国際婦人デー3・3東京集会成功裡に開催
壊憲NO! 働く権利・生きる権利をたたかいとろう!

<集会ルポ>戦争反対の意思を鮮明に掲げて
女性抑圧の根源を撤廃する闘いを

 三月三日(土)、東京・文京区男女平等センターにおいて、二〇一八年国際婦人デー三・三東京集会が開催された。会場ではまず正面上方に掲げられた集会看板の大きな赤い文字「戦争反対」が目に飛び込んでくる。その左下にHОWS(本郷文化フォーラムワーカーズ スクール)の赤旗、演壇には赤いバラ、左右の壁面には二枚の赤い垂れ幕――八時間労働制をはじめとした、革命前のロシアの労働者の要求である。その一〇数項目はすべて今日の日本の労働者の要求・問題と合致している。さらに「改憲反対」「辺野古基地建設反対」「朝鮮半島に放火するな」など、五枚のデモ用横断幕が会場全体を赤く縁取っている。主催側の意図は明瞭だった。これらが本集会の参加者・発言者を勇気づけたと思う。司会の米丸かさねが開会宣言を行ない、本集会のテーマ、「戦争反対! 壊憲阻止! 生存権・労働権を闘い取ろう!」と言いきった。つづいて力強く集会趣旨を述べ、会場の空気は一気に盛り上がっていった。

歴史の共通点を見つめよう

 最初に倉田智恵子実行委員が「戦争と女性――失った権利を取り戻そう」のテーマで基調報告を行なった。倉田はまず二月二十三日未明に朝鮮総聯本部に銃弾を撃ち込んだ右翼とそれを生む土壌を作っている安倍政権に強く抗議しようと訴え、会場から賛同を得た。
 われわれは第一次大戦に反対し反戦・反帝国主義を明確に掲げた国際婦人デーの歴史的意義を踏まえて集会を開催している。だが今、野党傘下の労働組合が取り組む国際婦人デーではその歴史が忘れ去られ、また国連、厚労省、民間会社は一体となってお祭りのような国際婦人デーを催している。そのねらいは商業路線と組んで女性の活躍推進、国力の底上げを図ることだ。そこにはアジア太平洋戦争中に女性が盛んにおだてられ、総動員体制に取り込まれていった苦い歴史との共通点がある。同様に、政府とマスコミが一体となって大宣伝する「働き方改革」によって、男女を問わず〝働きがい〟を追求させられている。そこにどんな意図・意味があるのか、現在はどういう時代か、政府は何を進めているかを見つめよう、と力を込めた。
 後半では、平昌オリンピックを契機にすすむ南北融和を心から歓迎し、また「慰安婦」問題については、文在寅大統領の「政府間の取引・交渉で解決すべきではない」との言明、ふたたび「慰安婦」を生むことのない解決を望むハルモニたちの意思を支持した。
 朝鮮半島は植民地支配からの独立運動、民主化闘争、そしてろうそく革命へと闘争が継続している。さらに倉田は二〇一五年末の「慰安婦」問題日韓「合意」に大韓民国民の八割が反対し、その流れで性暴力に対する告発・抗議の「♯Мe Tоо」の運動が爆発的に広がっているという。
 日本では、政府・マスコミ一体の朝鮮バッシングの嵐のような宣伝がくりひろげられている。安倍首相の「七〇年談話」が容易に受け入れられるのは、ものを言わない、考えない、責任を取らないという意識が蔓延しているからだと指摘した。日本と韓国の人びとの意識の差は大きい。また朝鮮民主主義共和国(以下朝鮮)はほぼ一年中ともいえる世界有数の規模の米韓合同軍事演習(実質的な戦争挑発行為)に脅かされ、いつでも国を破壊される危険にさらされている。しかし朝鮮が米国の核攻撃に反対し、自らが核武装という選択をせざるを得ない状況にたたされていることを理解しようとする日本人はごくわずかである。日本政府は朝鮮高校を無償化の適用から外した。この問題に日本人がいかに真剣に取り組むかが問われている。倉田は安倍政権とそれに追随するマスコミによって真実が見えにくくさせられているが、世界と日本の現実を見据え仲間を作りだそう、失った権利を取り戻すために闘おうと訴えた。
 次に韓国の映画社が朝鮮高校無償化適用闘争の支援として作った『海を越え、ウリハッキョを紹介します』が上映された。なぜ在日朝鮮人が日本に在住し、差別と弾圧に苦しむなかで、学校を守り抜く闘いを続けるのか、その歴史の映像と朝鮮学校の楽しそうな学校生活と愛くるしい子どもたちの表情が瞼に残る約六分間の映像である(この映像はYouTubeで見ることができる)。

オモニたちの願い

 特別講演は在日本朝鮮民主女性同盟(以下女性同盟)・金才順国際部長が行なった。タイトルは「オモニ(母)たちの願い」。金さんはまず、平昌オリンピックをめぐって南北高位級会談の実現や統一旗を手にした選手、応援団たちによって統一機運が高まっている喜びを述べ、会場から大きな拍手が寄せられた。つづいて女性同盟の歴史について紹介した。植民地支配から解放された後、朝鮮に帰国せず日本に残った人びとで一九四七年に結成し、当時は識字運動(文盲退治と言ったという)と封建的遺制の撤廃、生活改善を目標に、女性の政治的文化的権利をかち取ろうというスローガンを掲げた。金さんが語る女性同盟の活動には懐かしく、そして新鮮な気持ちにさせられた。金さんはGHQの学校閉鎖令との闘いから高校無償化適用の闘いまで、朝鮮人の誇りをかけた闘いを一語一語刻みつけるように語った。何よりも、朝鮮高校の生徒たちが日本国を相手に差別賠償請求裁判を起こし、不当な差別を訴える場面では何度か声を詰まらせた。朝鮮半島、在日朝鮮人の歴史は日本政府による朝鮮制裁・バッシングという犯罪の歴史でもあることを思い知らされた。まさにそれが二月二十三日の、二名の暴漢による朝鮮会館の通用門に向けた拳銃の乱射という恐るべき暴挙にもつながっている。しかも、その日の国会で自民党の山田賢司が在日朝鮮人へ教育権・労働権すなわち社会権を制限すべきといった差別発言をしたことに金さんは激しく抗議した。そして、二〇〇二年の朝日平壌宣言をもとに朝日友好の道を追求し、今後も日本政府に対しては支援者と連帯して差別反対要請行動をする一方、マスコミが伝えていない事実・真実を伝えていきたいと締めくくった。

