ロシア十月社会主義革命一〇〇周年記念集会開催される
<集会ルポ>
ロシア革命100年の意義を講演と『母』の舞台で確認

 十一月四日、東京・文京区男女平等センターでロシア十月社会主義革命一〇〇周年記念集会が<活動家集団 思想運動>とHОWSの主催で開催された。
 会場の正面には、たくさんの男女労働者が旗を掲げて駆け抜けていく絵――ジョン‐リード『世界を震撼させた十日間』(ロシア語版)に寄せたセルゲイ‐チェホーニンの絵が大きく掲げられ、左右には、一九二〇年代後半のドイツ共産党のポスターとケーテ‐コルヴィッツの版画が配された。ロシア革命を無視・黙殺し、あろうことか全体主義と同一視するような支配的状況に抗して、われわれが受け継ぐべき偉業・達成として十月革命をとらえる集会の基本的立場が、シンプルかつ美しく表現されていた。

十月革命の世界史的意義

 冒頭、司会者は、二〇〇年前に空想的社会主義者ロバート‐オーウェンが提唱した八時間労働制を労働者階級が現実に法的に勝ち取ったのは一〇〇年前のロシア十月革命が初めてであったことに触れ、法定労働時間に限らず文化、経済、思想などあらゆる分野でロシア革命が世界の労働者にもたらした成果を世界の労働者とともに確認し、その意義を祝いたいと述べて集会を開会した。
 はじめに、「プロレタリア国際主義をかかげ闘いぬこう!」と題して︿活動家集団思想運動﹀全国運営委員会責任者の山下勇男が約一時間の記念講演を行なった。
 山下講演はまず、一九〇五年革命とその敗北、第一次世界大戦の勃発、一九一七年の二月革命、臨時政府の成立、臨時政府を打倒しソビエト権力樹立へ、という歴史的経過をたどり、十月社会主義革命がなによりもまず「平和」と「パン」と「土地」を要求して闘われたことを跡づけ、「植民地再分割のための帝国主義戦争」(レーニン『帝国主義論』)としての第一次世界大戦を終結させることができたのは、ブルジョワジーの臨時政府ではなくソビエト権力だけだったと論じた。一九一七年十月の第二回全ロシアソビエト大会は「平和にかんする布告」を発し、交戦諸国に無賠償・無併合の即時講和を呼びかけたが、米英仏はそれを拒否したのであった。
 一九一八年、生まれたばかりの革命政権の息の根を止めるために帝国主義諸国はソビエト・ロシアへ干渉戦争を仕掛けた。山下は、一九二二年、つまり最後の最後まで干渉戦争を続けたのが日本帝国主義であったこと(シベリア出兵)を指摘し、戦争責任の問題だけでなく、ここでも自国の加害の歴史に口をつぐんでいるこの国の支配的イデオロギー状況、とりわけブルジョワ・ジャーナリズムが果たしている否定的役割を厳しく批判した。
 講演の後半で山下はソ連倒壊後の世界を概括した。一九九一年以降、アメリカ帝国主義は湾岸戦争、ユーゴスラビアへの干渉、アフガニスタン侵攻、イラク侵攻、リビアへの軍事介入等々、絶え間なく戦争を引き起こしてきている。「冷戦」が終結すれば平和が実現するという宣伝は虚構だった。なぜならば、巨大な金儲けの手段である戦争を資本主義は手放すはずがなく、資本主義は戦争をなくせないからだ。
 山下はさらに、朝鮮半島情勢に関連して、二〇〇五年の第四回六か国協議の共同声明で合意していた「平和的方法による朝鮮半島の検証可能な非核化」に難癖をつけて協議を中断させたのは米ブッシュ政権であったこと、軍事的威嚇と「経済制裁」によって朝鮮民主主義人民共和国を屈服させようとするアメリカ帝国主義こそ朝鮮半島の危機をつくりだしていることを明らかにし、「北朝鮮特需」で米軍産複合体が大儲けをしていることを暴き出した。
 ソ連倒壊の要因と教訓については時間の関係から講演資料の提示のみにとどまったが、山下は、雑誌『社会評論』一九〇号所収の論文「ロシア十月社会主義革命一〇〇周年に寄せて」でその敗北の総括を試みているので、検討と批判をお願いする、と述べた。
 山下は最後に、資本が搾取と収奪をほしいままにする現代世界にあって、労働者階級の立場に立った理論と実践の必要性を強調し、帝国主義に抗し社会主義を防衛する闘いの先頭に立つキューバ、朝鮮などとの連帯、ロシア共和国のサンクト・ペテルブルグで第一九回会議が開催されている共産党・労働者党国際会議をはじめとする世界の共産主義者、国際共産主義運動との連帯を表明した。

アクチュアルな朗読と歌の試み

 後半は、『母(おふくろ)――革命家 ペラーゲア‐ウラーソワの生涯』が、職業俳優ではなく二〇代から八〇代の労働者たちによって上演された。ゴーリキーの小説『母』をもとにドイツの劇作家ベルトルト‐ブレヒトがつくった戯曲『母』を、集会での上演のため三分の一に縮めて、朗読と歌で構成したもの。
 一九〇五年のメーデーから一九一七年の革命直前までのロシアを舞台に、息子に満足なスープも作ってやれないと貧乏を嘆くばかりだった寡婦ウラーソワが、息子とかれの同志たちの活動(ビラ配布、ストライキ、メーデーのデモ行進など)に影響を受けてその活動の意味を知り、みずからの階級的存在に目覚める。文字を習い、ボルシェビキ党員となったウラーソワは、息子の銃殺という打撃に打ちのめされながらも、帝国主義戦争に反対する活動を続けていく――。
 この日のために練習を重ねてきたのであろう朗読、歌とピアノは聴き取りやすく、また朗読の場面では物語の背景を示す写真や文、地図など、歌の場面では歌詞をスライドで映し出す演出が、わたしたち観客の理解を助けた。闘いのなかで自己変革を遂げていくウラーソワの姿、さらにその影響を受けて成長していく周囲の人びとの姿も浮き彫りにした舞台は、レーニンに指導された十月革命が、その指導と方針の正しさだけではなく、無数のウラーソワたち革命家、活動家、先進的労働者たちの犠牲と献身を基礎として勝利したことを改めて想起させた。こうした運動の基礎をいかにつくり出していくかがわたしたち自身のアクチュアルな課題であることもくっきりと示された。
 世界各地のコミュニストからの連帯メッセージとして、駐日キューバ大使、在日本朝鮮人総聯合会、ギリシャ共産党、フィリピン共産党(PKP―1930)、労働社会科学研究所(大韓民国)の五つのメッセージが紹介された。いずれも、労働者権力の獲得、社会主義の実現と強化をめざそうという力強いメッセージであった。
 そのあと、HOWS事務局責任者の広野省三が、<活動家集団 思想運動>事務所と本郷文化フォーラムホールの移転について報告し、十一月、十二月のHOWS講座企画について紹介した。最後に、参加者全員でインターナショナルを斉唱して、集会を終えた。【吉良 寛・自治体労働者】

(『思想運動』1011号 2017年11月15日号