「帰還大行進」参加者の殺戮を糾弾する!
祖国帰還はパレスチナ人民の権利


米国の支援受け、闘いの圧殺を図る当局

 パレスチナの人びとは三月三十日「土地の日」から以後五月十五日まで六週間におよぶ「祖国への帰還の権利を求める大行進」を開始した。三月三十日、ガザ地区では、ガザ地区と占領地の間の五か所に数万人の人びとが結集しパレスチナ旗を掲げ大行進を行なった。イスラエル軍はこの大行進の参加者たちに戦車砲撃と銃撃を加え、一七名を殺戮し一五〇〇名を負傷させた。
 人びとは翌三十一日に犠牲者の追悼集会と抗議行動を、そしてそれ以降も連日帰還大行進を実施した。イスラエル軍は大行進参加者たちに毎日銃撃を加え多数の負傷者が発生した。
 四月六日にはガザ地区と占領地の間に結集した数万の大行進参加者たちに対するイスラエル軍の銃撃で一〇名が死去し一三〇〇名が負傷した。四月八日時点、大行進開始以後のイスラエル軍による殺戮者数は三一名に、負傷者数は三〇〇〇名に達し負傷者のなかには多数の重傷者がいる。

「土地の日」の歴史

 われわれはイスラエル軍の帰還の権利を求める大行進参加者たちへの度重なる銃撃と殺戮を強く糾弾する。
 今回の帰還大行進は昨年十二月米国トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と宣言したことに端を発している。米国はパレスチナ人民、アラブ諸国そしてイスラム諸国の正当な権利に攻撃を加え、歴史的に定められてきたエルサレムに関するいくつもの約束事を覆そうとしている。そして、今年二月米国国務省は一九四八年イスラエル建国で約七〇万人の人びとが故郷を追われたナクバ(パレスチナ人民の破局)七〇周年にあたる今年五月十四日にテルアビブからエルサレムに大使館を移転すると発表した。
 パレスチナの人びとは一九七六年三月三十日、イスラエルの土地没収への抗議行動で六名が殺害されて以後、毎年この日を「土地の日」として土地の強奪と入植に反対しパレスチナの解放を求めて集会とデモを行なってきた。米国のエルサレム首都宣言を受け、パレスチナの草の根活動家たちは、今年の「土地の日」からナクバまで六週間にわたって「祖国への帰還の権利を求める大行進」の実施を呼びかけ組織し、諸政治組織がその活動を支援している。
 イスラエル当局はパレスチナ人民の正当な闘いを圧殺しようとあらゆる方策を駆使している。今年一月と二月にイスラエル軍と警察は一三一九人のパレスチナ人を逮捕した。この中には二七四名の未成年者と二三名の女性、四名のジャーナリストが含まれている。イスラエルの行政拘束法は、裁判にかけることなく嫌疑者を六か月間刑務所に勾留可能で、勾留期間の更新も可能である。そして捜査官が「証拠集め」をしている間に起訴することを当局に許している。また、イスラエル軍はガザ地区との境界近くで軍事演習を行ない、パレスチナ人民および近隣諸国人民を脅かしている。
 今回の帰還大行進の直前の三月二十八日、イスラエル軍アイゼンコット参謀長は「大行進」でイスラエルへの侵入やフェンスの損害を許さないと述べ狙撃兵一〇〇名の配置を宣言した。大行進二日目の三月三十一日、イスラエル軍はガザ地区の軍配備を二倍にすると表明。イスラエルのリーベルマン国防相は四月五日「挑発があるならば先週のようなもっとも厳しい対応を行なう」と公言した。リーベルマン国防相は三月三十一日、国連グテーレス事務総長や欧州連合(EU)モゲリーニ外相の今回の大行進参加者への銃撃と殺戮についての調査要求に対し「兵士たちは境界をまもるため必要なことをした。調査委員会は必要ない」と突っぱねている。
 このイスラエルを一貫して擁護しているのが米国である。
 三月三十一日と四月六日に二度開かれた、イスラエル軍による帰還大行進参加者への銃撃と殺戮に関する国連安全保障理事会で、イスラエルに調査要求を求める声明や非難声明の採択を米国は拒否権を行使し妨害した。
 四月五日と六日、アゼルバイジャンのバクー市で開催された非同盟諸国外相会議は最終声明で、今回のイスラエル軍による帰還大行進に対する銃撃と殺戮を非難しこの人権侵害と犯罪の即時停止を要求した。この会議には一二〇か国の加盟国と一七か国のオブザーバー国、一〇の国際組織の代表八〇〇名が参加した。
 パレスチナ人民と連帯しイスラエル当局を糾弾する声明発表や集会が、イスラエル国内を含め全世界で行なわれている。イスラエル国内ではフェイスブックに今回のイスラエル軍の蛮行について「自分がイスラエル人であることを恥ずかしく思う」と書いたラジオ司会者が解雇された。
 われわれはイスラエル軍の帰還大行進参加者たちへの銃撃と殺戮を糾弾し、その蛮行の即時停止を要求する。
 祖国へ帰還する権利はパレスチナ人民の基本的権利である。帰還する権利を求める闘いは、パレスチナ人民の民族自決権の承認とパレスチナの独立した主権国家の承認を要求する闘いにつながっている。 【沖江和博】

(『思想運動』1020号 2018年4月15日号