フジビ闘争五周年 不屈の争議団と共闘を!
全労働者・全労働組合の権利のためのたたかいだ
労働者の団結でフジビ闘争の勝利を!
スラップ訴訟不当判決を実質的に廃棄させよう


 九月十四日午後六時過ぎ、東京・山手線の西日暮里駅から五分の田端台公園(富士美術印刷〔略称=フジビ〕の田中正昭会長が住むマンションの真ん前にある)に全労協に加盟する組合と荒川区労評をはじめとする地域の労働組合などの労働組合員らが次々と集まってくる。「フジビは子会社倒産の責任を取れ!怒りのフジビ闘争5周年9・14決起集会とデモ」に参加するためだ。
 決起集会には、二五〇名を超える労働者が参加した。また、昨年十月から七か月にわたる日本遠征闘争を経て整理解雇を撤回させた韓国サンケン労組から二名が、海を越えてこの集会とデモに参加した。集会は、フジビ闘争支援共闘会議久保議長の挨拶から始まり、韓国サンケン労組の金恩亨さん、JALとユナイテッド航空の争議団等々から、連帯と闘う決意の挨拶が続いた。当該のフジビ争議団から、小金井分会長、関副分会長、中原分会書記長の決意表明後、集会参加者が「不当解雇撤回、スラップ訴訟粉砕、フジビ闘争勝利」に向け団結ガンバローで集会を締めくくった。集会後のデモ行進は、フジビ社前での抗議のシュプレヒコールをし、解散地まで貫徹された。

正当にたたかってきたからこそ

 退職金のタダ取りを狙っての偽装倒産、その「倒産」を盾に社員を解雇し念願の組合潰しを断行する。労働者の反撃には資本によるスラップ(恫喝)訴訟。最高裁を頂点とする司法は、憲法・労働法を無視する判決で労働者をイジメぬく、これが「法治国家」で現実に起こっていることだ。「中小企業のちぽっけな組合が、がたがた騒ぐな。そんな奴らは、こらしめてやる」というのが、フジビ資本と司法の返事であった。資本と権力が潰したい相手を潰したい時に潰してもいいという、まさにかれらにフリーハンドを与える、全労働者・全労働組合運動の死活に関わる争議判決だ。
 改めて争議の経過を記す。
 荒川区西日暮里にある富士美術印刷は、創業一九一八年(大正七年)、来年で創業一〇〇年になる老舗の印刷会社だ。一九六八年には、今回偽装倒産させた子会社であるフジ製版(株)の前身会社を設立させている。全労協東京労組フジビグループ分会は、荒川区での総評時代最後の組合として一九八八年に設立され現在に至っている。
 四五年にわたって製版部門を担った子会社フジ製版は、二〇一二年九月十四日に突然の「破産」宣告をし、組合員一五名を含む従業員一八名全員の解雇を通告してきた。破産の負債は約八〇〇〇万円、その八割以上が従業員の退職金と解雇予告手当である。長年働いた従業員の退職金を踏み倒し、同時にフジビグループ分会の組合潰しを目的とする計画的な偽装倒産だ。フジビ創業家一族のフジ製版社長の田中健(親会社・富士美術印刷前常務)は、億の資産を持ちながら自己破産していない。
・二〇一二年十月、組合は親会社フジビを団交拒否で東京都労働委員会(都労委)に救済申立。都労委は二〇一七年七月に組合側の救済申立を棄却。組合は、都労委の不当命令の取り消しを求め中央労働委員会(中労委)に再審査申立を行ない、現在、係争中である。
・二〇一二年十二月、組合のフジ製版元経営者への偽装倒産・不当解雇の撤回を求める面会要請に対し、フジ製版元経営者らは自宅の半径二〇〇mへの立ち入り禁止仮処分を東京地裁に申請した。
・二〇一四年一月、偽装倒産撤回と不当解雇撤回の闘いを広げるために上部団体(全労協)や地域の労働組合らで「フジビ闘争支援共闘会議」を結成する。
・二〇一四年二月、闘いの拡大を恐れたフジビ資本・田中一族は、組合に対してではなく、組合員個人三名に対して、施設管理権の侵害、名誉・信用毀損、営業妨害行為などを理由に二二〇〇万円の損害賠償請求を提訴。組合員個人に対する巨額の損害賠償請求訴訟は、労働組合活動の抑圧を目論む“スラップ訴訟”である。
・二〇一五年三月、フジビ闘争争議団五名がフジビと田中一族四名を、下請法違反・派遣法違反とともに「偽装倒産による損害賠償」を求めて東京地裁に提訴した。

