巨悪・安倍の政権居座りを許すな!
闘う中で「労働者の政治」を追求しよう
五年に及ぶ「安倍一強」政治のツケ
安倍政権によるウソと詭弁を突きやぶり、「森友・加計」事件の膿うみが、引きも切らない「新事実の出現」を伴って、まるで「日本国民」をあざ笑うかのように噴出している。現代日本の資本主義体制の矛盾が、以下に示す最近の事例とともに、いま悲喜劇的に曝け出されている。
自衛隊の南スーダン「日報」事件、厚生労働省の「データ捏造」、陸上自衛隊のイラク派遣時の「日報」隠し。沖縄でのたび重なる米軍ヘリコプターの墜落・米兵犯罪には形だけの抗議ですませ、県民の辺野古基地建設反対の圧倒的な声を力ずく・金づく、で押さえつけ、石垣島、与那国島、宮古島などの南西諸島に自衛隊配備計画を強行する。
政府と東電は原発犯罪に対してまるで人ごとのように対応し、日立製作所が英国で進める原発新設プロジェクトには政府がメガバンクの総額一・五兆円規模の融資全額を債務保証。総額三兆円規模に上る原発輸出を、政府主導の「オールジャパン体制」で後押しする。東電は損害賠償裁判でも、正当な補償はせず、日本原子力発電・東海第二原発の再稼働に向けて資金援助を決め、廃炉ビジネスでの儲けを追求する。
東芝の不正会計・利益水増し、神戸製鋼データ改ざん、トヨタなど自動車各社のリコールは日常茶飯事。今世紀最大級の民間プロジェクトといわれるリニア中央新幹線の工事では、国が財投債と呼ばれる国債を発行して約三兆円調達。それを長期、固定の超低金利でJR東海に回す。JR東海には国労攻撃・国鉄分割民営化の尖兵をつとめた安倍の盟友・葛西が鎮座。その工事ではゼネコン大手四社が談合。まさに日々、やりたい放題のむちゃくちゃな事件が、次々と起きている。
金持ちの、金持ちによる、金持ちの……
政界と財界は二世、三世だらけ。金持ち・支配者たちは互いの利害を守るためさまざまに婚姻関係を結んできた。麻生と安倍の家系図を見ると、その異常さに驚かされる。麻生は明治維新の「立役者」の一人、薩摩藩出身で事実上政府を指導する内務卿をつとめた大久保利通を祖先とし、安倍は長州藩士で長州県令(県知事)の佐藤信寛を祖にもち、この両家はからみあいながら、吉田茂、岸信介、佐藤栄作、鈴木善幸、細川譲煕、麻生太郎、安倍晋三、と実に戦後七人もの総理大臣を出しているのだ。そしてこの間には天皇家との婚姻関係も結ばれている。さらに安倍が日本最大の軍事企業を有する三菱グループやオカルト宗教・右翼排外主義者と親密な関係にあることも有名な話だ。その他の大企業、官僚、学者、知識人等も、ドラマ以上にこうした婚姻関係でつながっている。
いま、安倍たち政治家レベルの劣化の問題と、企業の不祥事、不正とが、こうした「親戚・お友達関係」を通じていたるところで露顕しているのだ。大企業の「内部留保」は四〇〇兆円を超え、「防衛予算」という名の軍事費は、五兆一九一一億円で世界の七番目か八番目に位置する。
いっぽう、安倍政権が先の選挙で「北朝鮮の脅威とともに」「国難」として掲げた二つの事例の一つ「少子高齢化」問題は、四月一日から七五歳以上の医療保険料がアップされ、入院時の食事代の自己負担額は一食一〇〇円上がって四六〇円。介護保険料も三年ぶりに六五歳以上は平均で月数百円上がる。生活保護受給額のいっそうの減額も検討されている。
一貫した実質賃金・労働分配率の低下攻撃がつづき、国民年金・厚生年金支給額は据え置き、労働者に不利な所得税法「改正」案が成立。食品は原料費や人件費の上昇などで、業務用ビールや牛丼などが値上げ、ワインは大手五社が一部を五%ほど上げるという。
