司法――最近の折衝報告から
水が石を穿つように意見を積み重ねて
わたしは地方裁判所の刑事部で働いている。組合分会の役員が、現場の職制とどんなやりとりをしているのか、一部をご紹介したい。
その1 「開廷表(※)」の電子化(タブレット端末化)、欠員について
※当日の裁判の予定表のこと。一階玄関に置いてあり、誰でも自由に閲覧できる。当局 九月一日付で訟廷係の事務官が異動となり、一名欠員になることになった。
組合 当該係は分会で増員要求をしつづけてきた部署で、当局もその必要性を認めてこの四月に一名の増員がかなったばかりです。それにこれまでの忙しさに加えて、八月に試行が始まり九月から正式運用予定の開廷表のタブレット端末化という新しい業務の準備も大変で、欠員は非常に影響が大きいです。十月には、必ず後補充してください。
当局 その方向で調整しています。後補充の必要性は十分認識しています。
組合 開廷表のタブレット端末化について、現在の進捗状況はどうなっていますか。
当局 各職場でマニュアルの回覧をしているので、問題点等があれば言ってほしい。
組合 試行期間は紙の開廷表とタブレットを並行運用するけれど正式運用後は紙は備え置かないということでいいですか。紙とデータの並行運用は、係にとっては二重の手間です。
当局 利用状況を見て判断することになります。
組合 施行から正式運用の期間が短く、あまりにも時間に追われている印象です。職場からは批判的な声がたくさん出ています。この件に限らず、何か新しいことを始める時に、特に事務負担が増える事項は、もっと時間に余裕を持って慎重に導入すべきです。
その2 「音声認識システム(※)」のバックアップ機能、録音機の増配置の要求について
※裁判員制度導入時に設置されたものだが、当初宣伝された「そのまま調書化」とは程遠いもの。録音機能もあるため、通常の録音機のバックアップ機としても使用されている。
当局 音声認識システムをバックアップ録音機として使用するということは、ビデオカメラで録画された映像と音声から、音声データのみをCDに移すということです。ビデオカメラの録画ボタンを押さないと予備用データは記録されないので気をつけてください。具体的な作業手順はマニュアルに載っています。
組合 音声認識システムを録音機代わりとして使用するのは非常に手間だし実用的ではないです。バックアップ用の録音機を設置してください。
当局 そうすると、メインの録音機、バックアップ用の録音機、音声認識システム、ということで、録音機が三台とカウントされて、過剰整備ということになってしまうので駄目です。
組合 音声データのバックアップのために、ビデオカメラで撮影することが果たして適切なのかという問題もあるのではないですか。職場には、音声認識システムのあり方について見直すべき時期との声があります。録音機の増整備も含め、この点も改めて刑事当局として考えて、必要な上申をしてください。
当局 要望・実情としてお伺いします。
裁判員裁判では法廷のやりとりを映像と音声で記録するが、その他のほとんどの事件では音声のみを記録する。当局は、各法廷二台の録音機の整備という組合の基本的な要求には応えず、要求していない開廷表用のタブレット端末化を拙速に進めている。【藤本愛子・国公労連全司法労働組合】
(『思想運動』1009号 2017年10月1日号)
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