日本政府が改めない限り平和像は増えつづける

 「慰安婦」問題日韓「合意」から間もなく二年がたつ。韓国政府外交部は近いうちに、特別に組んだ検証チームによって「合意」にいたった経過についての調査結果を出す。
 日本ではこの秋、大阪市長ばかりでなく安倍首相も、サンフランシスコ市の「平和像」(「慰安婦」像)設置に対してエドゥイン‐リー市長(十二月十二日心臓発作で死去)に市議会での拒否権を行使するように圧力をかけたり、トランプ訪韓の際の晩さん会に招待された「慰安婦」制度被害者や独島のエビに、外相がいちゃもんをつけるなど、相変わらず傲慢で厚顔無恥な行状を世界中にさらしつづけている。被害者のハルモニたちがこれまで果たしてきた役割や行動が、韓国内外で尊敬と注目を常に集めていることに対して、日本政府はこれ以上影響が出ないように必死に対策を講じている。
 政府ばかりでなくマスコミも同様だ。虚偽と欺瞞に満ちた書『帝国の慰安婦』で、元「慰安婦」の被害者たちの名誉を傷つけた朴裕河に対する控訴審でソウル高裁は、無罪だった一審判決を破棄して罰金一〇〇〇万ウォン(約一〇〇万円)の有罪判決を言い渡した。『朝日新聞』は社説で「自由であるべき学問の営みに検察が介入、韓国の民主主義にとって不幸」と朴裕河を擁護した。そして文在寅政権が、「歴史問題で日本に責任を問うべきと唱える団体に支えられている」ことが判決に影響したのかと非難。「韓国の自由が揺らぐ」と、日本が凝り固まった排外主義に侵されていることには触れず、上から目線で説いているのだ。
 日本維新の会に属し橋下徹元市長の後継者である大阪市の吉村洋文市長は、SF市との姉妹都市解消を独断で行なった。同市と交流している大阪市民はもとより、自民・公明もふくむ大阪市議会は市長の独断に反発している。中国系の市民団体によってチャイナタウンの公園に建てられた平和の「慰安婦」祈念碑は、韓国、中国、フィリピンの少女たちがまるく手をつなぎ合い、少し離れたところに「慰安婦」だったことを初めて名乗り出た金学順さんの像が見守るように建てられている。
 サンフランシスコ市議会は十一月十四日、像と維持費の寄贈を受け入れる決議案を全会一致で可決して、二十二日、リー市長は安倍首相と吉村大阪市長の執拗な妨害・圧力をものともせず決議案に署名した。
 吉村市長は、「リー市長が拒否権を行使しなければ姉妹都市を解消する」と明言し、その手続きを幹部会を経て十二月中に完了すると早くも実行に移した。おりしも六〇周年を迎え、長い間培ってきた姉妹都市の交流を市長の独断で断つことは理不尽きわまりない。
 安倍政権も大阪市長も、日本の皇軍が行なった歴史上極悪非道な蛮行を隠し通すことはできない。妨害すればするほど、理不尽さは浮かび上がる。マニラでもフィリピンの伝統衣装を着た「慰安婦」像が設置された。台座には、「日本の占領下で虐待の被害に遭ったすべてのフィリピン人女性を記憶するために」と記されている。十二日、日本政府はこのことに対して「遺憾」を表明した。
 日本政府が責任ある心からの謝罪と補償をしない限り、そして現在の拡大しつづける軍事政策を止めない限り、世界中に「慰安婦」を象徴する平和像は増えつづける。戦争責任をないがしろにし、戦前・戦後を通じて居丈高で傲慢な日本政府は、罪を問われなければならない。そしてそれを許してしまっているのは日本「国民」なのだ。【倉田智恵子】

(『思想運動』1013号 2017年12月15日号