なぜこういうことになるのか。一言でいうと、資本主義は他人(労働者)の労働力を搾取し、巨万の不労所得を蓄積する巨大資本と大金持ち、一円でも多くの利益を上げることを至上目的とし全世界に触手を伸ばす銀行・金融資本、巨大多国籍企業が主人公だ。奴らは戦争を厭わない。
否、むしろ金儲けにそれを利用する。さらに日本では、敗戦時に戦争と差別の根源である天皇制を存続させてしまった。これらが現代日本社会の支配構造の根幹をなしており、軍隊(自衛隊)、警察、司法(監獄)、マスコミ、教育がそれを下支えしている。
そしてこれを囲い込むかたちで、米国が主導する「日米安保」「日米同盟」が存在する。
資本主義と社会保障の関係
資本主義体制下の社会保障制度は、労働者人民の要求・闘いの成果であると同時に、社会主義との対抗上、労働者階級が社会主義に向かわないようにするためにとられた、いわば「懐柔策」としての面をもっていた。搾取の廃絶、八時間労働制、男女平等、無料の医療と教育などは、一九一七年のロシア十月社会主義革命によって初めて実体化の道を進んだ。したがって、八九年から九一年のソ連・東欧社会主義体制の倒壊以降、この制約から脱した資本主義は、あらゆる部面での規制緩和〈労働法制改悪、海外資本を含めた資本の最大限の搾取追求の容認化〉・民営化(郵政、国鉄などの公共部門、医療・教育などの私営化)・構造改革(日本社会を資本のグローバル化に合わせて改造する)路線を急速に押し進めた。
「立憲・民主主義」の大合唱と天皇代替わり、明治一五〇年祝祭キャンペーンが盛大に繰り広げられるこんにちの日本社会の時代錯誤は、天皇制解体闘争の敗北(それは敗北としても認識されずに現在に至っている)、天皇に対する戦争責任の追及を放棄することによって生まれた日本人民自身の戦争責任の曖昧化とつながっている。その自己批判の欠如が、現在の政治的無関心に決定的に作用している。
結局、帝国主義・金利生活者国家というものが持つ、他者に依存する寄生性とか腐朽性(資本主義的モラルさえ踏み外す)が、こんにちの資本主義社会の政治・経済・文化イデオロギー、生活全般の腐敗現象に現われているということではないか。
したがって問題は、ブルジョワ階級によって押しつけられた資本主義という枠組の中だけで考えるのではなく、その枠組自体を問い、打ち倒す思想、理論、実践に踏み出せるか否かにある。マスコミ任せ、世論調査頼り、「次の選挙で勝とう」だけではダメだ。
労働者の闘いの大道を歩もう
「難しい」「上から目線」「説教はたくさんだ」「お前たちこそが時代錯誤だ」と言われようとも、階級的観点に立った社会科学的認識なしに、ブルジョワ独裁政権を打倒し労働者の権力を打ち立てることはできない。トランプや安倍も含めたブルジョワ支配階級は、「民主主義に反する」「ウソつきだ」といわれながらも、その階級的認識・資本主義体制絶対維持の任務を、はっきりと自覚している。
いま、労働組合運動の社会的影響力が弱体化し、ほとんどその力を発揮できない状況にある。しかし、職場、そして地域・学園の中で、「森友・加計」学園事件などと自分たちの労働、生活、生き方、憲法とを結びつけて議論することから始め、安倍政権を引きずりおろす闘いの中で「労働者の政治」をどう作り出すかを追求すること。この討論と実践なしには、労働者階級に未来はない。どんなに困難であってもこの道を通る以外、資本家階級を倒す道はない。【広野省三】
(『思想運動』1020号 2018年4月15日号)
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