朝鮮学校「高校無償化」訴訟
大阪地裁で原告の主張をすべて認める勝利判決
日本の植民地主義を克服する闘いだ
去る七月二十八日、大阪朝鮮高級学校への「高校授業料無償化」の適用を求める裁判の判決が大阪地裁で言い渡された。結果は原告側の請求がすべて認められた全面勝訴の判決であった。
裁判当日、わたしは大阪地裁正門前で大勢の朝鮮学校に子どもを通わせる父母や支援者、そして報道陣と判決の第一報を待っていた。「ちょっと時間かかっているな」と思いながら。すると正面玄関の方からワアーという声が聞こえた。「え? え? 勝った?」。
走ってきた二人の弁護士が、皆の前に「勝訴」「行政の差別を司法が糾す!」を示したとたん、正門前は歓声と拍手に包まれた。わたしは写真を撮ろうと構えていたのだが、写真はそっちのけで、お孫さんを朝鮮学校に送っているハルモニと抱き合っていた。
西田隆裕裁判長は教育の機会均等とは無関係である外交的・政治的判断による排除は「無償化の主旨を逸脱しており、違法・無効である」とし、国に対し、処分の取り消しと無償化の指定を命じた。なによりも民族教育の存在意義とその歴史性を認定した判決であったことが画期的であった。
判決は、被告(国)の主張する朝鮮総聯及び朝鮮の「不当な支配」について、「しかし、朝鮮総聯は在日朝鮮人の民族教育の実施を目的の一つとして結成。朝鮮学校は朝鮮総聯の下、自主的民族教育として発展してきた歴史に照らせば、両者の関係が不適切とは言えない」「母国語と母語の歴史及び文化についての教育は、民族教育にとって重要な意義を有し、民族的自覚及び民族的自尊心を醸成する上で基本的な教育というべきである」。朝鮮高級学校が「北朝鮮の指導者や国家理念を肯定的に評価することも、朝鮮高級学校の上記教育目的それ自体には沿うもの」と「不当な支配」も「特段の事情」もみとめられない、また「不当な支配」の判断を文科相の裁量権にゆだねることは、教育に対する行政権力の介入を容認することになるとし、当時の下村博文文科相の裁量権の逸脱濫用を違法として、原告の請求をすべて認容した。
勝利判決を受けて一八時三〇分から大阪市東成区民センター大ホールに溢れる人びとが参加して「報告集会」が開かれた。各地方からも、韓国からも駆けつけてこられた。
大阪朝高の女生徒は「朝鮮人として生きることが、こんなに難しいのかと思ってきました。法廷で勝利判決をきいて、手を握り合って泣きながら、やっと認められたと思いました。ウリハッキョに通わせて下さっている、すべての人びとに感謝します。わたしは在日コリアンの歴史が闘いと連帯の歴史だったことを知っています。在日コリアンが本名で堂々と生きていける、みんなが生きていける架け橋になりたい。希望と信念を胸にわたしたちがその後に続きます」とアピール。会場に大きな拍手がおこった。
「今日の判決は、歴史の検証をしている。ここが重要だ。この闘いは日本の植民地主義を克服する闘いでもある」。
丹羽雅雄弁護士のこの集会の言葉を重く受け止め、これからも連帯して闘っていきたい。 【大阪在住 横道昭子】
(『思想運動』1006号 2017年8月1日-15日号)
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