五人の朝鮮中級学校生の民族舞踊

 一〇分間の休憩の後、可愛らしい五人の朝鮮中級学校二年生による朝鮮舞踊が披露された。鼓のようなチャングという楽器を持ち、赤と白の短いチマ・チョゴリの衣装でスルスルと舞台に登場し、笛や太鼓の明るくにぎやかな音楽に乗り、チャングを打ちながら踊り、激しさを増しても五人の息が合い乱れがない。これが中学生かと感嘆の拍手。踊りの後のあいさつにまた会場から大きな拍手が送られた。
 彼女たちも来春には高校生になる。少しでも差別がなくなるよう願わずにいられない。

貴重な闘いの報告

 闘いの報告の最初は、二月二十日に勝利的和解をかち取ったフジビ解雇撤回闘争団の中原純子さん。分会書記長の中原さんは「全国の労働者労働組合、また多くの支援の仲間に支えられてかち取った労働者の勝利だ」と発言、大きな拍手につつまれた。まだ解決の高揚が覚めないなかでその闘争を振り返り、司法と都労委の不当判決・命令が続いたが、年間八〇回を超える社前行動を行ない、地域からも支持されるまれな下町争議だったという。労働者側敗訴の裁判所の判決も、労働委員会の命令も間違っている、正しいのはわたしたち労働者だという確信があった、と中原さんは闘いの経験から得た貴重な教訓をあふれるように語った。中原さんは「荒川区日朝婦人の集い」で四〇年間草の根の交流をしている。四〇周年の記念式典で金才順さんとは面識があったそうである。
 つづいてユナイテッド解雇撤回闘争団の吉良紀子さん。彼女たちが争議を相手取る会社ユナイテッド航空は、アメリカの三つの航空会社が合併したもの。吉良さんは合併前の一社に日本で採用された。一九九〇年代末に労働条件の引き下げ・解雇通告等に見舞われるなかで組合を結成し、先輩たちにも助けられて働き続けた。合併後、アメリカの組合員ではない者は、ユナイテッド航空では働けないという理由で日本人だけが排除された。不当解雇、人種差別を訴え裁判闘争に入る。春から尋問が始まる見込みで正念場だ。成田空港のチェックインカウンターの前で、「不当解雇撤回!」を訴えている。自分たちの働く権利のために自分たちが立ち上がらなければならないと、吉良さんは厳しい闘いにもかかわらず、笑顔をたやさず、闘いでかち取ったことばで労働者の実感を語った。
 青木初子さんは沖縄名護市の出身だが、今は「沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック」と「沖縄のたたかいと連帯する東京南部の会」で活動している。今日は三月三日でひな祭りだが沖縄では旧暦の一月十六日、沖縄の方言で「ぐそう(あの世)の正月」と言い、死んだ人と過ごすことで祝う。二〇一六年、元米軍属に殺された島袋里奈さんも名護の実家でご両親とお話をしているのでは、と切り出されたのは衝撃的だった。米軍機は不時着、炎上、部品落下事故を頻発させ、ところ構わず低空飛行するが米軍住宅の上は飛ばないという。沖縄にアメリカ軍がいるための被害の歴史と日常の闘争の数々を激しい口調で訴えた。いま沖縄諸島が軍事要塞化されつつある。名護市長選には負けたが辺野古では命を張った闘いがある。米軍と日本政府が沖縄を植民地のように扱うことに絶対負けないという沖縄の強い意志が伝わった。
 アピールは福島原発被曝労働災害損害賠償裁判を支える会の中村泰子さん。この日は、日本原子力発電が申請している3・11東北太平洋沖地震で被災した危険な原発の運転再開と運転期間延長をやめさせ、廃炉にしようと訴えた。
 HОWS事務局の広野省三さんは、五月から新しい会場でスタートする第二期の講座について、「日本のナショナリズムと近代史」をはじめとして、HОWSにしかできない講座を準備していくのでぜひご参加をと呼びかけた。
 在日韓国民主女性会、世界労働組合連盟(WFТU)、キューバ共和国大使、韓国労働科学研究所からのメッセージは時間の関係で読み上げることができなかった(基調報告、講演、闘いの報告などとあわせて本紙姉妹誌『社会評論』四月発売号に掲載する)。
 次に歌のグループ・シャリバリカンカラが参加者に呼びかけていっしょに『俺たちの道は』を歌い、最後まで高揚した集会の余韻を楽しみつつ閉会した。閉会数分後にはデモに出発。いつもより多いデモ参加者、赤いにぎやかな横断幕がひらめき、元気なシュプレヒコールのデモ隊に手を振ってくれる沿道の歩行者も見られた。 【古賀 圭】

(『思想運動』1018号 2018年3月15日号