメディア

 今回の4・27南北首脳会談を前後して、日本のマスメディアは「しかし、北朝鮮はこれまで何度も約束を破ってきた……」と、口をそろえて南北首脳会談の意義を貶めることに余念がない。
 だが、朝鮮半島の核問題の元凶は、一九五〇年代に朝鮮戦争の停戦後も停戦協定を反故にして朝鮮半島南半部に核兵器を持ち込んで居座り続けたアメリカ帝国主義の側にある。そして、九〇年代前半に国際原子力機関(IAEA)を使し嗾そうして「北朝鮮の核開発疑惑」を捏造し、それを国連安保理にまで持ち込んで意図的に国際問題化させ、朝米戦争直前にまで関係を悪化させたのもアメリカ帝国主義であり、あげくの果てにリスクの大きさに戦争を断念して「朝米基本合意」(九四年十月二十一日)を締結せざるを得なくなったものの、その合意履行を長期にわたってサボタージュして軽水炉建設を遅延させ、朝鮮の崩壊を画策してきたのもアメリカ帝国主義であった。その姿勢は二〇〇〇年代に入っても変わらず、九四年の朝米基本合意に次ぐ二度目の合意である二〇〇五年九月十九日の「第4回六者会合に関する共同声明」(いわゆる「9・19共同声明」)も、直後に米財務省がバンコ・デルタ・アジアのマネーロンダリング疑惑を捏造して朝鮮に金融制裁を科すことによって合意の履行は頓挫してしまったのである。このように、「約束を破ってきた」のはアメリカ帝国主義の側であり、かれらの狙いは一貫して社会主義朝鮮を瓦解させることにあったのである【今号2~3面掲載の「朝鮮半島の非核化をめぐる朝米の歴史」年表参照】。
 六月に史上初めて行なわれることになった朝米首脳会談についても、日本のメディアは大統領トランプや首相安倍の認識そのままに「国際社会の圧力に屈した結果」と誤導している。朝鮮はアメリカ帝国主義の動向を注視しており、この間の「化学兵器使用」を口実にしたシリア攻撃やイラン核合意からの離脱など、アメリカ帝国主義の一方的な行動に対して批判の手を緩めてはいない。朝鮮の朝米首脳会談にむけた認識は、あくまで前述した朝鮮労働党第七期第三回総会の延長上にあるのであり、朝鮮が何か「物乞い」に出てきているように錯覚するなら、会談は決して成功しない。トランプは、並進路線に勝利したあるがままの社会主義朝鮮を認めることから始めるしかないのである。

朝鮮の国際主義実践

 南北首脳会談に先立つ四月十九日から二十三日にかけて、国際民主婦人連盟(国際民婦連、WIDF)の書記局会議と執行委員会会議が平壌で開催された。国際民婦連は、第二次世界大戦後に結成された世界労連、国際学連、世界民主青年連盟、世界平和評議会などとならぶ国際的な大衆組織で、社会主義が世界体制として存在していた時期は活発な活動を繰り広げていた。ソ連・東欧社会主義の倒壊後は一時活動が低下した時期もあったが、他の組織同様にブルジョワ・イデオロギーの浸透と闘いつつ反帝国主義・女性解放の旗幟を立てて国際的な活動を展開している。『朝鮮中央通信』の報道によれば、平壌の会議には、ギリシャ、キューバ、ベネズエラ、ロシアなど一五か国ほどの女性代表が参加し、朝鮮社会主義女性同盟の全面的な下支えのもとで活動方針などが検討された。そして、会議四日目の二十二日には祖国統一3大憲章記念塔の下で朝鮮人民と連帯するデモンストレーションが繰り広げられた。【上段写真】
 さらに、昨年十一月二日・三日にロシア連邦共産党が主宰して革命の聖地レニングラードで行なわれた第一九回共産党労働者党国際会議(今次会議の主題は「十月社会主義大革命一〇〇周年――共産主義運動の理想、帝国主義戦争に反対し平和と社会主義をめざす闘いの再活性化」であった)に朝鮮労働党は八名の代表団を送り、第一九回共産党労働者党国際会議名で「朝鮮労働党と朝鮮人民の正義の偉業に対する連帯声明」も発表された(朝鮮労働党機関紙『労働新聞』二〇一七年十一月五日付、『社会評論』一九一号インターナショナルレビューに掲載)。そして、この共産党労働者党国際会議をつかさどる作業グループに、今回から朝鮮労働党も新たに加わっている(同作業グループは二一の共産党・労働者党で構成され、アジアからは朝鮮労働党のほかに中国共産党、ベトナム共産党、インド共産党、インド共産党〔マルクス主義〕、ネパール共産党〔統一マルクス・レーニン主義〕の六党が参加している)。
 これらは、朝鮮の党と大衆組織が取り組んでいるプロレタリア・インターナショナリズムの実践の一端だが、こうした取り組みの積み重ねの上に、国際的な信頼をかちとり、その相互信頼を背景にして、いま朝鮮は、七〇年におよぶ分断状況に終止符をうつ闘いに出ているのである。

宗主国意識を改めよ

 朝鮮が南北に分断されて、今年で七〇年になる。七〇年と言えば、現代日本では人が物心のつくようになってから臨終までの長さである。人ひとりが生まれて死んでいくまでの期間、読者のあなたもどこかで「朝鮮問題」という名の日本問題に遭遇した経験があるだろう。そのとき、あなたはどう対処してきたのか? 
 これからどう対処していくのか?
 そこで考えてみるべきなのは、現天皇を支持または好感をもつ者が「国民」の七~八割にのぼり、朝鮮を「脅威」に感じる者が八割に達する現代日本の思想状況である。これは、戦前日本の思想状況と相似してはいないか? 朝鮮を「脅威」に感じる裏には朝鮮に対する「蔑視」感がある。一九二三年の関東大震災における朝鮮人虐殺を見れば、それは歴然としている。
 つまり、現代日本のわれわれは、戦前日本の朝鮮に対する宗主国意識・植民者意識を克服できないままに敗戦を迎え現代にいたっている。朝鮮分断の前史に、日本帝国主義による朝鮮侵略・植民地支配の歴史があり、日本人民にとって、戦前戦後を貫くその負の歴史とまともに向かい合うことなくして、日本労働者と南北朝鮮労働者間のインターナショナルな関係は創り出しえないのである。朝鮮労働党第七期第三回総会と4・27南北首脳会談の快報に接して、そのことを考え、おなじ思いを抱いて活動した先達に学びながら、行動してゆかねばならぬと思う。 【土松克典】

(『思想運動』1022号 2018年5月15日号