最高裁が憲法を侵す〝スラップ訴訟〞

 二〇一六年二月十日、東京地裁は、フジビ闘争争議団三名(フジビグループ分会の三役)に対し「連帯して三五〇万円を支払え」との不当判決を出した。地裁は「組合のビラ、横断幕・幟旗などがフジビの社会的評価を低下させるとして、金額の根拠を示すことなく、会社の損害額をざっくり三五〇万円とし、組合の争議行為を『個人による共同不法行為』」との判断で、フジビ資本を勝たせたのだ。
 組合側は直ちに控訴したが、東京高裁第二二民事部は二〇一六年七月四日に控訴を棄却し地裁同様三五〇万円の損害賠償を命じた。
 こうした東京地裁・東京高裁の相次ぐ判決に対し、日本労働弁護団は第六〇回全国総会において「労働組合にとって、その要求実現のために行なう組合活動としての言論表現活動は、労働組合運動の生命線であり、労働組合の正当な言論活動の否定は、憲法二一条・二八条に違反する。最高裁は、口頭弁論を行なったうえで、原判決の誤りを糾すべきである」との総会決議(二〇一六年十一月十一日)を発している。
 ところが最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は、二〇一七年八月二十二日付で、東京高裁判決に対する、組合員三名の上告を棄却し、上告受理申し立てを不受理とする不当な決定を行なった。最高裁は、上告審弁護団の上告理由書と言論法と憲法の研究者による鑑定意見書により厳しく違憲と指摘されながら、自らの違憲審査権を放棄して、憲法二一条と二八条の判断から逃避する不当な門前払いを強行したのである。
 最高裁の不当決定を受けて、九月七日午後にフジビ闘争支援共闘会議による最高裁抗議行動が行なわれ、午後二時からは司法記者クラブにおいて、フジビ争議団と上告審弁護団による記者会見が行なわれた。この記者会見で、記者が「お金をどうするのですか?」と聞くと、争議団の一人の中原さんは「払いたくてもお金がない。フジビに戻って働いて払う」と答えた。(本来なら払う必要がないが)正直な返答であり、闘う労働者のしたたかさを示すものだ。

資本・司法の結託を打ち破ろう!

 われわれはフジビ争議を通して「資本の横暴」「資本のための司法制度」を再認識したただけではまったく不十分である。こうした事態を許している要因は、右肩下がりの労働組合組織率の実態、とりわけ中小企業における驚くばかりの組織率の低さ(二〇一六年厚労省調査:全体で一七・三%。一〇〇〇以上の企業が四四・三%、九九人以下の企業が〇・九%)、そして悲惨なほどの争議件数の低さにある(二〇一五年厚労省調査:全産業合計で、ストライキの総件数は八六件、うち半日以上のストライキは三九件)。
 中小企業のなかにあってフジビグループ分会のように組合を組織し、地域と上部団体の労働者・仲間に支援されながら、労働者の権利を堂々と主張して闘う組合は資本にとって目の上のたん瘤以上にニクイ。だからフジビグループ分会には、資本と裁判所から滅茶苦茶な攻撃が掛けられている。
 組合提訴の損害賠償訴訟は東京地裁で敗訴し、組合が控訴した東京高裁第五民事部は、本年九月三十日の第一回弁論で結審させた。十一月一日には高裁での不当判決が予測される。大衆運動を強化し、フジビ闘争勝利に向け全力で共闘しよう。フジビ資本との闘いに勝利し、スラップ(恫喝)訴訟最高裁判決を実質的に廃棄させよう。【田沼久男】

(『思想運動』1009号 2017年10月1日号)